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「で、どうやるんだい」
台所にある炉の前まで来て、中年主婦が大成たちに顔を向けた。
大成はこくっと頷いてから、炉の中へ手を伸ばし改良版メラパッチンを設置する。
「ここからはビーチャム博士。お願いします」
大成は笑顔でビーチャムに振った。
ビーチャムはおもむろにポケットからメモ紙を取り出すと、中年主婦へ手渡す。
「何か書いてあるねぇ?」
「それは詠唱文だ。改良版メラパッチンに向かって手をかざし、その文言を読み上げれば発火する」
「なるほどね。あれ、でも一箇所、空白になっているが、ここはなんだい」
中年主婦が該当箇所を指さす。
彼女の指摘したとおり、確かに文章の中には歯抜けになっている箇所があった。
「そこは自分の名前を言ってくれ」
ビーチャムの回答に、中年主婦は首を傾げる。
「今度のは、自分の名前を言わないといけないのかい」
「そうだ。なぜなら一度その者の名前で詠唱して使用すれば、それ以降はその者でしか発動できなくなるようにしてある」
中年主婦は再び首を傾げるが、ややあってから閃いた顔をした。
どうやら意味を理解したようだ。
「さっきあんたらが言っていた安全性って、ひょっとして......」
「そういうことです」
大成が安心感抜群の声で返事をした。
「なるほど。それは確かによくできてる。それなら子どもがいても安心して使えるねぇ」
中年主婦の今日イチの肯定的な反応に、大成とビーチャムは「よし」と頷き合った。
そして中年主婦は、ビーチャムの説明どおりに改良版メラパッチンへ向かって手をかざし、メモを見ながら始めた。
一件目の訪問を無事成功させた大成たちは、次の訪問先へ向かっていた。
良く晴れた日の心地よい風は、ふたりの足取りを軽くさせる。
「おい、タイセー」
二件目の家の前まで来た時、不意にビーチャムが大成に呼びかけた。
どうしても確認しておきたいことがあったからだ。
「今回も、本当に無料でいいのか?」
「それはもう説明しただろ?」
「だからこそ意図的に使用回数を減らした、というのもわかるが......」
「本当の勝負はこれからだからな。それに、さっきの主婦の反応を見て、これはますますイケる気がしている。もちろん過信も油断する気もないが」
大成は確かな自信を滲ませた。
かといって冷静さも失っていない。
そんな顔だ。
「商売というからには、とにかく売って売って金を取っていくと思っていたが、タイセーのやる商売は些か様相が異なるのだな」
「何事にも段階があるからな。今はその段階じゃないってことだ。もちろん事業にも人間と同じで体力ってもんがある。だからゆっくりはしていられない。焦って正常な判断ができなくなるのはもってのほかだが、ある程度の速度で進んでいかなければならない」
大成の目の奥に鋭い光が射した。
太陽の光が反射したわけではない。
彼の内から来るモノだ。
「どうやらつまらない事を言って腰を折ってしまったようだな」
ビーチャムはふっと苦笑する。
「そんなことはないさ。気がついたことがあったらいつでも忌憚ない意見を言ってくれ」
大成は穏やかに笑って返すと、二件目の家のドアへ向かって足を踏み出した。
台所にある炉の前まで来て、中年主婦が大成たちに顔を向けた。
大成はこくっと頷いてから、炉の中へ手を伸ばし改良版メラパッチンを設置する。
「ここからはビーチャム博士。お願いします」
大成は笑顔でビーチャムに振った。
ビーチャムはおもむろにポケットからメモ紙を取り出すと、中年主婦へ手渡す。
「何か書いてあるねぇ?」
「それは詠唱文だ。改良版メラパッチンに向かって手をかざし、その文言を読み上げれば発火する」
「なるほどね。あれ、でも一箇所、空白になっているが、ここはなんだい」
中年主婦が該当箇所を指さす。
彼女の指摘したとおり、確かに文章の中には歯抜けになっている箇所があった。
「そこは自分の名前を言ってくれ」
ビーチャムの回答に、中年主婦は首を傾げる。
「今度のは、自分の名前を言わないといけないのかい」
「そうだ。なぜなら一度その者の名前で詠唱して使用すれば、それ以降はその者でしか発動できなくなるようにしてある」
中年主婦は再び首を傾げるが、ややあってから閃いた顔をした。
どうやら意味を理解したようだ。
「さっきあんたらが言っていた安全性って、ひょっとして......」
「そういうことです」
大成が安心感抜群の声で返事をした。
「なるほど。それは確かによくできてる。それなら子どもがいても安心して使えるねぇ」
中年主婦の今日イチの肯定的な反応に、大成とビーチャムは「よし」と頷き合った。
そして中年主婦は、ビーチャムの説明どおりに改良版メラパッチンへ向かって手をかざし、メモを見ながら始めた。
一件目の訪問を無事成功させた大成たちは、次の訪問先へ向かっていた。
良く晴れた日の心地よい風は、ふたりの足取りを軽くさせる。
「おい、タイセー」
二件目の家の前まで来た時、不意にビーチャムが大成に呼びかけた。
どうしても確認しておきたいことがあったからだ。
「今回も、本当に無料でいいのか?」
「それはもう説明しただろ?」
「だからこそ意図的に使用回数を減らした、というのもわかるが......」
「本当の勝負はこれからだからな。それに、さっきの主婦の反応を見て、これはますますイケる気がしている。もちろん過信も油断する気もないが」
大成は確かな自信を滲ませた。
かといって冷静さも失っていない。
そんな顔だ。
「商売というからには、とにかく売って売って金を取っていくと思っていたが、タイセーのやる商売は些か様相が異なるのだな」
「何事にも段階があるからな。今はその段階じゃないってことだ。もちろん事業にも人間と同じで体力ってもんがある。だからゆっくりはしていられない。焦って正常な判断ができなくなるのはもってのほかだが、ある程度の速度で進んでいかなければならない」
大成の目の奥に鋭い光が射した。
太陽の光が反射したわけではない。
彼の内から来るモノだ。
「どうやらつまらない事を言って腰を折ってしまったようだな」
ビーチャムはふっと苦笑する。
「そんなことはないさ。気がついたことがあったらいつでも忌憚ない意見を言ってくれ」
大成は穏やかに笑って返すと、二件目の家のドアへ向かって足を踏み出した。
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