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異世界の章:第一部 西のキャロル編
ep127 変化
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ーーーーーー
金庫前。
すでに魔法を解いていたアミーナ。
「シルフェはん、なんとか金庫内にも行けたみたいやけど、なんか役に立てたんやろか......」
彼女はうーんとしながら顎に手を当てていると、ふいに獣耳をピクッ!とさせた。
「...な、なんや?なんか地上から嫌な感じする!」
アミーナは一度、金庫の扉をじっと見つめてから、
「コーロおにーちゃん心配やけど......でも、おにーちゃんは強いからきっと大丈夫や!」
すぐにクルッときびすを返し、来た道を戻るようにタタタッと駆け出した。
「なんやようわからんけど、ごっつ気になる!」
アミーナはダダダッと階段を駆け上がる。
なぜ急いでいるのか?自ら理解していない。
しかし、人並外れた彼女の直感が、彼女を突き動かす。
地上階に出る。
隠し扉を飛び出し屋敷の玄関口まで躍り出る。
ここでアミーナは速度を緩め、そろりと表に出る。
「!」
何かの気配を察知したアミーナは、屋敷の壁をつたってまさしく猫の如くスルスルスルッと半壊した屋根へ駆けのぼる。
屋根上へ到達すると、猫娘は直ぐに獣のように四つん這いで身を低くし、猫眼でジロリと先を眺めた。
(コーロのように完全な暗闇での視覚の維持はできないが、アミーナの猫眼も夜目が効く。くわえて視力も良いので、集中すれば夜でも遠くまでを視認することができる)
すると...
「あ、あれは!」
遠目に、息絶え絶えだったはずのブラックキャットが、体に氷の尖りを突き刺したまま屋敷に向かって歩いて来る姿をとらえる!
しかも、何か不気味な雰囲気を纏った部下らしき者を何体か引き連れて。
「アイツ、なんで!?」
ーーーーーー
氷漬けの金庫内。
彼らの戦いは?
決着はついたのか!?
シュウゥゥゥゥ......
闇と氷の魔力の霧が晴れる。
...そこには、二人の男が立っていた。
「...マジで強いな。あんた」
「貴方もね...」
コーロは頬と手の切り傷から血を流している。
フロワースも頬と手の切り傷から血を流している。
なぜかお互いうっすらと笑みを浮かべている。
共にまったく決定打はない。
暗殺者が口を開く。
「...ダークスパイラルの時、ボクの差し上げたナイフを闇の螺旋へ消し飛ばしたんだね?」
暗黒魔導師は答える。
「ああそうだよ。しかし、まさかあの時もらったナイフが仕込みにもなっていようとはな。とんだ用意周到さだよ」
「あれは本来ターゲットを確実にとらえるための、いわば暗殺者としてのマーキング。距離の限界はあるけどね。ちなみにボスなら、たとえ他国に行こうがナイフさえ持たせておけばターゲットの位置を把握し続けられるよ」
「...とんでもない能力だな」
「なんなら相手に気づかせずに持たせることもできるからね。まあ、異常に勘の鋭い貴方のような者には難しいけど」
「...ひとつ聞いていいか?」
「何だい?」
「その力で、今キース君が無事かどうかまでわかるか?」
「...これはあくまでその位置を把握するだけ。そこまではわからないね。......ん?」
「どうした?」
「ブラックキャットが...動いている?」
「なんだって!?」
「串刺しにしたついでにナイフも仕込んでおいたんだけど......間違いない。移動している」
「どういう事だ!?」
「奴が動いているのか、奴からナイフを取り出した何者かが動いているのか......いずれにせよ、何かしらの変化が起こっているのは確かだな」
「奴の部下はもう残っていなかったはずだが......いてもどうにかできるもんなのか?」
「どうにかできるとしても、かなりの高位な魔導師でもなければ......そして、どうやらこちらに向かって来ているようだね」
「!」
