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ep57 落ちこぼれ魔導師
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そうこうしているうちに、レッドの魔法攻撃が止んだ。
これ以上やってもらちが明かないと判断したのだろう。
「あれ、もう終わり?」
余裕のナナラはあっけらかんとしている。
レッドは汗を滲ませて苛立ちを見せながらも冷静さを取り戻していた。
......こいつは、本気でやらないとダメだ。
「テメェは守ってるだけか?」
レッドが構えを解いた。
「じゃあ、わたしから行っちゃおっかなー」
ナナラは腕をグルグルと回す。
よし、と心の中でレッドはつぶやいた。
ヤツに攻撃をさせてから、隙をついて一撃を入れる。
オレの最大火力の一撃を。
そのためにも、まずはヤツの攻撃を見極める必要がある。
ヤツがどんな魔法を使い、どんな動きを見せるのか。
「えっ??」
レッドの考えは見事に裏切られた。
というより、ナナラの動きがレッドの想定を遥かに超えてきたと言った方がいい。
一瞬だった。
まるで空間が歪んだようにナナラは一足飛びでレッドへ肉薄し、その拳を振り上げていた。
「くっ!!」
それでもレッドは天性の反応速度で何とか防御態勢を間に合わせた。
ドゴッ!
鈍い音が弾ける。
両腕でガードを固めた態勢のままレッドが後ろの壁まで吹っ飛んだ。
ナナラの拳ひとつで大の男が吹っ飛ばされた形だ。
「防がれちゃったかぁ」
悔しそうな表情を浮かべるナナラに、レッドはゆっくりと腕を崩して顔を上げた。
「おい、テメェ......」
「なあに?」
「魔導師なら......魔法を使えコラァ!」
ビシッと勢いよくレッドがナナラを指さした。
もっともな指摘である。
「ローパー君」
ここで審判のハモンドソンがナナラを呼びかけた。
「は、はい」
ナナラはびくっとして振り向く。
「君は先ほどから一回も魔法を使っていないが、それが君の戦闘スタイルなのかね」
「ま、まあ、はい」
「魔法を無駄使いしない。それはむしろ魔導師として素晴らしいことだ。しかしこの試合は君の魔導師としての試験の意味もある。なので多少は使ってもらわないと判断が難しくなってしまうんだが」
「あ、あの、でも、わたし」
ナナラはもじもじし始めた。
ハモンドソンが怪訝な眼差しを浮かべる。
「どうしたんだね」
ナナラは視線を外し、自分の腕を触りながら恥ずかしそうに口をひらく。
「簡単な治癒魔法と、簡単な補助魔法ぐらいしか、その、ちゃんと使えないっていうか......」
「ちゃんと使えない?C級魔導師であれば、炎でも氷でも基本的なものであれば使えるはずなんだが......」
首を傾げるハモンドソンに、ナナラはかすれる声で口にした。
「...級なんです......」
えっ、とその場にいる誰もがハッキリと聞き取れない。
「もう一度言ってくれないか?」
ハモンドソンが確かめるように訊ねると、ナナラはぷるぷると震えながら耳を赤らめて顔を上げる。
「わたしはD級魔導師なんですぅー!!」
ナナラの声が訓練場にこだました。
誰の耳にも届いたはずだが、ハモンドソンも含め誰にも理解が追いつかない。
「今、なんて言った?」
ザワザワとざわつき始めるギャラリー。
その中からギルドのスタッフがひとり、ハモンドソンのもとへ駆け寄っていった。
彼女は大成たちがいた応接室へハモンドソンを呼びにきたスタッフだ。
「なんだ?」
ハモンドソンが振り向くと、スタッフは口をひらいた。
「ナナラ・ローパーさんは、本当にD級魔導師なんです」
その言葉に、ハモンドソンよりも先に反応したのはレッドだった。
「......オイオイオイオイ。ただの落ちごぼれのクズじゃねえか!!」
レッドは唾を撒き散らして嘲笑の大声を上げた。
それに釣られてギャラリーからもどっと笑いが起こった。
「D級って見習いレベルってことだよな!?」
「強いかと思ったらただの力任せの劣等生ってことか!」
「魔導師なんて言えたもんじゃねえぞ!」
ついさっきまでナナラの戦いぶりに圧倒されていた訓練場内の空気は一変する。
「ナナラさん......」
その中でひとり、C級魔導師のキースだけは複雑な表情を浮かべていた。
これ以上やってもらちが明かないと判断したのだろう。
「あれ、もう終わり?」
余裕のナナラはあっけらかんとしている。
レッドは汗を滲ませて苛立ちを見せながらも冷静さを取り戻していた。
......こいつは、本気でやらないとダメだ。
「テメェは守ってるだけか?」
レッドが構えを解いた。
「じゃあ、わたしから行っちゃおっかなー」
ナナラは腕をグルグルと回す。
よし、と心の中でレッドはつぶやいた。
ヤツに攻撃をさせてから、隙をついて一撃を入れる。
オレの最大火力の一撃を。
そのためにも、まずはヤツの攻撃を見極める必要がある。
ヤツがどんな魔法を使い、どんな動きを見せるのか。
「えっ??」
レッドの考えは見事に裏切られた。
というより、ナナラの動きがレッドの想定を遥かに超えてきたと言った方がいい。
一瞬だった。
まるで空間が歪んだようにナナラは一足飛びでレッドへ肉薄し、その拳を振り上げていた。
「くっ!!」
それでもレッドは天性の反応速度で何とか防御態勢を間に合わせた。
ドゴッ!
