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異世界の章:第一部 西のキャロル編
ep84 ブラックキャットという男
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ーーーーーー
ガシャン!ガシャン!ガシャン!
「んー!んー!んー!(ここはどこや!?)」
「いくら体ごとぶつかったところで出られやしねーよ」
ガシャン!ガシャン!ガシャン!
「んー!んー!んー!(アイツはどこ行ったんや!?ウチをどうするつもりや!?)」
「ったく、こんな猫娘のガキを社長自ら拉致ってくるなんて、社長も珍しいことするもんだぜ」
ここはタペストリ市内のとある敷地内の地下牢。
殺風景の狭い牢内は、通路側からの灯りのみで仄暗く、格子状の扉以外何もない。
閉ざされた格子の向こう側には見張りが立っている。
アミーナは口と両手両足を縛られ監禁されていた。
ーーーなんでウチが誘拐されるんや?キースは全額払ってへんのか?だからってウチを誘拐するか?わからへん。
コーロおにーちゃんとユイおねーちゃんは?無事なんか?キースは見つかったんか?ウチらどうなってまうんや......。
......それに、あのブラックキャットとかゆう男。破滅の黒猫って言うてへんかったか?
あの男が黒猫様なんか?そ、そんなん認めへん。あんな奴がウチの憧れの黒猫様なわけあらへん......!ーーー
見張りの男は欠伸をしながら退屈そうに呟いた。
「しかし、この猫娘をどうするつもりなんだろうな。売るのか?それとも?......まあおれの知ったこっちゃねえか」
一方、屋敷の上階の一室では、部下達に一通りの指示を出し終えたブラックキャットが、一人鋭い眼光で静かに想い巡らしていた。
ーーーオレがここまで来るのに、一体どれだけ這いずり回ってきたか。
今、勇者などに邪魔される訳にはいかない......!
......まだ魔王領にいた頃、どこに行っても居場所のないオレは、ひたすら路上を彷徨っていた。
魔族の父と亜人の母は物心つく頃にはとっくに死んでいた。
ヤバイ仕事をしていた親父は殺され、残されたお袋は病気になったかと思うと貧しくて治療も受けられずにとっとと死んだ。
食う物も寝る場所もないなんて当たり前。
ゴロツキどもと奪い合いの日々。
今日生き残れるかどうか、それがオレの毎日だった。
力も無くたいした魔法も使えなかったオレは、ひたすら頭を使って知恵を絞ってなんとか生き抜いていた。
だが、ある時、オレにはある特定の魔法についての才能がある事に気づいた。
魔法迷彩だ。
魔法迷彩は本来、補助的なものだが、オレはそれを独自の偽造魔法に昇華させた。
......それからだ。
偽造魔法を駆使したオレの欺きの日々が始まったのは...。
最初は良かった。
全てが思うようにいった。
偽造魔法は何より、オレ自身との相性も良かった。
オレは食い物も寝る場所も金にも女にも困らなくなった。
ところが、次第に調子に乗り過ぎたオレは、ある組織に目をつけられ、追われる身となってしまった。
それからは、ひたすら欺きながらの逃亡生活となった。
そして、世界では、魔王率いる魔王軍と勇者率いる人間達との戦争の時代に突入していた......。
戦争が始まると、魔王領の一部を除いた地域は、徐々に荒れ始めた。
元々、オレがいたような地域は血生臭い連中が多いエリアだったから、戦争の不安と混乱とともにますます荒んでいった。
オレはむしろ、その状況に紛れて逃げ切れるんじゃないかとたかを括っていたが、甘かった。
組織の連中はオレを見つけ出した。
オレは逃げた。
逃げて逃げて逃げまくった。
しかし、もはや魔王領内にはオレの行ける場所は存在しなかった。
行っても、オレでは生き残れないような危険な場所しか残っていなかった......。
オレは決意した。
魔王領を出ようと。
人間の国に行って一から出直そうと...。
オレは、人間の国へ進軍する魔王軍の兵士に紛れ出国した。
戦場に赴いたオレは、必死に戦いながら、オレの持つ力を出し切って、なんとか命からがらその場を抜け出した。
本当にギリギリだった。
その時、戦場で鬼神の如く魔王軍を薙ぎ払う一人の若き女勇者の姿が、オレの目に刻印のように焼きついた。
...なんとか人間の国に辿り着いたオレは、人間の世界で成り上がってやろうと心に決めた。
とはいえ、行く当てのないオレは、今度は人間の国の路上を彷徨った。
そして、そこで待ち受けていたのは、魔王領にいた頃と同じものだった。
ゴロツキどもと奪い合いの日々。
結局やっていることは何も変わらなかった。
オレからしてみれば、世界で起こっている戦争も、どうでもいいものとしか思えなかった。
やがて戦争も終わる頃、オレはキャロル公国に流れ着いていた。
キャロルにはビジネスチャンスがあると聞き及んでいたからだ。
これからは戦いだけではダメだ。
オレは自分の能力を使い、ビジネスで成功しようと考えていた。
そう、あの亜人の英雄、偉大なる破滅の黒猫のように......。
オレはとにかく金儲けをする事にした。
儲けて儲けて儲けまくって、唸るような大金を手にする。
金さえあれば、力も手に入る。
権力も。軍事力も。信用も。信頼も。
金があれば、強くなることができる。
組織を作って、そいつをデカくする。
オレは奪われる側でなく、奪う側として、世界に君臨する。
オレは、オレから奪った奴等、奪おうとした奴等から奪ってやる。
そうなって初めて、オレの人生は完成する......。
そして......ようやくブラックファイナンスをここまで成長させる事ができた。
今では、ブラックファイナンスの代表だけでなく、新魔王軍のナンバー4だ。
オレはまだこんな所でつまずく訳にはいかない。
オレにはまだ野望がある。
いずれはブラックファイナンスを世界的な組織にまで拡大し、さらにはオレ自身、新魔王軍のトップに上り詰めてやる。
.....つまり、これはチャンス。
あの時この眼に焼きついたあの忌々しい勇者を、今こそ仕留めるチャンス。
さらに、勇者の首を持っていけば、新魔王軍のトップどころか、オレが新たな魔王となる事も可能だろう。
オレはこのチャンスを、必ずモノにしてみせる!ーーー
ガシャン!ガシャン!ガシャン!
