俺の彼氏

ゆきの(リンドウ)

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俺の彼氏とメリークリスマス

(2)-4

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 榊と住んでいる家は二階建てアパートの二階奥。見上げれば今日は部屋の灯りが付いていた。
 料理のために外した腕時計を背広のポケットから取り出し見ると、午後九時半。
 (今日は早く帰ってこれたんだ!くそ、そんなことなら教室で夕飯代わりにと作った料理を食べてこなければ良かったのに!)
 最近はめっきり遅かった帰りのせいで、騒ぐ心が抑えきれない。
 焦る気持ちで小走りになる足で、階段を駆け上る。

「ただいまッ!てっちゃんいる?」
「おかえり、雪」 
 小走りしたせいでドクドクと速まる鼓動がどくんと一際高まった気がした。
 目の下に薄らと隈を作りながらもふわっと笑う榊が、とてつもなくかっこいい。
 自然と流れるように抱きしめられ、ぎゅっと心臓が締め付けられたようだった。
 好きだ、榊がやっぱり大好きだ。
 靴も脱がないまま、榊の体温を奪うかのようにきつく広い背中に抱きついていた。

「雪…今日、どこ行ってた?」
「え?えっと、今日も菅さんと料理教室行ってた!」
 首筋に顔を埋められているとふいに、榊が問う。嘘はついていない、だがなんとなく疚しい気持ちで焦っていたのはもしかしたら今日焼いたスコーンの甘い香りが残っていたせいなのかもしれない。
 榊には知られるわけにはいかないのだ。今年はどうしてもサプライズを成功させたい。

「てっちゃんは今日早かったんだね?夕飯食べた?」
「いや、まだだけど」
「なら俺、簡単になんか作るよ。ちょっと待ってて」
「…ああ、わかった」
 キッチンへと向かうスリッパの音がパタパタと響いていた。この時間、疲れた身体ならサムゲタンでも良さそうだな。
 愛しい恋人の夕飯を考えながら雪は、明日の夕飯は何にしようかと、あらぬ期待をかすかに胸に抱いていた。
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