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ep55 訓練場
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ギルドの地下にはガランとした殺風景な倉庫のような空間がある。
そこは魔法による特殊な加工がなされており、相当程度の衝撃に耐えうるよう設計されていた。
「ここは所属魔導師のみが使用できる当ギルドの訓練場だ」
ハモンドソンの説明を聞き、ナナラは目を輝かせる。
「地下にこんなスペースがあったなんて!」
相変わらず呑気な態度のナナラに向かい、レッドは殺気立った眼つきで睨みつける。
「ここなら遠慮なくオレの炎魔法でテメーを焼き殺せるってことだ」
「いいからお前はキースくんにあやまれ」
ナナラも負けじと睨み返す。
そのままバチバチと火花を散らす二人を、ハモンドソンが指定した位置に立たせた。
「私が試合開始のコールをするまで待ちなさい」
訓練場の中心にハモンドソンが、やや距離を空けてナナラとレッドが向かい合う。
そこから十数メートル離れて彼らを囲むようにギャラリーが並んで立っている。
その中に大成とビーチャムもいた。
「魔導師同士の試合かぁ。どうなるんだろ」
「おいタイセー。本当にこんなもの見ていくのか」
「見る機会もないからな」
「見る必要もないだろう」
ビーチャムがうんざりしながら言う。
しかし大成には見ておきたい理由があった。
「ナナラも新人魔導師なんだよな」
「奴はダメだ」
「まだ何も言ってないだろ?」
「僕はあういう頭を使っていないような人間は受けつけない」
「まあビーチャムとは対照的だろうだけど......」
それでも大成は一度、ナナラと面談してみたいと考えていた。
どうしてか?
実はつい先ほど、大成はキースに近づき「なんでこんなことになったのか、詳しく教えてくれないか?」と、この一件の事情を聴取していた。
大成の質問にキースはこう答えた。
「以前から、ぼくはレッド君に見下されていて、バカにされていたんです。でもさすがに殴られたりすることまではありませんでした。
ところがです。今日はタイセーさんたちとの面談の後、レッド君かなり荒れていて、ぼくへの当たりもいつも以上にキツくて、ついには暴力まで振るわれたんです。暴言もいつも以上に酷くて。先輩たちも止めに入ってくれたんですけど、それでもレッド君は止まらなくて。
え?暴力と暴言はどんなものだったか、ですか?
蹴り飛ばされて床に倒れたところを何度か踏みつけられました。でもさすがに加減はしてくれていたとは思います。本気のレッド君はすごく強いですから。
あと暴言ですよね。言われたのは、ボクが魔導師オタクのことです。気持ち悪いとか、恥晒しだとか、そんな理由で魔導師やるなクズとか、そんなところです。
あとは、等級のことも言われました。そもそもC級のくせにギルドに入ってくるんじゃねえとか、役立たずとか、出来損ないとか、才能ないんだからとっとと魔導師なんか辞めちまえとか......。
暴力を振るわれたのもショックでしたけど、言葉の暴力もショックでした。
もちろんぼくだって自分のことはわかっているつもりです。大した才能がないってこともわかっています。でもだからといって、あんなふうに面罵されるいわれはないはずです。
でも、ぼくにはレッド君にやり返すだけの力も心の強さもなくて......。
そんな時です。
ナナラさんが颯爽とやって来て、強引にレッド君をぼくから引き離したんです。
その時びっくりしたのはぼくだけじゃありません。近くにいた先輩たちも、当のレッド君も驚いていました。
そしてナナラさんは、何もできなかった情けないぼくの目の前に立って、レッド君に立ちはだかってくれたんです。
それからナナラさんはレッド君に向かってこう言いました。
彼に吐きかけた暴言を取り消せって。その上で謝れって。じゃないとわたしがお前をぶっ飛ばすって。
まるでぼく以上にぼくのことで怒ってくれているみたいに......」
この話を聞いて......なぜだか大成は、ナナラに強い興味を惹かれたのだった。
