愛の重さは人知れず

ゆきの(リンドウ)

文字の大きさ
上 下
19 / 79
(3)

(3)-5

しおりを挟む
「詩音が言うには、プロテインにも種類があるとか」

 言うのは最近、聞いたばかりの知識だ。
 薬局で買ったプロテインの粉を水で溶き、飲んでいると、詩音がプロテインの入った箱を見ながら唐突に説明し始めたのだ。

「何でも、プロテインと一口に言っても種類があって」
「へえ」
「ホエイとカゼインとソイらしいです」
 言いながら、そういえば昨日の夕飯は、最近、詩音の中でブームになっている食事の解説がなかったと思った。

「どう違うんですか?」
「実は俺もよくはわかってなくて。ただ、筋肉を増やしたいならホエイがいいってことだけは覚えてます」
「へえ、なるほど。勉強になります」
「って言っても、詩音の知識ですけどね」
 そう言うと、お互い、顔を見合わせて笑った。

「それにしても、三田さんと詩音さんって本当に仲がいいんですね?」
「そう、見えますか?」
「三田さん、詩音さんのこと話してる時、楽しそうですよ」
 言われ、顔に熱が集まりそうで、焦る。

 楽しそう、とは一体、どんな表情をしているのだろうか。まさか、緩み切っているわけではないだろう。
 けれど、ふと、以前に似たようなことを言われたと思い出した。たしかあれは、藍田の一言だ。

『何でそんな辛気臭そうな顔してんのよ』

 あの時もまさか、俺が。そう、思ったものだ。

 思えば、あの時も詩音の態度に悩んでいた。そして今も、詩音のことを言われ、顔が火照っている。
 昔、母親から『もっと嬉しいって言っていいのよ』と、言われたことを思い出す。昔から感情が表情に出ない惣一郎に、母親はそう言っていた。
 きっと、詩音だからだ。と、気が付く。
 詩音のことになると、感情が表情に出る。嬉しい時も悲しい時も、そうなのだ。

「大学の頃から、つるんでるんです」
 火照りを誤魔化すように言うと、三月が「失礼ですけど、今、おいくつですか?」と問う。

「二十五歳です。詩音も同じです」
「じゃあ、もう七年?」
 改めて言われると、もうそんなに月日が経ったのかと思わされる。
 それくらい、詩音との時間は早く、あっという間に感じる。

「その、それで、実は三月さんに詩音のことで相談があるのですが」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

処理中です...