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異世界の章:第一部 西のキャロル編
ep145 アミーナの思い
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ーーーーーー
キャロル公国、南の街。
バーのような地下酒場のカウンター席で酒を飲む二人組。
「スラッシュさん。行かなくていいんですか?」
「だからフロー、お前はかてーんだよ。どうせ急ぎの用がありゃ使いでもよこすだろ?」
「まあそうですけど...」
「だったら飲め飲め。あーあ、せっかくイイ女と飲めると思ったんだがなぁ」
「ユイリスさんですか?てゆーか勇者をナンパしないでください」
「たまたま相手がユイリスちゃんだったってだけだよ。まあ、オレのタイプなのはシェリルちゃんだけどな」
「シェリル?」
「勇者の仲間だよ。ユイリスちゃんとはまた違って、ありゃあイイ女だ」
「..はぁ。全くこの人は......ん?」
その時、二人の後ろに、頭巾の付いた黒いローブを羽織り、髑髏のような仮面をつけた怪しい者がぬっと現れた。
「......銀雷の処刑人様。お迎えに上がりました」
「...オレは呼んでねーが。てかその名前ハズいからやめろ」
スラッシュは前を向いたままグラスに口をつけて素っ気なく答える。
「失礼しました。ではこうお呼びした方がよろしいですか?新魔王軍ナンバー2、スラッシュ・リボルバー様」
「...で、わざわざ迎えなんてよこして何の用だ?悪巧みをしてたブラックキャットは死んだ。そんなに急いで知りたい事か?」
「......そうでしたか。勿論それも大事なことです。ですが、それ以上に大事な事です。特にスラッシュ様にとって」
「オレにとって?」
「はい。それは、姫様についての事です」
「!」
「スラッシュさん!」
フロワースも驚く。
途端にスラッシュの顔からサーッと陽気さが消える。
彼はグラスをコトンと置くと、ゆっくりと振り向いた。
彼は先日の戦いでも一切見せなかった真顔で髑髏仮面を睨みつける。
髑髏仮面はコクッと頷く。
「スラッシュ様。どうぞお戻りください。キング・スターレスがお待ちです」
ーーーーーー
翌日。
朝食を済ませたコーロ達は、アミーナの部屋に集まっていた。
ユイと並んでベットに座っていたアミーナは、横の椅子に座るコーロへそっと一片の紙を差し出す。
「なんやバタバタして渡しそびれてもうてたけど......導きの欠片や!」
「あっ!そういえば完全に忘れてた!」
コーロの肩に乗ったミッチーが、「ちょっとコーロ様!大事な大事なワタシの欠片を忘れるとは何ですか!」とぷんすか言った。
「いやー悪い悪い。色んな事があり過ぎて失念してた。それじゃあありがたく返してもらうよ」
コーロがそう言って受け取ろうと手を伸ばすと、ふいにアミーナが意を決したように口を開く。
「その前に...コーロおにーちゃん!ユイおねーちゃん!」
「なんだ?」
「どうしたの?」
「......その......ウチも一緒に連れて行ってくれへんか!?」
「俺達と?」
「一緒に?」
「うん。コーロおにーちゃんは、ユイおねーちゃんと一緒に導きの欠片を探して旅しとるんやろ?ウチも協力させて欲しいねん」
「...それはむしろ、俺としてはありがたいけど......いいのか?」
「うん。ウチもコーロにぃと一緒に行きたい」
「そうか。なら俺としては断る理由はないよ。ユイもいいだろ?」
「あの、そのことなんだけど......」
「ユイ?」
「ユイおねーちゃん?」
ユイが俄かに神妙な顔つきになり、コーロに淋しそうな目を向けた。
「私、コーロ達と一緒に行く訳にはいかないかもしれない......」
キャロル公国、南の街。
バーのような地下酒場のカウンター席で酒を飲む二人組。
「スラッシュさん。行かなくていいんですか?」
「だからフロー、お前はかてーんだよ。どうせ急ぎの用がありゃ使いでもよこすだろ?」
「まあそうですけど...」
「だったら飲め飲め。あーあ、せっかくイイ女と飲めると思ったんだがなぁ」
「ユイリスさんですか?てゆーか勇者をナンパしないでください」
「たまたま相手がユイリスちゃんだったってだけだよ。まあ、オレのタイプなのはシェリルちゃんだけどな」
「シェリル?」
「勇者の仲間だよ。ユイリスちゃんとはまた違って、ありゃあイイ女だ」
「..はぁ。全くこの人は......ん?」
その時、二人の後ろに、頭巾の付いた黒いローブを羽織り、髑髏のような仮面をつけた怪しい者がぬっと現れた。
「......銀雷の処刑人様。お迎えに上がりました」
「...オレは呼んでねーが。てかその名前ハズいからやめろ」
スラッシュは前を向いたままグラスに口をつけて素っ気なく答える。
「失礼しました。ではこうお呼びした方がよろしいですか?新魔王軍ナンバー2、スラッシュ・リボルバー様」
「...で、わざわざ迎えなんてよこして何の用だ?悪巧みをしてたブラックキャットは死んだ。そんなに急いで知りたい事か?」
「......そうでしたか。勿論それも大事なことです。ですが、それ以上に大事な事です。特にスラッシュ様にとって」
「オレにとって?」
「はい。それは、姫様についての事です」
「!」
「スラッシュさん!」
フロワースも驚く。
途端にスラッシュの顔からサーッと陽気さが消える。
彼はグラスをコトンと置くと、ゆっくりと振り向いた。
彼は先日の戦いでも一切見せなかった真顔で髑髏仮面を睨みつける。
髑髏仮面はコクッと頷く。
「スラッシュ様。どうぞお戻りください。キング・スターレスがお待ちです」
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翌日。
朝食を済ませたコーロ達は、アミーナの部屋に集まっていた。
ユイと並んでベットに座っていたアミーナは、横の椅子に座るコーロへそっと一片の紙を差し出す。
「なんやバタバタして渡しそびれてもうてたけど......導きの欠片や!」
「あっ!そういえば完全に忘れてた!」
コーロの肩に乗ったミッチーが、「ちょっとコーロ様!大事な大事なワタシの欠片を忘れるとは何ですか!」とぷんすか言った。
「いやー悪い悪い。色んな事があり過ぎて失念してた。それじゃあありがたく返してもらうよ」
コーロがそう言って受け取ろうと手を伸ばすと、ふいにアミーナが意を決したように口を開く。
「その前に...コーロおにーちゃん!ユイおねーちゃん!」
「なんだ?」
「どうしたの?」
「......その......ウチも一緒に連れて行ってくれへんか!?」
「俺達と?」
「一緒に?」
「うん。コーロおにーちゃんは、ユイおねーちゃんと一緒に導きの欠片を探して旅しとるんやろ?ウチも協力させて欲しいねん」
「...それはむしろ、俺としてはありがたいけど......いいのか?」
「うん。ウチもコーロにぃと一緒に行きたい」
「そうか。なら俺としては断る理由はないよ。ユイもいいだろ?」
「あの、そのことなんだけど......」
「ユイ?」
「ユイおねーちゃん?」
ユイが俄かに神妙な顔つきになり、コーロに淋しそうな目を向けた。
「私、コーロ達と一緒に行く訳にはいかないかもしれない......」
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