俺の彼氏

ゆきの(リンドウ)

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俺の彼氏のお友達

(3)-1

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 それからの毎日は流れるように過ぎていった。
 俺はと言えば、カフェの準備と部活には入っていなかったが、あれよこれよという内に漫画研究会で作る制作物の手伝い要員として、参加していた。

「うわ~終わる気しなーい!」
 心の声を口にしたのはまさかの部長、三浦さんだ。
 三浦さんとはあれ以来、斉藤さんと吉井さん経由で仲良くさせてもらっており、最近では本格的に漫画研究会に入らないかと誘われている。

「部長がそれ言っちゃダメですよ!」
「大丈夫ですよ、榊くんも手伝ってくれてるし。ね?」
 斉藤さんの言葉に吉井さんが俺に振る。正直、力になれているか定かではないが、そう言ってくれるならと与えられた仕事に取り掛かる。
 しかしながら文化祭というものを少々舐めていた、と目の前にずらっと並べられたイラストを見る。

 高校の文化祭はとにかく規模が大きい。クラス、部活、有志にと見るもには困らないがその分、準備が大変でもある。
 聞けば生徒主体だとのことで、当日は他校の生徒や町の人たちまで自由に参加できるシステムになっているそう。
俺が手伝っている漫画研究会も、そのうちの一つだ。
 今年は大人気アニメのキャラクターを模造紙を何枚も繋げて描くことをメインにしたと、三浦さん始め部員はみんなあくせくしながらそれでも楽しそうに作業に取り組んでいた。
 かくいう俺も、アクリルキーホルダー係としてプラ板に指定されたイラストを写している。とは言え、枚数総数は何十枚にも及ぶもので、心底部員の皆さんを尊敬するばかりだ。

「そういえば、これ。当日の当番表できたから帰りに持っていってね~」
 会議用テーブルをいくつも繋げた真ん中にどんと三浦さんが置いた紙を、斉藤さんが一枚取り俺に渡してくれた。
 どうやら、文化祭当日は部員同士で交代制で回すようで、時間と各々の名前が記されている。

「げ、私、午後イチ!」
「私は15時から」
「いいなぁ、彩綾。私と代わらない?」
「はい、ダメー。原則、当番の交代は認められません!」
「午後イチになにかあるのか?」
 俺には理解できない話かと思いつつ、それでも斉藤さんがしつこい食い付く理由が気になり、つい聞いていた。

「実はね、有志のライブがあるの!」
「あかりは雪くんの歌が聴きたいんだよね?」
 吉井さんが言うには、南沢の参加する有志パフォーマンスチームが歌う順番が午後イチなのだそう。
 そういえば先週も、文化祭準備の息抜きと称してボーリングに行った時、先輩から誘われた有志パフォーマンスの練習をしてきたと言っていたが、これだったのか。
 南沢の性格上、断りきれないだろうなと思うと妙に納得してしまう。
 しかし、部長を始めとする部員のくすくす笑いはどういうことなのだろうか。
 先ほど、斉藤さんが「まあね、私たち友達だし?」と言ってから部室に響き渡る女子特有のくすくす声は。
 仲間外れ、とまではいかないが、会話についていけていない疎外感を否めずにいると、吉井さんに肩を叩かれた。

「あのね、榊くん。あかりね、雪くんのこと…あれなんだ」
「…すまない。あれってなんだろう」
「つまり…まあ、気になってる?みたいなことだよ」
 こそこそと吉井さんの肩まで身を屈めながら聞く。
 吉井さんも斉藤さんの気持ちを他人に話すのは心苦しいのか、躊躇うようにそう言った。
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