2 / 69
ep2 運命の日
しおりを挟む
遡ること三ヶ月前。
若干二十代で営業部長に昇進し、将来の出世を約束されていたと言っていい徳富大成は、会社を退職する。
独立し、起業するためだ。
親の影響で、元々は法律家を目指して法学部で学んでいた彼だったが、その道は中途で諦めていた。
司法試験合格のために何年も勉強ばかりしていられないと思ったからだ。
勉強自体は嫌いではなかったが、早く社会に出て成長したい気持ちを抑えることができなかった。
その後、彼はウェブマーケティング会社に営業として就職する。
創業十年にも満たない若い会社だ。
最初の一年目は、慣れないことや知らないことばかりで、中々成果を上げることができなかった。
だが二年目。
早くも秘めたる才能が開花する。
持ち前の論理的思考と本人の努力の甲斐も相まって、驚異的な業績を上げた。
そこからはまさしく破竹の勢い。
やがて徳富大成は、まだ二十代後半にして、誰もが認める若き営業部長になったのである。
そして......運命のあの日を迎える。
同僚たちとの送別会を終え、将来の成功を胸に誓い、熱い想いで帰り道を歩いている時だった。
「危ない!!」
青信号の横断歩道に、勢いよくトラックが突っ込んできたのだ。
歩行者たちは慌てて歩道へ退いていった。
ところが、一人の足の悪い女性が、バランスを崩してその場にへたり込んでしまう。
轢かれる!
誰もがそう思った時。
ドン!と何者かが彼女を突き飛ばして、トラックの軌道上から逸らした。
それは結果的に、身代わりとなる行為だった。
身代わりとなったのは、徳富大成。
「あ、俺、死んだ......」
目前に迫りくるトラックのライトに照らされ、心の中で呟いた時。
不思議なことが起こる。
「......あれ?」
生きている?
なぜだ?トラックに轢かれたんじゃないのか?
いや、これは死後の世界ってやつか?
上下左右、白いだけの空間。
そうか。
俺は天国に来たんだな。
地獄じゃなくて良かった......。
などと考えているところに、その者は現れた。
「ようこそ。徳富大成様」
ハッとして振り向いた先に、その者は立っていた。
といっても、地に足を着けて立っていたのかどうかは定かではない。
「あ、貴女は、女神様??」
思わずそう口走ったのは、自然なことだった。
状況もそうだが、何よりその者自身が、そういう風貌を備えていたから。
神々しく、神秘的で、美しい。
「私は、転生女神テレサ。ここへ貴方を招いたのは私です」
美しき女神は微笑した。
「てんせい......めがみ??」
阿呆みたいに鸚鵡返しする徳富大成。
まるで理解が追いついていない。
「今から貴方に、説明しておかなければならないことがございます」
「は、はあ」
「まず、貴方自身のことです」
「俺自身のこと?」
「結論から言います。徳富大成様。貴方は生きています」
「うん......えっ??」
「あちらの世界での、最後の記憶は何ですか?」
「あちらの世界?現世ってこと?」
「違いますよ。貴方は生きていると言ったでしょう。地球という星の日本という意味です」
「そ、そんな、子どもに説明するみたいに言わないでくれよ。要するに、ここに来る直前の記憶ってことだろ?もちろん覚えてるよ。送別会で飲んだ後、帰り道でトラックに......て、あれ??生きてるってことは、俺......あの状況から助かったのか?一体どうやって...」
「私が貴方をこちらに招いたからです」
「......そ、そもそも、ここはどこなんだ?」
「ここは世界の狭間。すべてに繋がる場所です」
若干二十代で営業部長に昇進し、将来の出世を約束されていたと言っていい徳富大成は、会社を退職する。
独立し、起業するためだ。
親の影響で、元々は法律家を目指して法学部で学んでいた彼だったが、その道は中途で諦めていた。
司法試験合格のために何年も勉強ばかりしていられないと思ったからだ。
勉強自体は嫌いではなかったが、早く社会に出て成長したい気持ちを抑えることができなかった。
その後、彼はウェブマーケティング会社に営業として就職する。
創業十年にも満たない若い会社だ。
最初の一年目は、慣れないことや知らないことばかりで、中々成果を上げることができなかった。
だが二年目。
早くも秘めたる才能が開花する。
持ち前の論理的思考と本人の努力の甲斐も相まって、驚異的な業績を上げた。
そこからはまさしく破竹の勢い。
やがて徳富大成は、まだ二十代後半にして、誰もが認める若き営業部長になったのである。
そして......運命のあの日を迎える。
同僚たちとの送別会を終え、将来の成功を胸に誓い、熱い想いで帰り道を歩いている時だった。
「危ない!!」
青信号の横断歩道に、勢いよくトラックが突っ込んできたのだ。
歩行者たちは慌てて歩道へ退いていった。
ところが、一人の足の悪い女性が、バランスを崩してその場にへたり込んでしまう。
轢かれる!
誰もがそう思った時。
ドン!と何者かが彼女を突き飛ばして、トラックの軌道上から逸らした。
それは結果的に、身代わりとなる行為だった。
身代わりとなったのは、徳富大成。
「あ、俺、死んだ......」
目前に迫りくるトラックのライトに照らされ、心の中で呟いた時。
不思議なことが起こる。
「......あれ?」
生きている?
なぜだ?トラックに轢かれたんじゃないのか?
いや、これは死後の世界ってやつか?
上下左右、白いだけの空間。
そうか。
俺は天国に来たんだな。
地獄じゃなくて良かった......。
などと考えているところに、その者は現れた。
「ようこそ。徳富大成様」
ハッとして振り向いた先に、その者は立っていた。
といっても、地に足を着けて立っていたのかどうかは定かではない。
「あ、貴女は、女神様??」
思わずそう口走ったのは、自然なことだった。
状況もそうだが、何よりその者自身が、そういう風貌を備えていたから。
神々しく、神秘的で、美しい。
「私は、転生女神テレサ。ここへ貴方を招いたのは私です」
美しき女神は微笑した。
「てんせい......めがみ??」
阿呆みたいに鸚鵡返しする徳富大成。
まるで理解が追いついていない。
「今から貴方に、説明しておかなければならないことがございます」
「は、はあ」
「まず、貴方自身のことです」
「俺自身のこと?」
「結論から言います。徳富大成様。貴方は生きています」
「うん......えっ??」
「あちらの世界での、最後の記憶は何ですか?」
「あちらの世界?現世ってこと?」
「違いますよ。貴方は生きていると言ったでしょう。地球という星の日本という意味です」
「そ、そんな、子どもに説明するみたいに言わないでくれよ。要するに、ここに来る直前の記憶ってことだろ?もちろん覚えてるよ。送別会で飲んだ後、帰り道でトラックに......て、あれ??生きてるってことは、俺......あの状況から助かったのか?一体どうやって...」
「私が貴方をこちらに招いたからです」
「......そ、そもそも、ここはどこなんだ?」
「ここは世界の狭間。すべてに繋がる場所です」
10
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる