導きの暗黒魔導師

根上真気

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異世界の章:第一部 西のキャロル編

ep129 行方

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 やがてブラックキャットは屋敷に到着する。

 建物内に入ると、先程の戦いの痕跡が至る所に見えた。
 壊れた机や椅子や器具、傷だらけの壁や床、倒れた部下達。

 ブラックキャットは濁った眼を鈍く光らせ、ぬらりとした部下ども数体を引き連れて隠し扉のある部屋へ向かう。
 部屋へ着くと、隠し扉の先、金庫への道を降った。

「やはりここへ入ったみたいだな。フザケおって」

 金庫前に辿り着く。
 扉に手をかける。

「どうやって開けおった......ヤツめ」

 扉をぐぐっと押し開ける。

「......なんだ?やけに冷えてるな?ヤツらはいない......」

 ブラックキャットは金庫内を見渡した。
 パッと見たところ金塊にはこれといった変化はない。(フロワースの『アイスドーム』は金庫内の状態維持に貢献した)

 この時、すでにフロワースの氷は解かれていた。
 くわえて二人の姿もなかった。
 彼らはどこへ行ったのか? 

 不審の念が込み上げるブラックキャット。
 彼は肩をそびやかしてすぐさま金庫を出ると、来た道を引き返した。

 地上階に上がり玄関口を抜け庭に出て、ぬらりとした部下どもを引き連れたブラックキャットは立ち止まる。
「ヤツらめ。どこに消えおった?」
 彼が呟いた刹那...

『ダークウィップ:クラスター』

 足元から無数の闇の鞭がシュルルルッ!と黒蛇の如く伸びてグルグルッと巻きつき、一瞬のうちに彼らを捕える!
 さらに、

『アイスショット(氷刃弾)』

 シュババババッ!!!

 黒き鞭に捕えられた彼らに無数の氷弾が撃ち込まれる!

 ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!  

 為す術なく被弾するぬらりとした部下ども。
 四体いた部下どもは皆、ドサッと横向きに倒れた。

「貴様ら......」
 一人残されたブラックキャットの視線の先、十時方向からコーロが、二時方向からフロワースがゆっくりと現れた。

「もういい加減観念しろ。ブラックキャット」
「さすがにもうどう足掻こうが終わりだろう?」

 揃って凄む二人。

「てゆーかフロワース。いきなり後ろからブスリとか、マジでそういうのやめてくれよ?とりあえず休戦の約束は守ってくれよ?」

「もちろん守るよ。保証はできないけどね」
「おい!」

「元々の目的は奴だからね。スヤザキさん、貴方はいわばついでだから」

「ついでってなんだよ!ちょっとコンビニ行くみたいなノリで殺そうとするな!こえーよ!マジで引くわ!」

「...はぁ。貴方と話せば話すほどむしろ貴方がよくわからなくなる。まあもう殺る気は失せたから安心してもらっていいよ」

「なんなんだよお前は!......でもまあ、とにかく今は目の前のアイツだな」

 彼の前には暗黒魔導師と氷の暗殺者。
 手負いのブラックキャットは黙ったまま懐から魔銃を取り出す。
 が、

『エアロショック』

 風の衝撃波がブァン!とその手を襲い、構えた銃がバシンと彼の手から弾かれた。
「チッ、小娘が......」

 今度はブラックキャットの正面からアミーナが現れた。

「もう終わりやで!ブラックキャット!......あと、二人とも喋りすぎや!ウチが出るタイミングようわからんくなってもうたやないか!」
 アミーナは暗黒魔導師と氷の暗殺者にクレームする。

「ん?わりと良かったんじゃないか?」とコーロ。

「そもそもタイミングとかってあるのかい?」とフロワース。

「そ、それと、フロワースの奴はホンマに信じられるんか!?」

「...貴女を助けたのボクなんだけどね?」
「それは確かにそうやけど!」

 連携が取れているのか取れていないのかよくわからない三人。
 いずれにしても、敵に向かって並び立った三人。
 一対三で迫られる形となったブラックキャット。

 だが、
「......」
 観念した様子もなく戦う気配もなく、奇妙に沈黙する。

「どういうつもりなんだ?」
「?」
「なんやねんコイツ?」

 すると...

「ん?」
「ほう?」
「な、なんや?」

 倒されたはずの部下どもが、不気味にむくりと起き上がった。
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