65 / 79
(9)
(9)-3
しおりを挟む
それからはまるで、旧友と会ったように驚くほど会話は進んでいった。
中でも一番驚いたのは、三月の馴染みようだった。
というのも、惣一郎が知っている三月は、おっとりとした性格で、初対面の人とはあまり積極的に話すことを得意としないと思っていたのだ。それが蓋を開けて見れば、もしかしたらお喋りな優星よりも積極的に話している。
「詩音さんって呼んでいいですか?」
「僕もこの種類のピザ好きなんです」
詩音の選ぶ行動一つ一つ、丁寧に見ては言葉を選び、けれども記憶がない間のことを決して聞くことはしない。
そういえば、初めて三月と会った時も話しかけてくれたのは三月からだった。けれど押し付けるようなことは絶対しなかった。惣一郎の意見を尊重してくれた。
やはり三月らしく、そして同時に三月だからそうしてくれているのだと思い、今日、三月が来てくれて良かったと心から安堵していた。
優星もやはり優星だった。最初に会った時から、引っ込み思案だとは思っていなかったがそれは当たっていたし、それに加えて世話焼きなのだということも知った。
詩音の好きなピザを取ってやったり、皿にチキンやフライドポテトを取ってやったり。詩音が言う前より先に動いて、それを詩音も嫌がることなく受け入れていた。
きっと今までそうしてきたのだろう。惣一郎の知っている詩音とは違った一面に驚き、少しショックを受ける。
「はい、三田くんの」
けれど、こうして優星が詩音にするように、詩音にピザを取ってもらうだけで沈んだ心が浮き上がってくるのだ。結構、単純な人間だと思う。
気付けばピザの箱は空になり、チキンもフライドポテトも残り僅か、炭酸飲料のペットボトルも二本が空になっていた。
片付けくらいはと言い渋る詩音を優星にお願いして、惣一郎が片付けに専念していると三月が隣に来てくれた。
「三月さん、いいですよ」
「お邪魔したんだからこれくらいさせてください」
それに、サプライズの件もあるし。と、こそっと耳打ちされた。
ソファに座ってテレビを見ている二人を振り返ってこっそり見る。狭い部屋だが、キッチンからソファまでは数メートル距離もあり、水道の音とバラエティ番組の音声できっと惣一郎たちの声は聞こえていないだろうと思った。
少しだけ、身を寄せて話す。
「この後、いいですか?」
「もちろん!この前の小説、ちゃんと持ってきましたよ」
改めて言われ、ほっとする。
「ありがとうございます。こんな無茶振り、引き受けてくれて」
「ううん、全然。話してくれてこちらこそありがとう」
三月がにっこりと安心させる顔で微笑んでくれたのは、惣一郎と詩音が恋人だと伝えたからだろう。
中でも一番驚いたのは、三月の馴染みようだった。
というのも、惣一郎が知っている三月は、おっとりとした性格で、初対面の人とはあまり積極的に話すことを得意としないと思っていたのだ。それが蓋を開けて見れば、もしかしたらお喋りな優星よりも積極的に話している。
「詩音さんって呼んでいいですか?」
「僕もこの種類のピザ好きなんです」
詩音の選ぶ行動一つ一つ、丁寧に見ては言葉を選び、けれども記憶がない間のことを決して聞くことはしない。
そういえば、初めて三月と会った時も話しかけてくれたのは三月からだった。けれど押し付けるようなことは絶対しなかった。惣一郎の意見を尊重してくれた。
やはり三月らしく、そして同時に三月だからそうしてくれているのだと思い、今日、三月が来てくれて良かったと心から安堵していた。
優星もやはり優星だった。最初に会った時から、引っ込み思案だとは思っていなかったがそれは当たっていたし、それに加えて世話焼きなのだということも知った。
詩音の好きなピザを取ってやったり、皿にチキンやフライドポテトを取ってやったり。詩音が言う前より先に動いて、それを詩音も嫌がることなく受け入れていた。
きっと今までそうしてきたのだろう。惣一郎の知っている詩音とは違った一面に驚き、少しショックを受ける。
「はい、三田くんの」
けれど、こうして優星が詩音にするように、詩音にピザを取ってもらうだけで沈んだ心が浮き上がってくるのだ。結構、単純な人間だと思う。
気付けばピザの箱は空になり、チキンもフライドポテトも残り僅か、炭酸飲料のペットボトルも二本が空になっていた。
片付けくらいはと言い渋る詩音を優星にお願いして、惣一郎が片付けに専念していると三月が隣に来てくれた。
「三月さん、いいですよ」
「お邪魔したんだからこれくらいさせてください」
それに、サプライズの件もあるし。と、こそっと耳打ちされた。
ソファに座ってテレビを見ている二人を振り返ってこっそり見る。狭い部屋だが、キッチンからソファまでは数メートル距離もあり、水道の音とバラエティ番組の音声できっと惣一郎たちの声は聞こえていないだろうと思った。
少しだけ、身を寄せて話す。
「この後、いいですか?」
「もちろん!この前の小説、ちゃんと持ってきましたよ」
改めて言われ、ほっとする。
「ありがとうございます。こんな無茶振り、引き受けてくれて」
「ううん、全然。話してくれてこちらこそありがとう」
三月がにっこりと安心させる顔で微笑んでくれたのは、惣一郎と詩音が恋人だと伝えたからだろう。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる