導きの暗黒魔導師

根上真気

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異世界の章:第一部 西のキャロル編

ep133 遂に...

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「コーロおにーちゃん!」
 アミーナがコーロのもとにタタタッと駆け寄る。

「本当に貴方は一体何者なんだ...」
 フロワースはまるで呆れたような表情でコーロのもとへ歩み寄る。

 コーロは二人に向かい軽く笑みを浮かべて頷くと、ブラックキャットに向き直り、鋭い視線を投げつける。
「ブラックキャット!これで本当の終わりだ!もういい加減諦めろ!」

 ブラックキャットは黙ったまま淀んだ目を彼らに向ける。
 しかし、彼の鈍い眼の光はすでに弱まっていた。

『マイルス。オレを屋敷の中へ移動しろ』
『承知』

 ブラックキャットは沈黙のままクルッと背を向け、サッと逃げるように屋敷の中へ入っていった。 

「また逃げるのか?」
 三人もブラックキャットを追うように屋敷の中へと進んでいく。

 屋敷一階。
 コーロ達が入ると、赤い絨毯が敷かれた広間中央にブラックキャットは佇んでいた。
 向かい合う三人とブラックキャット。

 コーロは右手を前に伸ばし、
『ダークアロー』
 闇の弓矢を構えた。
「ブラックキャット。もう観念しろ」

 暗黒魔導師に矢を向けられ、もはや打つ手無し、手負いのブラックキャット。
 否が応でも想像される戦いの終わりの訪れ。
 そんな時である。

 バチィィィィン!  
 
 いきなり電流音が走る!
 刹那、コーロの目の前にぬっと立ち塞がるように大男が出現し、闇の弓矢をグッと掴んだ。
「おっとダンナ。取り込んでるとこ悪いが、ブラックキャットはオレが預からせてもらう」

「なっ!?お前は!?」
「だ、誰や!?」
「...来たんですか」

 ブラックキャットも予想だにしていなかった者の出現に眼をギョッとさせる。
「......スラッシュ!なぜお前がここに!?」

 スラッシュはニヤッとしながら闇の弓矢をさらにググッと握り、バキィン!とダークアローを折った。

「ダ、ダークアローを、素手で折った!?」
 度肝を抜かれるコーロ。

 すぐにスラッシュはきびすを返し、ブラックキャットに向かい合う。
 ブラックキャットは立ち尽くしたまま動けない。

 スラッシュがやや首を傾けながら問いただす。
「ブラックキャット。お前、何やら悪巧みしてるみたいだなぁ?」

「......スラッシュ。一体何のためにここまで来た?」

「質問してるのはオレだ。不毛なやり取りは嫌いなんだがなぁ。おい、そこんとこどうなんだ?フロー」
 スラッシュは肩越しに振り向いてフロワースに訊ねた。

「ブラックキャットには協力者がいます。そいつと組んで何やら企んでいるようですね」

「フロワース!?」
 コーロはさらに驚く。

「し、知り合いなんか!?」
 アミーナもびっくりして訊く。

 フロワースは若干困ったような表情をして、仕方ないな、という様子で答える。
「...ボクはその人の部下だよ」

「!」
「!」

「......でも、スラッシュさんが直接来るなんてボクも聞いてないんだけど」

「相変わらずかてーなーお前は。まっ、とっととこの黒猫もどきをとっ捕まえて戻るぞ」

「...はぁ。わかりましたよ」
 フロワースはスラッシュへ近づいていく。 

 状況が全く飲み込めないコーロ。
「フロワース!スラッシュ?あんたらは一体何なんだ!?敵なのか?敵じゃないのか?」

 そこに...

「コーロ!スラッシュには構わないで!」
「コーロ様!」
「スヤザキさん!アミ!」

 背後から響いたよく知った声に、コーロはパッと振り向いた。
「ユイ!ミッチー!キース君!みんな無事だったんだな!」

 勇者組がついにコーロ達に合流した。

「ユイはあの男のことを知っているのか?」
 コーロがやにわに質問する。

「ええ。もともと顔見知りなのよ」
「コーロ様!彼はワタシ達を助けてくれたのですよ!」

「そうなのか?」

「スヤザキさん、本当なんです。それに僕達をここまで運んでくれたのもスラッシュさんなんです」
 キースがさらに補足する。

「そうだったのか...」

 コーロはスラッシュに向き直ると、彼に近づいていき、
「俺はスヤザキユキミチ。ユイ達は俺の仲間だ。助けてくれてありがとう、スラッシュ」
 改まって感謝を示した。

 スラッシュは、うーんと何だかバツが悪くなったような面持ちで、
「まっ、行きがかりでそうなっただけだ。気にすんな」
 ポリポリと頭を掻きながら返事した。

 そして...
 敵のアジトで、再会を果たす事となったアミーナとキース。
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