24 / 79
(4)
(4)-1
しおりを挟む
朝はやはり、寝坊気味だった。
前日の夜、目覚ましをかけた時間は朝の八時。惣一郎の携帯だけでは不安だと言った詩音のために、詩音の携帯も目覚ましをかけた。
「詩音、起きろ」
「ん~まだ、もう少し…」
布団の中からくぐもった声は、まだ眠いと訴えかけている。
携帯の目覚ましは意外にも大きい。しかも、二台ともなると、耳をつんざくほどだ。なのに、詩音はまだ、眠りの世界にいる。
仕方ない。と、惣一郎は当分、眠りの世界から現実へは戻ってこないだろう詩音のために、朝食の支度を始めた。
今日の朝食は、軽く。昨日、詩音が作ってくれたとろろ昆布の味噌汁、白米、ほうれん草の胡麻和え、それから納豆。
カフェに行くとなるといつも、詩音はスイーツを食べるからだ。コーヒーと一緒に食べるスイーツが格別だと言っていた。
詩音がカフェを選ぶ基準は、コーヒーが美味しいか。その一択だ。
あらかじめ、インターネットでレビューを見たり、店のホームページで使われている豆をチェックしたり。そういう細かなことを詩音はよくする。
その他にも詩音がこだわるのは、店の雰囲気。がやがやと学生が集まるカフェも、仕事で行き詰った時なんかはパワーをくれるそうで、時には好んで行くらしい。が、基本的には静かで賑やかすぎない場所が好きだ。
いわゆる、年配の女性たちが集うような、そんなところが詩音は好きなのだ。
そしてこれは付き合ってから気が付いたのだが、詩音は甘党の割に甘くないスイーツがある店を選んでくれている。
きっと、甘いものが苦手な惣一郎のためだ。
買い物に行くと詩音は甘いチョコレート菓子をよく買う。子どもの頃、よく家にあったような原色が使われている、いかにも子どもが好きそうなパッケージの菓子。
詩音曰く、身体が甘いものを欲しがるから仕方ないのだそう。
一方、惣一郎の好みは甘くなく、さっぱりとしたスイーツだ。
スイーツそのものが好きか、と言われれば好きではない、と答える。が、食べられないわけでもなく、その中でも一番好きなのはチーズケーキだ。
詩音にそのことを話したのは、学生の頃。付き合ってまだ、日が浅かった。なのに、詩音はその一言を覚えてくれていたようで、出かけるカフェには必ず、チーズケーキが置いてある。
朝食が出来た時間は午前八時半。食べることに時間が掛かる詩音のため、そろそろ起こさなければとまた、声を掛けた。
しかし、変わらず、詩音はまだ眠りの世界だ。
もう起こさなければいけないのに、つい、その寝顔を見てしまう。そっと布団を捲り、寝顔を見ると、眼球が左右に動いている。夢を見ているようだ。
口元を見れば仄かにほほ笑みを浮かべている。
どんな夢を見ているのだろう。
もしかしたら昨日、寝る前に話したカフェの夢だろうか。
『惣、明日行きたいカフェなんだけど、ちょっと遠い場所でもいい?』
『いいけど。行ったことあるのか?』
『うん、ある。とにかく景色が凄く綺麗で、惣にも見せたいんだ』
それか、映画の夢だろうか。
『本当に明日の映画、僕の好きな映画でいいの?』
『いいよ。詩音の好きな映画、見よう』
願わくばその夢に、自分がいればいい。
最近、詩音の寝顔を見るとそんなロマンチックなことを思ってしまう気がする。
このまま、寝顔を眺めていると不埒な熱が高まりそうで、惣一郎は気持ちよさそうに眠っている詩音に声を掛けることにした。
前日の夜、目覚ましをかけた時間は朝の八時。惣一郎の携帯だけでは不安だと言った詩音のために、詩音の携帯も目覚ましをかけた。
「詩音、起きろ」
「ん~まだ、もう少し…」
布団の中からくぐもった声は、まだ眠いと訴えかけている。
携帯の目覚ましは意外にも大きい。しかも、二台ともなると、耳をつんざくほどだ。なのに、詩音はまだ、眠りの世界にいる。
仕方ない。と、惣一郎は当分、眠りの世界から現実へは戻ってこないだろう詩音のために、朝食の支度を始めた。
今日の朝食は、軽く。昨日、詩音が作ってくれたとろろ昆布の味噌汁、白米、ほうれん草の胡麻和え、それから納豆。
カフェに行くとなるといつも、詩音はスイーツを食べるからだ。コーヒーと一緒に食べるスイーツが格別だと言っていた。
詩音がカフェを選ぶ基準は、コーヒーが美味しいか。その一択だ。
あらかじめ、インターネットでレビューを見たり、店のホームページで使われている豆をチェックしたり。そういう細かなことを詩音はよくする。
その他にも詩音がこだわるのは、店の雰囲気。がやがやと学生が集まるカフェも、仕事で行き詰った時なんかはパワーをくれるそうで、時には好んで行くらしい。が、基本的には静かで賑やかすぎない場所が好きだ。
いわゆる、年配の女性たちが集うような、そんなところが詩音は好きなのだ。
そしてこれは付き合ってから気が付いたのだが、詩音は甘党の割に甘くないスイーツがある店を選んでくれている。
きっと、甘いものが苦手な惣一郎のためだ。
買い物に行くと詩音は甘いチョコレート菓子をよく買う。子どもの頃、よく家にあったような原色が使われている、いかにも子どもが好きそうなパッケージの菓子。
詩音曰く、身体が甘いものを欲しがるから仕方ないのだそう。
一方、惣一郎の好みは甘くなく、さっぱりとしたスイーツだ。
スイーツそのものが好きか、と言われれば好きではない、と答える。が、食べられないわけでもなく、その中でも一番好きなのはチーズケーキだ。
詩音にそのことを話したのは、学生の頃。付き合ってまだ、日が浅かった。なのに、詩音はその一言を覚えてくれていたようで、出かけるカフェには必ず、チーズケーキが置いてある。
朝食が出来た時間は午前八時半。食べることに時間が掛かる詩音のため、そろそろ起こさなければとまた、声を掛けた。
しかし、変わらず、詩音はまだ眠りの世界だ。
もう起こさなければいけないのに、つい、その寝顔を見てしまう。そっと布団を捲り、寝顔を見ると、眼球が左右に動いている。夢を見ているようだ。
口元を見れば仄かにほほ笑みを浮かべている。
どんな夢を見ているのだろう。
もしかしたら昨日、寝る前に話したカフェの夢だろうか。
『惣、明日行きたいカフェなんだけど、ちょっと遠い場所でもいい?』
『いいけど。行ったことあるのか?』
『うん、ある。とにかく景色が凄く綺麗で、惣にも見せたいんだ』
それか、映画の夢だろうか。
『本当に明日の映画、僕の好きな映画でいいの?』
『いいよ。詩音の好きな映画、見よう』
願わくばその夢に、自分がいればいい。
最近、詩音の寝顔を見るとそんなロマンチックなことを思ってしまう気がする。
このまま、寝顔を眺めていると不埒な熱が高まりそうで、惣一郎は気持ちよさそうに眠っている詩音に声を掛けることにした。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説


美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる