愛の重さは人知れず

ゆきの(リンドウ)

文字の大きさ
上 下
4 / 79
(1)

(1)-4

しおりを挟む
 藍田と付き合っていたのは、高校一年の頃だった。
 なんとなく、気が合って話も合って。
 良き友人だったのだが、高校生ともなれば色恋沙汰に夢中で、そして敏感だ。
 悪意のないお膳立てを受け、自然と付き合うことになっていたのだ。

「別に恨んでるわけじゃないよ?でも、成長してないなって」
「そうか?」
「あんただけじゃなくて、私もね」
 一瞬、核心を突かれた気がして心臓が縮みそうになった。が、続く言葉にその言葉の本質は、きっと、藍田の今の彼氏のことだろうと思った。
 藍田には彼氏がいる。藍田より二歳年下で、今年、新社会人になったばかりの彼氏。

「まだ喧嘩してんのか?」
「絶賛喧嘩中」
 溜息を吐きながら言うところを見ると、たしか二日前から続いていた喧嘩はまだ、決着がついていないのだと悟る。

「わかるよ?社会人一年目なんて、上司のいうことに逆らえないもんだし」
「たしかに」
「学生の頃と違って、ストレスだってあるし」
「そうだな」
「でもさ、休みなんだったら、私のとこ来いよって」

 二十三歳といえば、仕事が終わっても有り余るほどの体力を持っている頃だ。そして、好奇心も強い。
 藍田の彼氏も例外ではなく、平日も休日も、上司や同期と社会勉強という名の飲みに行っているそうで、喧嘩の理由もそれが原因だったのだ。

 頼もしく頼られ、それを苦ともしない藍田だが、実は恋人とは常に一緒にいたいタイプである。
 昔、惣一郎と付き合っていた時も、そういう節はあった。
 元々、付き合っていた当時はお互い、好きで好きでという感情で付き合ったわけでもなく、惣一郎も藍田と恋人になったという自覚はなかった。高校生によくある、友人の延長線上という感覚だ。
 だから、普通に、惣一郎は藍田に変わらずに接していたし、他の友人と変わらぬ態度で遊びにも誘っていた。
 週末に遊ぶと友人が言えば、藍田を誘い、藍田からも誘われ。二人だったり、そうじゃなかったりと、その時によって状況は様々だったが、それをおかしいとは少しも感じていなかった。
 が、それは惣一郎の方だけだった。

 付き合って一か月、藍田から別れようと言われた。理由は惣一郎が彼氏らしくないということ。
 藍田は友人と恋人をきっぱり分ける性格で、だからこそ、他の友人と変わらない態度を取る惣一郎とは続かないと思ったのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

あめ
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...