139 / 160
異世界の章:第一部 西のキャロル編
ep134 再会と最後
しおりを挟む
「キース......」
「ア、アミ......そ、その、僕...」
微妙な距離を保つ二人。
しかし...
「キース!」
「あ、アミ!?」
アミーナはキースの胸に勢いよく飛び込んだ。
「ごっつ心配しとったんやで!?でも無事で良かった!ホンマに...!」
「アミこそ無事で良かったよ!アミが攫われたって聞いて、心臓が止まりそうになるぐらい心配だったんだ!」
開いてしまっていた距離を、埋め合わすように抱き合う二人。
やがて再会の抱擁を終えると、キースが懸命に口を開く。
「...アミ!本当にごめん!全部僕のせいだ!僕のせいでアミに酷い目を!」
「ううん。悪いのはブラックファイナンスやろ?確かにキースは甘かった。でもそれはウチも同じや。だからそこまで自分だけを責めんといて、な?」
「で、でも...!!」
「ううん。ちゃうねん。そんな自分を責めるキースを見てるとウチがツラいねん。せやから、な?」
「ア、アミ...!!」
キースは腕で溢れ出る涙を拭った。
アミーナは大きな瞳を潤わせながらエヘヘと優しくはにかんだ。
コーロとユイは二人をあたたかく眺めながら穏やかに視線を交わして頷き合った。
キースは涙を流し終えると、大事な事を思い出したようにサッと濃紫のジャケットを脱いでコーロに差し出した。
「スヤザキさん。これ、ありがとうございました」
コーロは軽く会釈してジャケットを受け取り、バサァっと着衣した。
そこへ...
「コーロ様ぁ!!」
ユイとキースの間にフワフワ漂っていたミッチーがコーロのもとへ飛び込み、もぞもぞとジャケットの懐へ潜り込んだ。
「やはりコーロ様のここが一番落ち着きます。えへへ」
「ミッチー...」
嬉しいような困ったような複雑な表情を浮かべるコーロ。
ところが、コーロはすぐにギョッとした。
なんとミッチーが「スピ~スピ~!」と即爆睡に落ちたのである。
「どんだけマイペースなんだ......ある意味鋼のメンタルだな...」
コーロは、相変わらずどころかそれ以上の能天気ぶりのミッチーに唖然としつつ、何気なくジャケットのポケットをまさぐると、ハッとした。
「フロワース!」
コーロはポケットから取り出したナイフをフロワースに向かってピュッと投げる。
フロワースはパシッと片手でキャッチする。
「なんだ。そのままスヤザキさんに差し上げてもいいのに」
フロワースは巧妙な笑みを浮かべた。
「ふざけんな!二度と狙われてたまるか!」
さて......
いよいよ本当に為す術が無くなったブラックキャット。
彼の前には、暗黒魔導師と勇者、銀雷の処刑人と氷の暗殺者。
この期に及んで手負いの彼に何ができようか?
ブラックキャットは奇妙に沈黙しているが...
ーーー屋敷内にはまだ術式が残っている。ここで『トリックラビリンス(偽造迷宮)』を使いその隙に逃げればーーー
...決断する。
『マイルス。傀儡を解け』
『...もうよいのですか?』
『勇者も仕留められていない上に厄介な奴まで現れた。今の状況では勝ち目はない。撤退する』
『ということは、貴方はまたゼロからやり直すという事ですか?』
『仕方ない。だが必ず復讐してやる。お前らにも協力してもらう』
『なるほど、わかりました。ですが傀儡を解くことはできません。なぜなら、これは傀儡ではありませんから』
『...?どういう意味だ?』
『もう貴方に利用価値はありません。変に足がつく前にお引き取り願いましょう』
『何を言っている!?』
『光栄に思ってください。これはエヴァンス様からお教えいただいた、勇者様すら操られた魔法ですから』
『なに!?』
突然、ブラックキャットはプルプルと震えながら、銃を握っている手をググググッと自分のこめかみの辺りまでゆっくりと持ち上げた。
「なんだ!?」
コーロ達は一斉にブラックキャットへ視線を集中する。
彼は自身の手に握られた凶器の銃口を、自らのこめかみにピタリとくっつける。
『裏切る気か!?マイルス!キサマぁ!!』
「チッ!バカ猫が!」
スラッシュが雷の疾さで行動の阻止に動き出す!
が、
バーン!
ほんの僅か、間に合わず。
引き金は引かれた。
ブラックキャットの目は、たちまちに生命の色を失った。
ーーーこんなところで、オレは奪われてしまうのか......奪い続けて来たオレが...こんなところで......いや、奪い続けて来たからこそ...奪われて終わるのか......オレはーーー
彼の頭部から、彼が今まで奪ってきたものが、一気に吐き出されるように噴出する。
ブラックキャットは、無惨にもあっけなく、その場にドサァッと沈んだ。
赤い絨毯を、赤黒く染めて......。
「ア、アミ......そ、その、僕...」
微妙な距離を保つ二人。
しかし...
