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ep7 ビーチャムという人物

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「オイ!さっきから作業に身が入っていないぞ!お前だけ業務量増やされたいか!?」

「す、すいません」

 翌日、青年は再び過酷な肉体労働の中にいた。
 いつもよりも仕事に身が入らないのは、昨夜のことのせいなのは言うまでもない。

「あのクソ野郎......本当だったら、俺はもうこんな所にはいないはずだったのに」

 苦虫を噛み潰したような表情で作業に手を動かしながら、白衣の男のことを思い出していた。
 ただ一方で、客観的な冷静さも取り戻していた。
 無計画に夜逃げした所で、行く当てのない自分の未来に何が待っているのか。
 途上で生き倒れるかもしれないし、警備の行き届かない場所で犯罪に巻き込まれるかもしれない。
 
「とりあえず、あの野郎に会いに行ってやるか......」

 今の状況で、他の選択肢はなかった。
 昨夜のことの文句を言ってやらねば気が済まない。
 当然の感情だ。
 しかし、冷静になった今、別の思いも存在していた。

「昨日、アイツがやっていた事はなんなんだろう。道具を使って魔法の実験を行っていた......そんなふうにも思えるけど、どうなんだろうか......」

 徳富大成は、純粋な好奇心が芽生えていることに気づく。
 もう一度、あの白衣の男に会ってみたい.。 

 

「ビーチャム魔導研究所だって?知ってるけどさ」

 とりあえず当たり障りのない人間...食堂のおばちゃんにいてみたところ、早速その場所を知っていた。
 ほっとする。
 なんせ住所も地図もない。
 わかっているのはビーチャム魔導研究所という名称と、その男の名がビーチャムということだけ。
 警備兵にそう名乗っていたので、名前自体は間違いないだろうと思っていた。
 警備兵が「またあんたか」と、うんざりしたように応えたのを覚えている。
 とはいえ、名前だけで本当に訪ねていけるのか?と懸念に溢れていた。
 しかし、良い意味で裏切られた。

「だけどさ。あんな所に行ってどうすんのさ?」

 おばちゃんは怪訝けげんな眼差しを向けてきた。

「というと?」

「あそこにゃ、頭のおかしいマッドサイエンティストがいるんだ。そんな変人の所に行くって、どうかしてんじゃないのかい?」

 変人。マッドサイエンティスト。
 白衣の男について、いきなり強烈なパワーワードが登場する。
 にわかに胸に不安がよぎる。

「ビーチャム...だよな。いったい何者なんだ?」

「さあ。あたしも詳しいことはわかんないけどさ。戦前のある時期までは王都にいて、それなりに有名な若き魔導博士だったらしいんだけどね。今じゃすっかり落ちぶれちまって、この町の隅っこに名ばかりの研究所を構えてるって話さ」
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