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ep59 決着
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開始の時のようにハモンドソンと当人ふたりが定位置に戻った。
ビーチャムが頭をボリボリと掻いて苛立ちを見せる中、キースが大成に問いかける。
「あの、なぜタイセーさんがあんなことを?」
「言ったとおりだよ。ナナラはもう俺の仲間だ」
大成は迷いなく答える。
ふざけるなと言わんばかりに隣でビーチャムは口を結んでいるが、大成はナナラに視線を転じた。
「とにかく試合を見届けよう。大丈夫。ナナラは負けないよ」
「そ、そうですね!」
キースは頬を緩めて、ナナラに熱い視線を送った。
そうして数十秒の間を置き......。
ハモンドソンのコールと共に試合が再開された。
「!!」
今度は二人同時にドンッと相手に向かって突進する。
まさに真正面からの真っ向勝負。
すでに詠唱をしながら拳に炎を燃やしたキースと、ただ魔力を込めただけの拳を握るナナラ。
互いの拳と拳が訓練場の中心で激突する!
ガンッ!!
両者まったく譲らない。
拳を突き合わせた形のまま、つばぜり合いのように均衡する二人...と思いきや。
その状態のままで、レッドがもう一方の手を目の前のナナラに向けてかざした。
「近距離だと思って炎弾は撃たないと思ったか?」
「!」
「もう遅え。死ね。イグニア・カノン!」
レッドは至近距離でナナラに向けて強烈な火炎砲をブッ放した。
ズゴォォォォン!!
さすがにこれはダメだ。
誰もがナナラの敗北を確信する。
しかしそれも束の間だった。
なんとナナラは、もう一方の手で火炎砲を掴んでしまうと、そのまま握り潰してしまったのだ。
「なっ!?」
訓練場内にいる全員が大きく目を見張る。
ここでナナラが口端に不敵な笑みを浮かべたのをレッドは見逃さなかった。
だが遅かった。
「て、テメェ、なにする気だ!」
レッドの両の手が、ナナラの両の手にガシッと掴まれた。
今度は力比べのような格好になる。
ナナラはゆっくりと顎を上げた
「歯ぁ、喰いしばれよぉー」
「は?」
「舌、噛まないように気をつけなよぉー」
「お、おい、ちょっと待て!」
「いっくよぉー」
「や、やめ...」
ゴツゥゥゥンッ!!
痛々しいまでの鈍い音が重く鳴り響く。
ギャラリーたちは皆、反射的に顔をしかめた。
それこそ火を吹くようなナナラの凄まじい頭突きが、レッドの前頭部へ強烈に撃ちつけられたからだ。
まるで巨大な鈍器が容赦なく打ちおろされたかの如き一撃。
「あ......」
喰らった瞬間、額から血を噴き出して白目を剥いたレッドは、豪快に潰されたように地に崩れ落ちた。
沈黙が訓練場を包む。
それぐらい激烈な一撃だった。
やがて数秒の間を置き...どっと歓声が上がる。
「スゲェ!!」
「なんだあのヘッドバットは!」
「とんでもないぞあの女!」
興奮するギャラリーへ、ナナラは勝利の拳を突き上げて答えると、満面の笑みでキースに向かいピースサインを送った。
「す、すごいです。ナナラさん......」
感動しているキースの隣で、大成も満足気にうんうんと頷く。
「ほら、やっぱりナナラが勝っただろ?」
大成の言葉に、ビーチャムはやれやれといった具合に大きく吐息を吐いた。
「最後の一撃。あれは己の前頭部に魔力を集めてそのままぶつける、いわば魔力の頭突き。あんな攻撃をやる奴は見たことがない」
「柔軟とも言えるんじゃないか?」
「馬鹿とも言えるがな」
大成は苦笑いで返すが、何となくビーチャムもある程度はナナラのことを評価しているように思った。
「タイセー!レオくーん!」
ナナラは大成たちにも元気いっぱいに手を振ってきた。
果たしてこの常識ハズレのD級魔導師は、大成たちに何をもたらすのだろうか。
彼らの物語は、さらにドタバタと続いていく。
ビーチャムが頭をボリボリと掻いて苛立ちを見せる中、キースが大成に問いかける。
「あの、なぜタイセーさんがあんなことを?」
「言ったとおりだよ。ナナラはもう俺の仲間だ」
大成は迷いなく答える。
ふざけるなと言わんばかりに隣でビーチャムは口を結んでいるが、大成はナナラに視線を転じた。
「とにかく試合を見届けよう。大丈夫。ナナラは負けないよ」
「そ、そうですね!」
キースは頬を緩めて、ナナラに熱い視線を送った。
そうして数十秒の間を置き......。
ハモンドソンのコールと共に試合が再開された。
「!!」
今度は二人同時にドンッと相手に向かって突進する。
まさに真正面からの真っ向勝負。
すでに詠唱をしながら拳に炎を燃やしたキースと、ただ魔力を込めただけの拳を握るナナラ。
互いの拳と拳が訓練場の中心で激突する!