「キース!」
「あ、アミ!?」
アミーナはキースの胸に勢いよく飛び込んだ。
「ごっつ心配しとったんやで!?でも無事で良かった!ホンマに...!」
「アミこそ無事で良かったよ!アミが攫われたって聞いて、心臓が止まりそうになるぐらい心配だったんだ!」
開いてしまっていた距離を、埋め合わすように抱き合う二人。
やがて再会の抱擁を終えると、キースが懸命に口を開く。
「...アミ!本当にごめん!全部僕のせいだ!僕のせいでアミに酷い目を!」
「ううん。悪いのはブラックファイナンスやろ?確かにキースは甘かった。でもそれはウチも同じや。だからそこまで自分だけを責めんといて、な?」
「で、でも...!!」
「ううん。ちゃうねん。そんな自分を責めるキースを見てるとウチがツラいねん。せやから、な?」
「ア、アミ...!!」
キースは腕で溢れ出る涙を拭った。
アミーナは大きな瞳を潤わせながらエヘヘと優しくはにかんだ。
コーロとユイは二人をあたたかく眺めながら穏やかに視線を交わして頷き合った。
キースは涙を流し終えると、大事な事を思い出したようにサッと濃紫のジャケットを脱いでコーロに差し出した。
「スヤザキさん。これ、ありがとうございました」
コーロは軽く会釈してジャケットを受け取り、バサァっと着衣した。
そこへ...
「コーロ様ぁ!!」
ユイとキースの間にフワフワ漂っていたミッチーがコーロのもとへ飛び込み、もぞもぞとジャケットの懐へ潜り込んだ。
「やはりコーロ様のここが一番落ち着きます。えへへ」
「ミッチー...」
嬉しいような困ったような複雑な表情を浮かべるコーロ。
ところが、コーロはすぐにギョッとした。
なんとミッチーが「スピ~スピ~!」と即爆睡に落ちたのである。
「どんだけマイペースなんだ......ある意味鋼のメンタルだな...」
コーロは、相変わらずどころかそれ以上の能天気ぶりのミッチーに唖然としつつ、何気なくジャケットのポケットをまさぐると、ハッとした。
「フロワース!」
コーロはポケットから取り出したナイフをフロワースに向かってピュッと投げる。
フロワースはパシッと片手でキャッチする。
「なんだ。そのままスヤザキさんに差し上げてもいいのに」
フロワースは巧妙な笑みを浮かべた。
「ふざけんな!二度と狙われてたまるか!」
さて......
いよいよ本当に為す術が無くなったブラックキャット。
彼の前には、暗黒魔導師と勇者、銀雷の処刑人と氷の暗殺者。
この期に及んで手負いの彼に何ができようか?
ブラックキャットは奇妙に沈黙しているが...
ーーー屋敷内にはまだ術式が残っている。ここで『トリックラビリンス(偽造迷宮)』を使いその隙に逃げればーーー
...決断する。
『マイルス。傀儡を解け』
『...もうよいのですか?』
『勇者も仕留められていない上に厄介な奴まで現れた。今の状況では勝ち目はない。撤退する』
『ということは、貴方はまたゼロからやり直すという事ですか?』
『仕方ない。だが必ず復讐してやる。お前らにも協力してもらう』
『なるほど、わかりました。ですが傀儡を解くことはできません。なぜなら、これは傀儡ではありませんから』
『...?どういう意味だ?』
『もう貴方に利用価値はありません。変に足がつく前にお引き取り願いましょう』
『何を言っている!?』
『光栄に思ってください。これはエヴァンス様からお教えいただいた、勇者様すら操られた魔法ですから』
『なに!?』
突然、ブラックキャットはプルプルと震えながら、銃を握っている手をググググッと自分のこめかみの辺りまでゆっくりと持ち上げた。
「なんだ!?」
コーロ達は一斉にブラックキャットへ視線を集中する。
彼は自身の手に握られた凶器の銃口を、自らのこめかみにピタリとくっつける。
『裏切る気か!?マイルス!キサマぁ!!』
「チッ!バカ猫が!」
スラッシュが雷の疾さで行動の阻止に動き出す!
が、
バーン!
ほんの僅か、間に合わず。
引き金は引かれた。
ブラックキャットの目は、たちまちに生命の色を失った。
ーーーこんなところで、オレは奪われてしまうのか......奪い続けて来たオレが...こんなところで......いや、奪い続けて来たからこそ...奪われて終わるのか......オレはーーー
彼の頭部から、彼が今まで奪ってきたものが、一気に吐き出されるように噴出する。
ブラックキャットは、無惨にもあっけなく、その場にドサァッと沈んだ。
赤い絨毯を、赤黒く染めて......。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~
仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。
祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。
試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。
拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。
さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが……
暫くするとこの世界には異変が起きていた。
謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。
謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。
そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。
その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。
その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。
様々な登場人物が織りなす群像劇です。
主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。
その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。
ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。
タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。
その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。
『おっさんが二度も転移に巻き込まれた件』〜若返ったおっさんは異世界で無双する〜
たみぞう
ファンタジー
50歳のおっさんが事故でパラレルワールドに飛ばされて死ぬ……はずだったが十代の若い体を与えられ、彼が青春を生きた昭和の時代に戻ってくると……なんの因果か同級生と共にまたもや異世界転移に巻き込まれる。現代を生きたおっさんが、過去に生きる少女と誰がなんのために二人を呼んだのか?、そして戻ることはできるのか?
途中で出会う獣人さんやエルフさんを仲間にしながらテンプレ? 何それ美味しいの? そんなおっさん坊やが冒険の旅に出る……予定?
※※※小説家になろう様にも同じ内容で投稿しております。※※※
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
神々に天界に召喚され下界に追放された戦場カメラマンは神々に戦いを挑む。
黒ハット
ファンタジー
戦場カメラマンの北村大和は,異世界の神々の戦の戦力として神々の召喚魔法で特殊部隊の召喚に巻き込まれてしまい、天界に召喚されるが神力が弱い無能者の烙印を押され、役に立たないという理由で異世界の人間界に追放されて冒険者になる。剣と魔法の力をつけて人間を玩具のように扱う神々に戦いを挑むが果たして彼は神々に勝てるのだろうか
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる