導きの暗黒魔導師

根上真気

文字の大きさ
上 下
149 / 160
異世界の章:第一部 西のキャロル編

ep144 青春は甘酸っぱい

しおりを挟む
ーーーーー

 空がもう赤みを帯びて夜の準備を始める頃。
 コーロ達はキースを伴い東の街の宿に戻った。

 一行は一階食堂の一席につく。
 コーロとユイが隣り合い、向かいにアミーナとキースが隣り合い、皆で穏やかに食卓を囲んでいると......

 急にキースが改まってアミーナに体を向けた。
「あの、アミ!」

「...いきなりどうしたんや?」

「......僕はきっと、今までアミに依存していたんだと思う」
「な、なんやねん急に!」

「つまり、自分が無かったんだ。だから、アミの夢に僕も乗っかることで弱い自分自身から逃げて、挙句の果てに、アミに迷惑をかけることになっちゃったんだよ」

「悪いのはブラックファイナンスやんか!」

「もちろんそうだけど、でも、やっぱり僕の弱さと甘さが大きかったなって。もっと早い段階で、局長や公爵に接触していればまた違っていたかもしれない。でも僕にはそれができなかった。僕の弱さのせいで......」

「キース...」

「でも、もう大丈夫だよ!今回の事で、僕もやっと一歩踏み出せた気がするんだ。だから......」

「だから?」

「......アミともう一度、一緒に夢を目指したいんだ!今度は僕自身の夢としても!二度と同じ失敗はしない!またアミと一緒に進んで行きたいんだ!だって僕はアミのことが...!」

「キース!」
 アミーナはキースの言葉を遮るように叫んだ。

 キースは面を食らったようにハッとする。

 アミーナは、嬉しいような悲しいような申し訳なさそうな、複雑な表情をキースに向けた。
「キース、ありがとう。キースの気持ち、めっちゃ嬉しいわ。でもな?ウチ、今はもう、別にやりたい事ができてもうて、またキースと一緒にやるんは無理やねん。だから......ホンマに、ごめんなさい......」 

 思わずコーロとユイは食事の手を止めて静止した。
 いよいよ穏やかな食卓が気まずさに支配されそうになった時...

「...きゃあぁぁぁーーーせいしゅうぅぅぅん!!!」

 うっとおしい叫び声を上げて、コーロのジャケットの懐からミッチーが飛び出して来た!

「み、ミッチー!?起きたのか!?」
「いきなりなに!?」
「な、なんやねん!?」
「み、ミッチーさん??」

 ミッチーはキースとアミーナの間にスッと入り込んでやかましく喋り出す。
「今?キースさん、コクろーとしましたよね??それで、いち早く察したアミ様はコクられる前にうま~く断りましたね?
 きゃあ~~甘酸っぱいぃ!!ワタシ、こういうのたまんないんです!うは~テンション上がって来ましたよぉ~!!」

 キースとアミーナは顔を真っ赤にしてあたふたする。
「いや、あの、その、違くて、いや、違くないけど、その、あの」
「ななな何言うとんねん!?デリカシーなさ過ぎやろ自分!?」

 爆発する恥ずかしさにわーわーギャーギャー大騒ぎするキースとアミーナ。

 そんな中、コーロとユイはチラッと視線を交わし静かに頷き合った。
 それからコーロがおもむろに手を伸ばし、ミッチーをガシッと引っ掴む。

「へ?コーロ様?」

 コーロはミッチーを手元に引き込むと、横にいるユイと示し合わした。

「へ?コーロ様?ユイ様?」

 コーロは本を開くと、開いた片方のページ側を自分が持ち、もう片方のページ側をユイが持った。

 二人は声を揃えて合図する。
「せーのっ」

 ググッ!

 コーロとユイは互いに本を引っ張り合った!

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!な、な、何するんですかー!!?」
 絶叫するミッチー。

 鬼の形相の二人。
「今のはない!今のはないぞミッチー!!」
「今のは許せないわ!勇者として!女として!!」

「痛い痛い痛い痛い!!!うぎゃあぁぁぁぁ!!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた
ファンタジー
 起きると、そこは森の中。パニックになって、 周りを見渡すと暗くてなんも見えない。  特殊能力も付与されず、原生林でどうするの。 誰か助けて。 遠くから、獣の遠吠えが聞こえてくる。 これって、やばいんじゃない。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

処理中です...