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ep24 魔導科学
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ビーチャムが魔力注入用魔導具を完成させたのは、次にバーバラがやって来る前日の夜だった。
「こ、これが?」
台に置かれたそれを見て、大成はわなわなと震えた。
そんな彼にビーチャムは疑問の表情を浮かべる。
「どうした?」
「だってこれ、どっからどう見ても......鍋なんですけどー!?」
大成の声が研究所内に轟いた。
なんと魔力注入用魔導具は、直径四十センチほどの石鍋だった。
ご丁寧に蓋まで付いている。
「蓋を開けてみろ」
ビーチャムがぶっきらぼうに言う。
当惑しながらも大成は言われるままに蓋を開けてみた。
「中の底と側面に幾何学模様......魔法陣か!」
「蓋の裏にもあるぞ」
「ということは、この中に火の魔法石を入れて蓋を閉じて魔力注入をする、ということか」
「そういうことだ。永遠というわけではないが、壊れない限りは繰り返し使える」
「それにしてもかなり頑丈そうな石鍋だよな......」
「実はこの石鍋。以前に旅先の道具屋で見つけた物なのだが、妖精の泉がある洞窟の石で作られた特殊な物なんだ」
「よ、妖精の泉の洞窟?」
不意に登場したファンタジーなフレーズに大成は俄然テンションを上げる。
「その時点ですでに魔導具じゃないか!」
「いや、これ自体は魔導具といえるほどの物ではない。中の魔法陣は僕が施した物だ」
「そうなのか。でもわざわざこの鍋を使う理由があるんだろ?」
「これは魔導師の旅用に作られた鍋なんだ。この鍋を使うと、ほんのわずかな火魔法でも充分な火が通って簡単に調理ができるんだ。なのでこれを使えば焚き火もいらない」
「便利だな。重そうだけど」
「まさしくその通りで、実際にこいつを旅の道具として常備するのは少々不便ということで、今ではほとんど生産されていない。何せ値段も安くない上に、日常の調理用なら普通の鍋で火を起こせば充分だしな」
そういえば、まさにそんな感じで消えていった家電製品もあったよなぁ......と大成は思い浮かべた。
商品やサービスがユーザーのニーズから離れていってしまうことは典型的な失敗例だ。
「残念な鍋なんだな......」
「買ってからずっとしまったままだったのだが、そういえば......と思い出して今回使用するに至ったと言うわけだ。というわけで話を質問に戻そう」
「もう何となくわかったかも」
「この鍋なら効果効力をより発揮しやすくなると考えたからだ」
「やっぱりそうか」
「時間をかけてこの鍋を解析した結果、理論上も計算上もそれは正しかった。明日、この石鍋にバーさんに魔力を充填してもらうわけだが、それにより以前の倍以上の効果が期待される。どういうことかわかるか?」
「例えば......今までバーバラさんが火の魔法石1個の魔力注入に1の魔力を消費していたのに対して、この石鍋なら0.5の魔力の消費で済むってことかな」
「そういうことだ。計算上は二倍どころではないがな。僕はこの石鍋を魔力注入魔導具として生まれ変わらせることに成功し、同時に魔力注入の効率化と合理化を実現させたのだ。しかも魔力注入のための技術も必要ない」
「おおお、凄いな」
「僕にとっては難しくないと言っていただろう。一応言っておくが、この魔導具はかなり画期的な物だぞ。僕が施した魔法陣も、今までありそうでなかった実に斬新で特殊な物だ」
「......今更だけど、魔力がほとんどないのにも関わらず、ビーチャムは理論や計算で魔導具を作れてしまうんだな」
「様々な科学理論、数学理論、魔導理論、物理方程式から魔導方程式......そういった物を駆使すれば不可能ではない」
デスクにある開いたままのビーチャムのノートには、わけのわからない計算式がびっちりと書き込まれている。
それが形になり、実物となった物が今、目の前に置かれている。
