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ep13 起業
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「なあ、ビーチャム」
大成が、手に持った物体を撫でながら改めて切り出す。
その瞳にはかつてのビジネスマンの光を取り戻していた。
「なんだ?」
「この新型魔導装置について、もう少し詳しく教えて欲しいんだが」
「なんでも言ってみろ」
「ビーチャムは、これを使って実際に何をやろうとしたんだ?例えば、遠隔で火の魔法で火をつけるとか、そういうこと?」
「文字だ」
「文字?」
「実際にやってみた方が早いな」
ビーチャムはデスクの引き出しから、もう一個の新型魔導装置を手に取った。
この時、大成はピーンと来る。
まさか......。
「やるぞ」
ビーチャムは新型魔導装置を左手に置いて、右手の指で文字を書くようになぞった。
その様子は、まさにあれを想起させる。
「これは......」
ビーチャム側の新型魔導装置がピカァッと光ると、やや間を置いてから大成の持った新型魔導装置も同じように光った。
「どうだ?見えたか?」
「文字が、送られてきたのか!」
「そうだ。今僕がこれに指でなぞった文字が、貴様が持っているそれに送られたのだ」
「まるでメールだ!」
「昨日の貴様の話を、僕が聞き捨てならなかったのは、何も転生女神テレサの名を出したことだけではないんだよ」
すごいな......素直に思った。
この世界にはメールどころか電話もない。
連絡手段は基本的には手紙だ。
そんな世界でビーチャムは、メールもどきを実現してしまっている。
しかも魔導具を指でなぞるその仕草は、まるでスマホじゃないか。
もちろんビーチャムは、俺の話を聞くまではスマホなど知る由もない。
であるにもかかわらず、彼は研究の試行錯誤の過程で、おのずとそこに辿り着いたんだ。
「凄いな......」
「つまらない世辞などいらん」
「お世辞じゃない。本当に凄い。革新的な発明だよ」
「何人かの魔導師は、これを見て馬鹿にしてきたけどな。そんなもの手紙か通信魔法で充分だろと」
「そいつらが馬鹿なんだ。これはこの世界にとんでもない革命をもたらすぞ。おそらく、世界の発展に大いに貢献するに違いない。お前、天才だよ!」
いつの間にか大成は立ち上がり、少年のように目をキラキラと輝かせていた。
彼のあまりの興奮具合に、むしろビーチャムが圧倒されていた。
「さ、さすがは異世界人だな。理解の仕方が多くの者と些か異なるようだ」
「ビーチャム!」
「な、なんだ?」
大成はキッとビーチャムを見据える。
もはや言わずにはいられなかった。
「俺と、起業しないか!?」
「貴様と僕で、起業するだと?」
途端にビーチャムの表情が訝しげなものになる。
それを大成は敏感に察した。
このまま勢いで進めない方がいい。
「いや、なんでもない。思わず口走ってしまっただけだ」
いったん退いて、再びボロ椅子に腰を下ろした。
とはいえこのまま引き下がるだけでは意味がない。
大成は思う。
まずはビーチャムという人物をもっと知らなければならない。
「話の腰を折ってすまなかった。改めて、この新型魔導装置についてもう少し聞きたいんだが」
「なんだ。言ってみろ」
若干ビーチャムのトーンが下がった気がする。
わかってはいたが、やはりこの魔導博士は気難しいようだ。
ただ、一方でこうも思う。
簡単にビジネスの話に喰いついてくるような魔導博士は信用できない。
そういう意味では、ビーチャムは信用できる魔導博士なのかもしれない。
彼の研究に対しての情熱は純粋なものなんだと思える。
であるなら、尚更ビーチャムの力が欲しいとも思う。
いずれにしても、この男にビジネスの話を持ちかけるのは注意深く行わなければならない。
大成が、手に持った物体を撫でながら改めて切り出す。
その瞳にはかつてのビジネスマンの光を取り戻していた。
「なんだ?」
「この新型魔導装置について、もう少し詳しく教えて欲しいんだが」
「なんでも言ってみろ」
「ビーチャムは、これを使って実際に何をやろうとしたんだ?例えば、遠隔で火の魔法で火をつけるとか、そういうこと?」
「文字だ」
「文字?」
「実際にやってみた方が早いな」
ビーチャムはデスクの引き出しから、もう一個の新型魔導装置を手に取った。
この時、大成はピーンと来る。
まさか......。
「やるぞ」
ビーチャムは新型魔導装置を左手に置いて、右手の指で文字を書くようになぞった。
その様子は、まさにあれを想起させる。
「これは......」
ビーチャム側の新型魔導装置がピカァッと光ると、やや間を置いてから大成の持った新型魔導装置も同じように光った。
「どうだ?見えたか?」
「文字が、送られてきたのか!」
「そうだ。今僕がこれに指でなぞった文字が、貴様が持っているそれに送られたのだ」
「まるでメールだ!」
「昨日の貴様の話を、僕が聞き捨てならなかったのは、何も転生女神テレサの名を出したことだけではないんだよ」
すごいな......素直に思った。
この世界にはメールどころか電話もない。
連絡手段は基本的には手紙だ。
そんな世界でビーチャムは、メールもどきを実現してしまっている。
しかも魔導具を指でなぞるその仕草は、まるでスマホじゃないか。
もちろんビーチャムは、俺の話を聞くまではスマホなど知る由もない。
であるにもかかわらず、彼は研究の試行錯誤の過程で、おのずとそこに辿り着いたんだ。
「凄いな......」
「つまらない世辞などいらん」
「お世辞じゃない。本当に凄い。革新的な発明だよ」
「何人かの魔導師は、これを見て馬鹿にしてきたけどな。そんなもの手紙か通信魔法で充分だろと」
「そいつらが馬鹿なんだ。これはこの世界にとんでもない革命をもたらすぞ。おそらく、世界の発展に大いに貢献するに違いない。お前、天才だよ!」
いつの間にか大成は立ち上がり、少年のように目をキラキラと輝かせていた。
彼のあまりの興奮具合に、むしろビーチャムが圧倒されていた。
「さ、さすがは異世界人だな。理解の仕方が多くの者と些か異なるようだ」
「ビーチャム!」
「な、なんだ?」
大成はキッとビーチャムを見据える。
もはや言わずにはいられなかった。
「俺と、起業しないか!?」
「貴様と僕で、起業するだと?」
途端にビーチャムの表情が訝しげなものになる。
それを大成は敏感に察した。
このまま勢いで進めない方がいい。
「いや、なんでもない。思わず口走ってしまっただけだ」
いったん退いて、再びボロ椅子に腰を下ろした。
とはいえこのまま引き下がるだけでは意味がない。
大成は思う。
まずはビーチャムという人物をもっと知らなければならない。
「話の腰を折ってすまなかった。改めて、この新型魔導装置についてもう少し聞きたいんだが」
「なんだ。言ってみろ」
若干ビーチャムのトーンが下がった気がする。
わかってはいたが、やはりこの魔導博士は気難しいようだ。
ただ、一方でこうも思う。
簡単にビジネスの話に喰いついてくるような魔導博士は信用できない。
そういう意味では、ビーチャムは信用できる魔導博士なのかもしれない。
彼の研究に対しての情熱は純粋なものなんだと思える。
であるなら、尚更ビーチャムの力が欲しいとも思う。
いずれにしても、この男にビジネスの話を持ちかけるのは注意深く行わなければならない。
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