ナナラという魔導師...あるいはナナラという人物を、見極めてみたい。
そう思いながら、大成は彼女の行方を見つめていたのである。
そこは魔法による特殊な加工がなされており、相当程度の衝撃に耐えうるよう設計されていた。
「ここは所属魔導師のみが使用できる当ギルドの訓練場だ」
ハモンドソンの説明を聞き、ナナラは目を輝かせる。
「地下にこんなスペースがあったなんて!」
相変わらず呑気な態度のナナラに向かい、レッドは殺気立った眼つきで睨みつける。
「ここなら遠慮なくオレの炎魔法でテメーを焼き殺せるってことだ」
「いいからお前はキースくんにあやまれ」
ナナラも負けじと睨み返す。
そのままバチバチと火花を散らす二人を、ハモンドソンが指定した位置に立たせた。
「私が試合開始のコールをするまで待ちなさい」
訓練場の中心にハモンドソンが、やや距離を空けてナナラとレッドが向かい合う。
そこから十数メートル離れて彼らを囲むようにギャラリーが並んで立っている。
その中に大成とビーチャムもいた。
「魔導師同士の試合かぁ。どうなるんだろ」
「おいタイセー。本当にこんなもの見ていくのか」
「見る機会もないからな」
「見る必要もないだろう」
ビーチャムがうんざりしながら言う。
しかし大成には見ておきたい理由があった。
「ナナラも新人魔導師なんだよな」
「奴はダメだ」
「まだ何も言ってないだろ?」
「僕はあういう頭を使っていないような人間は受けつけない」
「まあビーチャムとは対照的だろうだけど......」
それでも大成は一度、ナナラと面談してみたいと考えていた。
どうしてか?
実はつい先ほど、大成はキースに近づき「なんでこんなことになったのか、詳しく教えてくれないか?」と、この一件の事情を聴取していた。
大成の質問にキースはこう答えた。
「以前から、ぼくはレッド君に見下されていて、バカにされていたんです。でもさすがに殴られたりすることまではありませんでした。
ところがです。今日はタイセーさんたちとの面談の後、レッド君かなり荒れていて、ぼくへの当たりもいつも以上にキツくて、ついには暴力まで振るわれたんです。暴言もいつも以上に酷くて。先輩たちも止めに入ってくれたんですけど、それでもレッド君は止まらなくて。
え?暴力と暴言はどんなものだったか、ですか?
蹴り飛ばされて床に倒れたところを何度か踏みつけられました。でもさすがに加減はしてくれていたとは思います。本気のレッド君はすごく強いですから。
あと暴言ですよね。言われたのは、ボクが魔導師オタクのことです。気持ち悪いとか、恥晒しだとか、そんな理由で魔導師やるなクズとか、そんなところです。
あとは、等級のことも言われました。そもそもC級のくせにギルドに入ってくるんじゃねえとか、役立たずとか、出来損ないとか、才能ないんだからとっとと魔導師なんか辞めちまえとか......。
暴力を振るわれたのもショックでしたけど、言葉の暴力もショックでした。
もちろんぼくだって自分のことはわかっているつもりです。大した才能がないってこともわかっています。でもだからといって、あんなふうに面罵されるいわれはないはずです。
でも、ぼくにはレッド君にやり返すだけの力も心の強さもなくて......。
そんな時です。
ナナラさんが颯爽とやって来て、強引にレッド君をぼくから引き離したんです。
その時びっくりしたのはぼくだけじゃありません。近くにいた先輩たちも、当のレッド君も驚いていました。
そしてナナラさんは、何もできなかった情けないぼくの目の前に立って、レッド君に立ちはだかってくれたんです。
それからナナラさんはレッド君に向かってこう言いました。
彼に吐きかけた暴言を取り消せって。その上で謝れって。じゃないとわたしがお前をぶっ飛ばすって。
まるでぼく以上にぼくのことで怒ってくれているみたいに......」
この話を聞いて......なぜだか大成は、ナナラに強い興味を惹かれたのだった。
ナナラという魔導師...あるいはナナラという人物を、見極めてみたい。
そう思いながら、大成は彼女の行方を見つめていたのである。
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