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ep27 営業開始!
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生産設備は整った(石鍋だけど)。
商品もある(石ころだけど)。
「よし、これで全部だな」
バーバラが帰ってから、二人はまたたく間の勢いで火の魔法石への魔力注入作業を終えた。
大成発案ビーチャム製作の魔力注入魔導具〔魔法の泉〕は、期待以上の性能だった。
「これだけあればしばらくはもつだろうな」
ところで......。
火の魔法石〔メラパッチン〕は、日常レベルの火を起こすためだけの簡易魔導具である。
魔力が切れるまで使えるが、三回程度の使用が限度となっている。
これを朝昼晩の食事の支度で使用すると考えると、一日一個。
正直、何とも言い難い品物と言える。
果たして大成は、どのように商売を行っていくつもりなのだろうか。
「だから売らないって言ったろ?」
大成の言葉に、ビーチャムは改めて耳を疑った。
「最初に聞いた時も驚いたが、本当にそれでいいのか?」
金儲けを嫌うビーチャムの方が心配になるという奇妙な光景。
しかし大成はブレることなくニヤリとして見せた。
「損して得を取るってやつさ」
「僕には今ひとつよくわからないが」
「そんなことはない。ビーチャムだってやってることだ」
「どういうことだ?」
「未来への投資だよ。研究もまさにそれじゃないのかな」
「それはそうだが」
「商売は、長期的な視点を持って行わないと必ず先細りのものになってしまうからな。ということで......」
大成は魔法石の入った袋を手に取って玄関を指さした。
「皆さまにお配りするぞ!」
陽気に準備作業を始める大成の背中を、どうにも釈然としないままのビーチャムが見つめていた。
火の魔法石〔メラパッチン〕を二十リットル程の布袋に入れ、リアカーに積んでいく。
最終的に十個の布袋がリアカーに積まれると、彼らは出発した。
「良い天気でよかったな~」
「おい、タイセー」
リアカーを引きながら溌剌と空を見上げる大成に、ビーチャムは不満たっぷりの視線を投げつける。
「どうした?」
「僕が同行する必要はあるのか?」
ビーチャムは本気で嫌そうだ。
「あるだろ。ご近所さんへの挨拶も兼ねてるんだし」
「営業とやらは貴様の専売特許なのだろう?」
「営業は俺に任せろ」
「だったら貴様が一人で行った方がいいだろう?どう考えても僕には不向きだ」
「ビーチャムは一緒に来てもらって顔を見せるだけでいいんだよ。俺たちにとって必ずプラスになる」
「納得がいかん......」
そんなビーチャムを尻目に、さっそく大成は記念すべき訪問営業一件目となる住宅の扉を叩いた。
質素な石造りの一軒家だ。
「ん?あんたら誰?」
小太りの中年主婦がドアを開けて二人を見るなり怪訝な眼差しを向けてきた。
「我々はビーチャム研究所の者です」
大成が笑顔で答えると、中年主婦は明からさまに顔をしかめた。
「あのマッドサイエンティストの?」
「あはは。そういう噂が立っているのは我々も認識しております。あっ、そこにいるのがビーチャム博士です」
大成は数歩離れて後ろに立っているビーチャムを紹介する。
主婦は「あっ」となって手で口を塞いだ。
「僕がマッドサイエンティストのレオニダス・ビーチャムだ」
ビーチャムは当てつけるように名乗った。
商品もある(石ころだけど)。
「よし、これで全部だな」
バーバラが帰ってから、二人はまたたく間の勢いで火の魔法石への魔力注入作業を終えた。
大成発案ビーチャム製作の魔力注入魔導具〔魔法の泉〕は、期待以上の性能だった。
「これだけあればしばらくはもつだろうな」
ところで......。
火の魔法石〔メラパッチン〕は、日常レベルの火を起こすためだけの簡易魔導具である。
魔力が切れるまで使えるが、三回程度の使用が限度となっている。
これを朝昼晩の食事の支度で使用すると考えると、一日一個。
正直、何とも言い難い品物と言える。
果たして大成は、どのように商売を行っていくつもりなのだろうか。
「だから売らないって言ったろ?」
大成の言葉に、ビーチャムは改めて耳を疑った。
「最初に聞いた時も驚いたが、本当にそれでいいのか?」
金儲けを嫌うビーチャムの方が心配になるという奇妙な光景。
しかし大成はブレることなくニヤリとして見せた。
「損して得を取るってやつさ」
「僕には今ひとつよくわからないが」
「そんなことはない。ビーチャムだってやってることだ」
「どういうことだ?」
「未来への投資だよ。研究もまさにそれじゃないのかな」
「それはそうだが」
「商売は、長期的な視点を持って行わないと必ず先細りのものになってしまうからな。ということで......」
大成は魔法石の入った袋を手に取って玄関を指さした。
「皆さまにお配りするぞ!」
陽気に準備作業を始める大成の背中を、どうにも釈然としないままのビーチャムが見つめていた。
火の魔法石〔メラパッチン〕を二十リットル程の布袋に入れ、リアカーに積んでいく。
最終的に十個の布袋がリアカーに積まれると、彼らは出発した。
「良い天気でよかったな~」
「おい、タイセー」
リアカーを引きながら溌剌と空を見上げる大成に、ビーチャムは不満たっぷりの視線を投げつける。
「どうした?」
「僕が同行する必要はあるのか?」
ビーチャムは本気で嫌そうだ。
「あるだろ。ご近所さんへの挨拶も兼ねてるんだし」
「営業とやらは貴様の専売特許なのだろう?」
「営業は俺に任せろ」
「だったら貴様が一人で行った方がいいだろう?どう考えても僕には不向きだ」
「ビーチャムは一緒に来てもらって顔を見せるだけでいいんだよ。俺たちにとって必ずプラスになる」
「納得がいかん......」
そんなビーチャムを尻目に、さっそく大成は記念すべき訪問営業一件目となる住宅の扉を叩いた。
質素な石造りの一軒家だ。
「ん?あんたら誰?」
小太りの中年主婦がドアを開けて二人を見るなり怪訝な眼差しを向けてきた。
「我々はビーチャム研究所の者です」
大成が笑顔で答えると、中年主婦は明からさまに顔をしかめた。
「あのマッドサイエンティストの?」
「あはは。そういう噂が立っているのは我々も認識しております。あっ、そこにいるのがビーチャム博士です」
大成は数歩離れて後ろに立っているビーチャムを紹介する。
主婦は「あっ」となって手で口を塞いだ。
「僕がマッドサイエンティストのレオニダス・ビーチャムだ」
ビーチャムは当てつけるように名乗った。
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