愛の重さは人知れず

ゆきの(リンドウ)

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 それからはまるで、旧友と会ったように驚くほど会話は進んでいった。
 中でも一番驚いたのは、三月の馴染みようだった。

 というのも、惣一郎が知っている三月は、おっとりとした性格で、初対面の人とはあまり積極的に話すことを得意としないと思っていたのだ。それが蓋を開けて見れば、もしかしたらお喋りな優星よりも積極的に話している。

「詩音さんって呼んでいいですか?」
「僕もこの種類のピザ好きなんです」

 詩音の選ぶ行動一つ一つ、丁寧に見ては言葉を選び、けれども記憶がない間のことを決して聞くことはしない。

 そういえば、初めて三月と会った時も話しかけてくれたのは三月からだった。けれど押し付けるようなことは絶対しなかった。惣一郎の意見を尊重してくれた。
 やはり三月らしく、そして同時に三月だからそうしてくれているのだと思い、今日、三月が来てくれて良かったと心から安堵していた。

 優星もやはり優星だった。最初に会った時から、引っ込み思案だとは思っていなかったがそれは当たっていたし、それに加えて世話焼きなのだということも知った。
 詩音の好きなピザを取ってやったり、皿にチキンやフライドポテトを取ってやったり。詩音が言う前より先に動いて、それを詩音も嫌がることなく受け入れていた。
 きっと今までそうしてきたのだろう。惣一郎の知っている詩音とは違った一面に驚き、少しショックを受ける。

「はい、三田くんの」

 けれど、こうして優星が詩音にするように、詩音にピザを取ってもらうだけで沈んだ心が浮き上がってくるのだ。結構、単純な人間だと思う。

 気付けばピザの箱は空になり、チキンもフライドポテトも残り僅か、炭酸飲料のペットボトルも二本が空になっていた。
 片付けくらいはと言い渋る詩音を優星にお願いして、惣一郎が片付けに専念していると三月が隣に来てくれた。

「三月さん、いいですよ」
「お邪魔したんだからこれくらいさせてください」
 それに、サプライズの件もあるし。と、こそっと耳打ちされた。

 ソファに座ってテレビを見ている二人を振り返ってこっそり見る。狭い部屋だが、キッチンからソファまでは数メートル距離もあり、水道の音とバラエティ番組の音声できっと惣一郎たちの声は聞こえていないだろうと思った。
 少しだけ、身を寄せて話す。

「この後、いいですか?」
「もちろん!この前の小説、ちゃんと持ってきましたよ」
 改めて言われ、ほっとする。

「ありがとうございます。こんな無茶振り、引き受けてくれて」
「ううん、全然。話してくれてこちらこそありがとう」

 三月がにっこりと安心させる顔で微笑んでくれたのは、惣一郎と詩音が恋人だと伝えたからだろう。

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