転生吸血姫〜没落した吸血鬼の王女に転生した俺がワケありの美少年に溺愛されてワガママ王子の姫になる?

根上真気

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第二章

ep41 ぐったり

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 学校案内を終えて理事長室に引き返す道すがらだった。
 不意にフレデリックがリザレリスに訊いてきた。

「お前、フェリックス兄とレイ兄とは何度も会ってんだろ?」

「何度もっていうか、何度かは会ってるけど?」

「じゃあレイ兄の彼女の話は聞いたか?」

「は?なんで?聞いてないけど......あっ」

「おっ、なんか聞いてんのか?」

「そういえば〔ブラッドヘルム〕の雑貨屋で、彼女へのプレゼントだなんだって聞いたような......」

「マジかよ」

 急にフレデリックが嘆息する。
 リザレリスはエミルと顔を見合わせる。

「えっ、なに、どうしたの」

 リザレリスが訊ねると、フレデリックは面白くなさそうな顔をした。

「レイ兄。今の彼女と付き合ってから、なーんか微妙なんだよな」

「微妙?」

「なんかイライラすることが多くなったっていうか」

「気になるのか?」

「そりゃ気になるだろ」

 リザレリスはフレデリックの話を聞きながら、ようやく気づいた。
 おそらくフレデリックは兄のレイナードのことが好きなんだろうな、ということに。
 あの兄のどこがいいのかはわからなかったが、それを口にするのは控えた。

「ふーん。どんな彼女なんだ?」

 大して興味はなかったが、一応リザレリスは訊いてみた。

「まあ、かなりの美人だよ」

 フレデリックの答えはそれだけだった。
 ここでふとリザレリスは、唐突な質問をする。

「てゆーか、フレデリックって、女に興味ないのか?」

 実はそれは、今までの会話の節々ふしぶしから何となく感じられたことだった。
 王女である自分への態度もそうだ。
 兄のレイナードもキツイ態度だったが、それとは異質なものに感じた。
 
「だって女ってマジでバカじゃん」 

 フレデリックは、勘弁してくれとでも言うように吐き棄てた。
 ジョークで言っているようではなかった。
 思わずリザレリスは呆気に取られる。
 遊び人男だった前世でも、さすがに真面目にそんな言葉を吐いたことはなかった。

「世の中バカな女もいればバカじゃない女だっているだろ?」

 リザレリスがそう言っても、フレデリックにはまったく理解を示す様子はない。

「女はみんな、金と地位と権力欲しさにオレたち王子へ近づいてくるんだ。そのくせ口では恋だ愛だと言いやがる。どいつもこいつもバカのくせしてバカの自覚すらないんだよ」

 フレデリックは憤慨ふんがいの言葉をまくし立てる。

「オレは三男だからまだマシだった分、フェリックス兄とレイ兄に近づいてくるバカ女どもも見続けてきたんだ。フェリックス兄はあういう人だから本音もよくわからないけど、レイ兄はオレと同じだと思うぜ。それでもレイ兄は優しいから付き合ったりもしてるけど、オレは女となんか絶対に付き合いたくねえ!」

 それからフレデリックはリザレリスへ人差し指を突きつけて、眼光鋭く言い放つ。

「いいか。悪いことは言わねえ。オレたち王子に近づいても無駄だ。特にオレはな」




 帰りの馬車の中で、リザレリスはぐったりとしていた。
 思わずルイーズがエミルに訊ねる。

「王女殿下はどうされたのです?見学から帰って来てからずっとあの調子ですけど」

「まあ、お疲れになったのではないでしょうか」

 エミルは当たり障りなく返答するが、ルイーズは怪訝けげんな表情を浮かべる。

「まさか、フレデリック王子と何かあったのではないでしょうね」

 図星だったが、エミルはシラを切り通した。
 彼も心の中では、リザレリスと同じような心持ちだった。
 なんというか、フレデリック王子は歪んでしまっているように見えた。
 それでいて理事長の前では、完璧に体裁を取り繕っていた。
 あの曲者くせもの王子を相手にすれば、ぐったりしてしまうのも仕方がないだろう。

「もし何かあっても、私が何とかしますので」

 エミルは信頼感たっぷりに言った。
 心配いりません、ぼくを信じて任せてくださいと言うように。
 するとルイーズは「そうね。まあそれなら......」と納得を示した。
 エミルはふっと吐息をつき、自分の使命を再確認する。
 何があっても自分が王女殿下をお守りする、という強い想いとともに。
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