鈍い音が弾ける。
両腕でガードを固めた態勢のままレッドが後ろの壁まで吹っ飛んだ。
ナナラの拳ひとつで大の男が吹っ飛ばされた形だ。
「防がれちゃったかぁ」
悔しそうな表情を浮かべるナナラに、レッドはゆっくりと腕を崩して顔を上げた。
「おい、テメェ......」
「なあに?」
「魔導師なら......魔法を使えコラァ!」
ビシッと勢いよくレッドがナナラを指さした。
もっともな指摘である。
「ローパー君」
ここで審判のハモンドソンがナナラを呼びかけた。
「は、はい」
ナナラはびくっとして振り向く。
「君は先ほどから一回も魔法を使っていないが、それが君の戦闘スタイルなのかね」
「ま、まあ、はい」
「魔法を無駄使いしない。それはむしろ魔導師として素晴らしいことだ。しかしこの試合は君の魔導師としての試験の意味もある。なので多少は使ってもらわないと判断が難しくなってしまうんだが」
「あ、あの、でも、わたし」
ナナラはもじもじし始めた。
ハモンドソンが怪訝な眼差しを浮かべる。
「どうしたんだね」
ナナラは視線を外し、自分の腕を触りながら恥ずかしそうに口をひらく。
「簡単な治癒魔法と、簡単な補助魔法ぐらいしか、その、ちゃんと使えないっていうか......」
「ちゃんと使えない?C級魔導師であれば、炎でも氷でも基本的なものであれば使えるはずなんだが......」
首を傾げるハモンドソンに、ナナラはかすれる声で口にした。
「...級なんです......」
えっ、とその場にいる誰もがハッキリと聞き取れない。
「もう一度言ってくれないか?」
ハモンドソンが確かめるように訊ねると、ナナラはぷるぷると震えながら耳を赤らめて顔を上げる。
「わたしはD級魔導師なんですぅー!!」
ナナラの声が訓練場にこだました。
誰の耳にも届いたはずだが、ハモンドソンも含め誰にも理解が追いつかない。
「今、なんて言った?」
ザワザワとざわつき始めるギャラリー。
その中からギルドのスタッフがひとり、ハモンドソンのもとへ駆け寄っていった。
彼女は大成たちがいた応接室へハモンドソンを呼びにきたスタッフだ。
「なんだ?」
ハモンドソンが振り向くと、スタッフは口をひらいた。
「ナナラ・ローパーさんは、本当にD級魔導師なんです」
その言葉に、ハモンドソンよりも先に反応したのはレッドだった。
「......オイオイオイオイ。ただの落ちごぼれのクズじゃねえか!!」
レッドは唾を撒き散らして嘲笑の大声を上げた。
それに釣られてギャラリーからもどっと笑いが起こった。
「D級って見習いレベルってことだよな!?」
「強いかと思ったらただの力任せの劣等生ってことか!」
「魔導師なんて言えたもんじゃねえぞ!」
ついさっきまでナナラの戦いぶりに圧倒されていた訓練場内の空気は一変する。
「ナナラさん......」
その中でひとり、C級魔導師のキースだけは複雑な表情を浮かべていた。
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