「......(この男との決着は早々に着きそうにはない。このまま仕留めないでおくのは暗殺者のボクとしてはリスクだが、いや......)」
金庫前。
すでに魔法を解いていたアミーナ。
「シルフェはん、なんとか金庫内にも行けたみたいやけど、なんか役に立てたんやろか......」
彼女はうーんとしながら顎に手を当てていると、ふいに獣耳をピクッ!とさせた。
「...な、なんや?なんか地上から嫌な感じする!」
アミーナは一度、金庫の扉をじっと見つめてから、
「コーロおにーちゃん心配やけど......でも、おにーちゃんは強いからきっと大丈夫や!」
すぐにクルッときびすを返し、来た道を戻るようにタタタッと駆け出した。
「なんやようわからんけど、ごっつ気になる!」
アミーナはダダダッと階段を駆け上がる。
なぜ急いでいるのか?自ら理解していない。
しかし、人並外れた彼女の直感が、彼女を突き動かす。
地上階に出る。
隠し扉を飛び出し屋敷の玄関口まで躍り出る。
ここでアミーナは速度を緩め、そろりと表に出る。
「!」
何かの気配を察知したアミーナは、屋敷の壁をつたってまさしく猫の如くスルスルスルッと半壊した屋根へ駆けのぼる。
屋根上へ到達すると、猫娘は直ぐに獣のように四つん這いで身を低くし、猫眼でジロリと先を眺めた。
(コーロのように完全な暗闇での視覚の維持はできないが、アミーナの猫眼も夜目が効く。くわえて視力も良いので、集中すれば夜でも遠くまでを視認することができる)
すると...
「あ、あれは!」
遠目に、息絶え絶えだったはずのブラックキャットが、体に氷の尖りを突き刺したまま屋敷に向かって歩いて来る姿をとらえる!
しかも、何か不気味な雰囲気を纏った部下らしき者を何体か引き連れて。
「アイツ、なんで!?」
ーーーーーー
氷漬けの金庫内。
彼らの戦いは?
決着はついたのか!?
シュウゥゥゥゥ......
闇と氷の魔力の霧が晴れる。
...そこには、二人の男が立っていた。
「...マジで強いな。あんた」
「貴方もね...」
コーロは頬と手の切り傷から血を流している。
フロワースも頬と手の切り傷から血を流している。
なぜかお互いうっすらと笑みを浮かべている。
共にまったく決定打はない。
暗殺者が口を開く。
「...ダークスパイラルの時、ボクの差し上げたナイフを闇の螺旋へ消し飛ばしたんだね?」
暗黒魔導師は答える。
「ああそうだよ。しかし、まさかあの時もらったナイフが仕込みにもなっていようとはな。とんだ用意周到さだよ」
「あれは本来ターゲットを確実にとらえるための、いわば暗殺者としてのマーキング。距離の限界はあるけどね。ちなみにボスなら、たとえ他国に行こうがナイフさえ持たせておけばターゲットの位置を把握し続けられるよ」
「...とんでもない能力だな」
「なんなら相手に気づかせずに持たせることもできるからね。まあ、異常に勘の鋭い貴方のような者には難しいけど」
「...ひとつ聞いていいか?」
「何だい?」
「その力で、今キース君が無事かどうかまでわかるか?」
「...これはあくまでその位置を把握するだけ。そこまではわからないね。......ん?」
「どうした?」
「ブラックキャットが...動いている?」
「なんだって!?」
「串刺しにしたついでにナイフも仕込んでおいたんだけど......間違いない。移動している」
「どういう事だ!?」
「奴が動いているのか、奴からナイフを取り出した何者かが動いているのか......いずれにせよ、何かしらの変化が起こっているのは確かだな」
「奴の部下はもう残っていなかったはずだが......いてもどうにかできるもんなのか?」
「どうにかできるとしても、かなりの高位な魔導師でもなければ......そして、どうやらこちらに向かって来ているようだね」
「!」
「......(この男との決着は早々に着きそうにはない。このまま仕留めないでおくのは暗殺者のボクとしてはリスクだが、いや......)」
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