「この世界の魔導科学、か......」
思わず大成は感嘆の息を漏らさずにはいられなかった。
「こ、これが?」
台に置かれたそれを見て、大成はわなわなと震えた。
そんな彼にビーチャムは疑問の表情を浮かべる。
「どうした?」
「だってこれ、どっからどう見ても......鍋なんですけどー!?」
大成の声が研究所内に轟いた。
なんと魔力注入用魔導具は、直径四十センチほどの石鍋だった。
ご丁寧に蓋まで付いている。
「蓋を開けてみろ」
ビーチャムがぶっきらぼうに言う。
当惑しながらも大成は言われるままに蓋を開けてみた。
「中の底と側面に幾何学模様......魔法陣か!」
「蓋の裏にもあるぞ」
「ということは、この中に火の魔法石を入れて蓋を閉じて魔力注入をする、ということか」
「そういうことだ。永遠というわけではないが、壊れない限りは繰り返し使える」
「それにしてもかなり頑丈そうな石鍋だよな......」
「実はこの石鍋。以前に旅先の道具屋で見つけた物なのだが、妖精の泉がある洞窟の石で作られた特殊な物なんだ」
「よ、妖精の泉の洞窟?」
不意に登場したファンタジーなフレーズに大成は俄然テンションを上げる。
「その時点ですでに魔導具じゃないか!」
「いや、これ自体は魔導具といえるほどの物ではない。中の魔法陣は僕が施した物だ」
「そうなのか。でもわざわざこの鍋を使う理由があるんだろ?」
「これは魔導師の旅用に作られた鍋なんだ。この鍋を使うと、ほんのわずかな火魔法でも充分な火が通って簡単に調理ができるんだ。なのでこれを使えば焚き火もいらない」
「便利だな。重そうだけど」
「まさしくその通りで、実際にこいつを旅の道具として常備するのは少々不便ということで、今ではほとんど生産されていない。何せ値段も安くない上に、日常の調理用なら普通の鍋で火を起こせば充分だしな」
そういえば、まさにそんな感じで消えていった家電製品もあったよなぁ......と大成は思い浮かべた。
商品やサービスがユーザーのニーズから離れていってしまうことは典型的な失敗例だ。
「残念な鍋なんだな......」
「買ってからずっとしまったままだったのだが、そういえば......と思い出して今回使用するに至ったと言うわけだ。というわけで話を質問に戻そう」
「もう何となくわかったかも」
「この鍋なら効果効力をより発揮しやすくなると考えたからだ」
「やっぱりそうか」
「時間をかけてこの鍋を解析した結果、理論上も計算上もそれは正しかった。明日、この石鍋にバーさんに魔力を充填してもらうわけだが、それにより以前の倍以上の効果が期待される。どういうことかわかるか?」
「例えば......今までバーバラさんが火の魔法石1個の魔力注入に1の魔力を消費していたのに対して、この石鍋なら0.5の魔力の消費で済むってことかな」
「そういうことだ。計算上は二倍どころではないがな。僕はこの石鍋を魔力注入魔導具として生まれ変わらせることに成功し、同時に魔力注入の効率化と合理化を実現させたのだ。しかも魔力注入のための技術も必要ない」
「おおお、凄いな」
「僕にとっては難しくないと言っていただろう。一応言っておくが、この魔導具はかなり画期的な物だぞ。僕が施した魔法陣も、今までありそうでなかった実に斬新で特殊な物だ」
「......今更だけど、魔力がほとんどないのにも関わらず、ビーチャムは理論や計算で魔導具を作れてしまうんだな」
「様々な科学理論、数学理論、魔導理論、物理方程式から魔導方程式......そういった物を駆使すれば不可能ではない」
デスクにある開いたままのビーチャムのノートには、わけのわからない計算式がびっちりと書き込まれている。
それが形になり、実物となった物が今、目の前に置かれている。
「この世界の魔導科学、か......」
思わず大成は感嘆の息を漏らさずにはいられなかった。
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