導きの暗黒魔導師

根上真気

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異世界の章:第一部 西のキャロル編

ep87 こ、怖くはないけど?

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 一方、東の町の外れにある人気のない広場。
 そこには二人の男が来ていた。

「闇の王たる我が名に於いて命ずる。いでよ、大怪鳥プテラス!」

 ズズズズズズズズズ!!

 男の手からほとばしる闇の魔力と共に、開張時十メートルはあろう、龍にも似た、翼を携えた魔物が姿を現す。

「これが......貴方の言っていた使役魔ですか?よくまあ、こんなのと主従契約を結んだものですねぇ...」

「まあ成り行きでね」

 ジャケットを脱いで黒ずくめの服のみになったコーロは、フロワースと共に、ユイ達と別行動を取っていた。
 そう。それはブラックファイナンスからアミーナを取り返すため。
 さらにはアミーナ達が取られたお金を奪い返すため。

 プテラスは重々しく丁重に口を開く。
「我が主、ダークウィザード様。どうぞ我にご命令を」

「ダークウィザード!?」

「言ってなかったか?そう、実は俺、暗黒魔導師なんです」

「!...そうだったんですか。なるほど。ならブラックキャットが貴方達を警戒するのも納得がいきます」

「そういうこと(......本当はそこじゃないけどね...)」

 コーロはよっこらせとプテラスに跨った。
「......いや、一旦ストップ」
 コーロはよっこらせとプテラスから降りた。

「...?どうしたんですか?」
 フロワースは素直に質問した。

「いや、このまま空高く飛ぶと思うと、ちょっと......ハハ...」
 コーロは引きつりながらの無理な笑顔で答える。

「......もしかして、怖いんですか?」

「いや?そういうのじゃなくて?何というか?そうそう!アキレス腱伸ばしとくの忘れてた的な?」

「飛行中は歩かないでしょう......」

「いや?降りた時に?アキレス腱ぶちって切れたら危ない的な?だからさ?」

「......」

 シーン

「スヤザキ様」
 フェアリーデバイスから声が鳴る。

「な、なんですか?」

「プテラスは優秀な魔獣です。振り落とすなんて事は絶対にありません。スヤザキ様がしっかり掴まっている限り」

「...で、ですよね~」

「スヤザキ様。時間もありません。さっさとお乗りください。さもないとこの事、ユイ様とミッチー様にチクりますよ?」

「そ、それだけは!ユイはまだしもミッチーにチクるのだけはやめてください!アイツ絶対死ぬほど面倒臭くイジり倒してくる!」

「では乗りましょうか?」

「は、はい......」
 観念したコーロは渋々、再びよっこらせとプテラスに跨った。

「......フロワース警部!俺が必ず奴らのアジトを突き止めてやりますよ!」
 コーロはやや声が裏返りそうになりながら勇ましく声を上げた。

「......めちゃくちゃ頼り無いんですが...」

「ダークウィザード様。我が貴方様を運べば良いのですね?どちらに?」

「まずは西に向かってくれ!細かい場所は飛びながら指示する!」

「承知」

「......フロワース警部!本当にあんたは大丈夫なのか!?」

「ボクはそのナイフさえ肌身離さず持っていて貰えれば大丈夫ですから」

「これ......だよな。わかった!じゃあ作戦通り奴らのアジトで落ち合おう!」

「了解です」

「プテラス!」

 コーロを乗せたプテラスは、大きな翼を左右に広げ、ゆっくり羽ばたき始めた。

 バサ~バサ~バサ~!

 巨体がヘリコプターのようにブワァ~と周りへ風を吹きつけながら上空へ浮上する。

 フロワースは月明かりに照らされ夜空に浮かぶ大怪鳥の姿を見上げて言った。
「あれではまるで、地獄から悪魔の使いが襲撃してきたとでも思うでしょうねぇ......」

「それでは我が主、参りましょう」

「お、おう!」
 必死にプテラスにしがみつくコーロ。

 ビューーーン!!!

 暗黒魔導師を乗せた大怪鳥は、風を切って西に向かいみるみる飛び去っていく。

 フロワースは彼らの姿を見送ると、一呼吸おいて呟いた。
「......よし。これでボクにとっては理想的な形になったな...」
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