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第二章
ep47 王女の真骨頂
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一限目の授業が終わると、リザレリスは机に突っ伏した。
「が、学校の勉強って、こんなにしんどかったっけ......」
一応、ルイーズの『王女教育授業』の中で、一般的な勉強もさせられていたリザレリス。
そのおかげでなんとか授業についていくことはできたが、それでもシンドイことには変わりなかった。
「よくよく考えたら留学って、海外に勉強しに行くもんなんだよな......」
今さらながらのことに今さら気づいた。
それだけではない。
リザレリスの中ではもうひとつ「今さらな気づき」があった。
彼女の中身は、転生前の人格と記憶をそのまま保持しており、転生後のそれはない。
にもかからず、この世界での勉強が意外なほど身についているのだ。
よくよく考えれば不思議なことだ。
しかも不自然さもない。
むしろ自然だった。
「しんどいけど俺...わたし、ついていけてる。これって、実はスゴくね?」
リザレリスはむくりと顔を起こした。
なんだか急に自信が湧いてきて、顔にはニヤッと笑みが浮かんだ。
隣で一部始終を見守っていたエミルは、お転婆プリセンスがまた良からぬ悪戯を考えているのではないかと不安になる。
「あの、リザさま......」
「エミル。俺...わたしは、天才かもしれん。むっふっふ」
リザレリスはにへらと笑った。
その時だった。
「あの、ブラッドヘルムさん」
数人の女子生徒と男子生徒が、リザレリスたちのところへ集まってきた。
「リザさま。お顔を」
エミルに指摘されてリザレリスは即座に表情を戻すと、クラスメイトたちへ顔を向けた。
「ええと、なに?」
「ブラッドヘルムさんて、あの吸血鬼の国〔ブラッドヘルム〕の王女様って本当なの?」
女子生徒が興味津々に訊いてきた。
リザレリスは頷いた。
「本当だけど?」
「きゃー、すごい!」
女子生徒たちは、わぁっと目を輝かせた。
どうやら『王女』という響きが、彼女たちをトキメかせたようだ。
彼女らも貴族なので、一般庶民からすれば羨ましがられる令嬢だろう。
しかし一国の王女となれば、貴族とも一線を画す存在となる。
貴族令嬢だからこそ、その意識は強いのかもしれない。
ところが、そういった意識に著しく欠けるリザレリスは、手を横に振って少年のように笑った。
「んなことないって。王女なんつっても、そんなに大したもんじゃナイナイ。今じゃ国も色々と大変みたいだし、窮屈なことも多いしさー」
「ブラッドヘルム王女様は、とても謙虚な方のようだ」
男子生徒のひとりが言った。
そこにリザレリスが反応する。
「その王女ってのもいいよ。わたしのことはリザでいいからさ」
これには彼ら彼女らもびっくりして、一斉に好感の眼差しを輝かせて沸き上がった。
「リザさまって、王女様なのにとっても気さく!」
「こんなに綺麗で可愛らしいのに全然飾っていないし」
「外見も美人で性格も美人なんて!」
ここからリザレリスは、遊び人だった前世の人格が躍動する。
「みんなもスッゲー可愛いじゃん。俺...わたしが男だったら声かけまくってるわ。実際モテるだろ?いや、絶対モテてる。男が放っておくわけがない。こんなに可愛い女の子たちを」
女子生徒たちは「きゃー」と喜び、男子生徒たちはアハハと愉快に笑った。
それからもリザレリスは調子のイイことを言いまくり、みんなを喜ばせ、楽しませた。
まさに前世の人格の真骨頂といえよう。
隣にいたエミルは、改めて王女の持つ他に類例のない魅力を実感していた。
それと同時に『リザ呼び』が、どんどん自分だけのものじゃなくなっていくことに一抹の寂しさを感じた。
「グレーアムくんって、女性みたいに綺麗なお顔をしてる」
「えっ?」
突然、興味の対象が自分にも向いてきてエミルは一驚する。
そこへリザレリスが便乗した。
「エミルってイケメンだろ?」
今度は王女からイケメンと言われてエミルは動揺する。
「可愛い系イケメン?」
女子たちはエミルの綺麗な顔をしげしげと見て盛り上がる。
そうして......。
気がつけばリザレリスたちのまわりは、すっかりとワイワイ楽しいものになっていた。
そんな中、離れたところから彼らに怪訝な眼差しを向けている者もいた。
「盛り上がっているみたいですね」
「やはり王女ですから、皆の気を引くのでしょう」
「〔ブラッドヘルム〕なんて所詮、今じゃ落ちぶれ国家でしょ?」
三人の中のリーダー格らしい高慢そうな女子が毒づいた。
取り巻きのふたりは調子を合わせて頷く。
「確かに。シルヴィアンナ様のおっしゃるとおりです」
「物珍しいだけでしょう」