ガンッ!!
両者まったく譲らない。
拳を突き合わせた形のまま、つばぜり合いのように均衡する二人...と思いきや。
その状態のままで、レッドがもう一方の手を目の前のナナラに向けてかざした。
「近距離だと思って炎弾は撃たないと思ったか?」
「!」
「もう遅え。死ね。イグニア・カノン!」
レッドは至近距離でナナラに向けて強烈な火炎砲をブッ放した。
ズゴォォォォン!!
さすがにこれはダメだ。
誰もがナナラの敗北を確信する。
しかしそれも束の間だった。
なんとナナラは、もう一方の手で火炎砲を掴んでしまうと、そのまま握り潰してしまったのだ。
「なっ!?」
訓練場内にいる全員が大きく目を見張る。
ここでナナラが口端に不敵な笑みを浮かべたのをレッドは見逃さなかった。
だが遅かった。
「て、テメェ、なにする気だ!」
レッドの両の手が、ナナラの両の手にガシッと掴まれた。
今度は力比べのような格好になる。
ナナラはゆっくりと顎を上げた
「歯ぁ、喰いしばれよぉー」
「は?」
「舌、噛まないように気をつけなよぉー」
「お、おい、ちょっと待て!」
「いっくよぉー」
「や、やめ...」
ゴツゥゥゥンッ!!
痛々しいまでの鈍い音が重く鳴り響く。
ギャラリーたちは皆、反射的に顔をしかめた。
それこそ火を吹くようなナナラの凄まじい頭突きが、レッドの前頭部へ強烈に撃ちつけられたからだ。
まるで巨大な鈍器が容赦なく打ちおろされたかの如き一撃。
「あ......」
喰らった瞬間、額から血を噴き出して白目を剥いたレッドは、豪快に潰されたように地に崩れ落ちた。
沈黙が訓練場を包む。
それぐらい激烈な一撃だった。
やがて数秒の間を置き...どっと歓声が上がる。
「スゲェ!!」
「なんだあのヘッドバットは!」
「とんでもないぞあの女!」
興奮するギャラリーへ、ナナラは勝利の拳を突き上げて答えると、満面の笑みでキースに向かいピースサインを送った。
「す、すごいです。ナナラさん......」
感動しているキースの隣で、大成も満足気にうんうんと頷く。
「ほら、やっぱりナナラが勝っただろ?」
大成の言葉に、ビーチャムはやれやれといった具合に大きく吐息を吐いた。
「最後の一撃。あれは己の前頭部に魔力を集めてそのままぶつける、いわば魔力の頭突き。あんな攻撃をやる奴は見たことがない」
「柔軟とも言えるんじゃないか?」
「馬鹿とも言えるがな」
大成は苦笑いで返すが、何となくビーチャムもある程度はナナラのことを評価しているように思った。
「タイセー!レオくーん!」
ナナラは大成たちにも元気いっぱいに手を振ってきた。
果たしてこの常識ハズレのD級魔導師は、大成たちに何をもたらすのだろうか。
彼らの物語は、さらにドタバタと続いていく。
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