導きの暗黒魔導師

根上真気

文字の大きさ
上 下
101 / 160
異世界の章:第一部 西のキャロル編

ep96 勇者vs魔人形集団5

しおりを挟む
「......くっ!どうすれば......!」
 ユイがそう言った次の瞬間である。

 バガァンッ!!!

 強烈な衝撃音が鳴り響いたと同時に、魔人形の一体の上半身が粉々に消し飛んだ!
 残った下半身にはバリバリと電流が走っているのが見える。

「えっ?」
「あぁっ?」

 ユイとゲアージが驚く暇もなしに、

 バガァンッ!バガァンッ!バガァンッ!バガァンッ!

 次々と轟音が鳴り響く。
 気がつけば、残り六体のうち、五体の魔人形の上半身が塵となって滅失していた。
 残された下半身はバリバリと電流を走らせながらバタバタと地に横たわっていく。

「オイ......オイオイオイなんなんだオイ!?」
 動揺するゲアージ。

「これは一体......あ、あれは?」
 ユイは、ゲアージとの対角線上の側面のむこうの方から、大きな人影が近づいて来るのに気づいた。

 最後の一体の魔人形がぬらりと動き出し、バッ!とその者に向かって飛び出した!
 が......

 バガァンッ!
 
 結果は同様だった。
 轟音とともに、上半身を失った魔人形の下半身はバリバリと電流を走らせながら地面にパタっと横たわった。

 さらに......

 バガァンッ!バガァンッ!バガァンッ!バガァンッ!

 ユイに足を切り落とされ、上半身のみで地を這いずっていた四体の魔人形までもが消し飛ばされた。
 すなわち、魔人形は完全なる全滅を喫す。

「......ったく、こんな時間にこんな辺鄙へんぴなところで、大の男どもが一人の女に寄ってたかって何してんのかねぇ?」
 
 視線の先から、白銀のローブを羽織った身長百九十以上はゆうにあろう体格の良い大男が現れた。

 無造作な銀髪は耳を覆っていたが長髪ではない。
 凛々しい目は左右の色が異なるオッドアイで、濃紫色の目とは反対側の、雷色の目の方の頬には縦に一本の傷が入っている。
 どこか粋な色気と雄々しさを併せ持つ伊達男のリラックスした自信と余裕を滲ませる表情は、真の強者を思わせる。
 
「......あ、あんたは!?」

 ゲアージが男に向かい声を上げたのも束の間、男はシュッ!と一瞬で間合いを詰め、地に膝をつくユイの傍らへすっと寄ったかと思うと、騎士のように自らも片膝をついて、紳士らしく手を差し伸べて言葉を発した。
「やあ素敵なお嬢さん。なーに、お礼はいいさ。ただ、朝までオレに付き合ってくれるだけでいい」

 ユイも答える。
「た、助けていただき、ありがとうございます......て、貴方は!?」

「ん?お嬢さん?オレの事知ってんの?......て、あんた......勇者ユイリス!?」

「あ、貴方は......銀雷ぎんらいの処刑人!」

 二人は顔見知りだった。
 お互いあまりに意外過ぎる遭遇に場を忘れて仰天する。

「......いや、その名前、マジでハズいんでやめてくれ......て、なんでユイリスちゃんがこんなとこいんのよ!?」

「貴方こそ、何でこんな場所に現れるの!?ここは戦場ではないでしょう?」

「いや、オレ、戦場以外でもフツーにいるし」

「お、おい。あんた、まさか......」
 ゲアージがわなわなと声を上げる。 

「ん?おまえは......確か、ブラックキャットのとこのやつだっけか?」

「や、やっぱダンナっすね!?そ、そうっすよ!おれはブラックファイナンスのゲアージっすよ!」

「ゲアージ?そんな名前だったか?わりい、男の名前は覚えらんないからなぁ」

「ハ...ハハ...。で、な、何しに来たんすか?」
 ゲアージは何やら怯えているような物腰で訊いた。

「別にお前に答える筋合いもねえなぁ」
 男は無関心に答える。

「ハ...ハハハ......(チッ!なんでこの人が急にここに現れやがんだ!?すぐ社長にも知らせねえと!いや、社長に会いに来たのか?だが今までこの人が単身、社長に会いにきた事なんてあったか?)」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

処理中です...