シルヴィアンナはふんと鼻を鳴らした。
「如才ないみたいだけれど、女が女をたらこんでどうすんのよ。バカじゃないの」
「が、学校の勉強って、こんなにしんどかったっけ......」
一応、ルイーズの『王女教育授業』の中で、一般的な勉強もさせられていたリザレリス。
そのおかげでなんとか授業についていくことはできたが、それでもシンドイことには変わりなかった。
「よくよく考えたら留学って、海外に勉強しに行くもんなんだよな......」
今さらながらのことに今さら気づいた。
それだけではない。
リザレリスの中ではもうひとつ「今さらな気づき」があった。
彼女の中身は、転生前の人格と記憶をそのまま保持しており、転生後のそれはない。
にもかからず、この世界での勉強が意外なほど身についているのだ。
よくよく考えれば不思議なことだ。
しかも不自然さもない。
むしろ自然だった。
「しんどいけど俺...わたし、ついていけてる。これって、実はスゴくね?」
リザレリスはむくりと顔を起こした。
なんだか急に自信が湧いてきて、顔にはニヤッと笑みが浮かんだ。
隣で一部始終を見守っていたエミルは、お転婆プリセンスがまた良からぬ悪戯を考えているのではないかと不安になる。
「あの、リザさま......」
「エミル。俺...わたしは、天才かもしれん。むっふっふ」
リザレリスはにへらと笑った。
その時だった。
「あの、ブラッドヘルムさん」
数人の女子生徒と男子生徒が、リザレリスたちのところへ集まってきた。
「リザさま。お顔を」
エミルに指摘されてリザレリスは即座に表情を戻すと、クラスメイトたちへ顔を向けた。
「ええと、なに?」
「ブラッドヘルムさんて、あの吸血鬼の国〔ブラッドヘルム〕の王女様って本当なの?」
女子生徒が興味津々に訊いてきた。
リザレリスは頷いた。
「本当だけど?」
「きゃー、すごい!」
女子生徒たちは、わぁっと目を輝かせた。
どうやら『王女』という響きが、彼女たちをトキメかせたようだ。
彼女らも貴族なので、一般庶民からすれば羨ましがられる令嬢だろう。
しかし一国の王女となれば、貴族とも一線を画す存在となる。
貴族令嬢だからこそ、その意識は強いのかもしれない。
ところが、そういった意識に著しく欠けるリザレリスは、手を横に振って少年のように笑った。
「んなことないって。王女なんつっても、そんなに大したもんじゃナイナイ。今じゃ国も色々と大変みたいだし、窮屈なことも多いしさー」
「ブラッドヘルム王女様は、とても謙虚な方のようだ」
男子生徒のひとりが言った。
そこにリザレリスが反応する。
「その王女ってのもいいよ。わたしのことはリザでいいからさ」
これには彼ら彼女らもびっくりして、一斉に好感の眼差しを輝かせて沸き上がった。
「リザさまって、王女様なのにとっても気さく!」
「こんなに綺麗で可愛らしいのに全然飾っていないし」
「外見も美人で性格も美人なんて!」
ここからリザレリスは、遊び人だった前世の人格が躍動する。
「みんなもスッゲー可愛いじゃん。俺...わたしが男だったら声かけまくってるわ。実際モテるだろ?いや、絶対モテてる。男が放っておくわけがない。こんなに可愛い女の子たちを」
女子生徒たちは「きゃー」と喜び、男子生徒たちはアハハと愉快に笑った。
それからもリザレリスは調子のイイことを言いまくり、みんなを喜ばせ、楽しませた。
まさに前世の人格の真骨頂といえよう。
隣にいたエミルは、改めて王女の持つ他に類例のない魅力を実感していた。
それと同時に『リザ呼び』が、どんどん自分だけのものじゃなくなっていくことに一抹の寂しさを感じた。
「グレーアムくんって、女性みたいに綺麗なお顔をしてる」
「えっ?」
突然、興味の対象が自分にも向いてきてエミルは一驚する。
そこへリザレリスが便乗した。
「エミルってイケメンだろ?」
今度は王女からイケメンと言われてエミルは動揺する。
「可愛い系イケメン?」
女子たちはエミルの綺麗な顔をしげしげと見て盛り上がる。
そうして......。
気がつけばリザレリスたちのまわりは、すっかりとワイワイ楽しいものになっていた。
そんな中、離れたところから彼らに怪訝な眼差しを向けている者もいた。
「盛り上がっているみたいですね」
「やはり王女ですから、皆の気を引くのでしょう」
「〔ブラッドヘルム〕なんて所詮、今じゃ落ちぶれ国家でしょ?」
三人の中のリーダー格らしい高慢そうな女子が毒づいた。
取り巻きのふたりは調子を合わせて頷く。
「確かに。シルヴィアンナ様のおっしゃるとおりです」
「物珍しいだけでしょう」
シルヴィアンナはふんと鼻を鳴らした。
「如才ないみたいだけれど、女が女をたらこんでどうすんのよ。バカじゃないの」
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