「んー!んー!んー!(ここはどこや!?)」
「いくら体ごとぶつかったところで出られやしねーよ」
ガシャン!ガシャン!ガシャン!
「んー!んー!んー!(アイツはどこ行ったんや!?ウチをどうするつもりや!?)」
「ったく、こんな猫娘のガキを社長自ら拉致ってくるなんて、社長も珍しいことするもんだぜ」
ここはタペストリ市内のとある敷地内の地下牢。
殺風景の狭い牢内は、通路側からの灯りのみで仄暗く、格子状の扉以外何もない。
閉ざされた格子の向こう側には見張りが立っている。
アミーナは口と両手両足を縛られ監禁されていた。
ーーーなんでウチが誘拐されるんや?キースは全額払ってへんのか?だからってウチを誘拐するか?わからへん。
コーロおにーちゃんとユイおねーちゃんは?無事なんか?キースは見つかったんか?ウチらどうなってまうんや......。
......それに、あのブラックキャットとかゆう男。破滅の黒猫って言うてへんかったか?
あの男が黒猫様なんか?そ、そんなん認めへん。あんな奴がウチの憧れの黒猫様なわけあらへん......!ーーー
見張りの男は欠伸をしながら退屈そうに呟いた。
「しかし、この猫娘をどうするつもりなんだろうな。売るのか?それとも?......まあおれの知ったこっちゃねえか」
一方、屋敷の上階の一室では、部下達に一通りの指示を出し終えたブラックキャットが、一人鋭い眼光で静かに想い巡らしていた。
ーーーオレがここまで来るのに、一体どれだけ這いずり回ってきたか。
今、勇者などに邪魔される訳にはいかない......!
......まだ魔王領にいた頃、どこに行っても居場所のないオレは、ひたすら路上を彷徨っていた。
魔族の父と亜人の母は物心つく頃にはとっくに死んでいた。
ヤバイ仕事をしていた親父は殺され、残されたお袋は病気になったかと思うと貧しくて治療も受けられずにとっとと死んだ。
食う物も寝る場所もないなんて当たり前。
ゴロツキどもと奪い合いの日々。
今日生き残れるかどうか、それがオレの毎日だった。
力も無くたいした魔法も使えなかったオレは、ひたすら頭を使って知恵を絞ってなんとか生き抜いていた。
だが、ある時、オレにはある特定の魔法についての才能がある事に気づいた。
魔法迷彩だ。
魔法迷彩は本来、補助的なものだが、オレはそれを独自の偽造魔法に昇華させた。
......それからだ。
偽造魔法を駆使したオレの欺きの日々が始まったのは...。
最初は良かった。
全てが思うようにいった。
偽造魔法は何より、オレ自身との相性も良かった。
オレは食い物も寝る場所も金にも女にも困らなくなった。
ところが、次第に調子に乗り過ぎたオレは、ある組織に目をつけられ、追われる身となってしまった。
それからは、ひたすら欺きながらの逃亡生活となった。
そして、世界では、魔王率いる魔王軍と勇者率いる人間達との戦争の時代に突入していた......。
戦争が始まると、魔王領の一部を除いた地域は、徐々に荒れ始めた。
元々、オレがいたような地域は血生臭い連中が多いエリアだったから、戦争の不安と混乱とともにますます荒んでいった。
オレはむしろ、その状況に紛れて逃げ切れるんじゃないかとたかを括っていたが、甘かった。
組織の連中はオレを見つけ出した。
オレは逃げた。
逃げて逃げて逃げまくった。
しかし、もはや魔王領内にはオレの行ける場所は存在しなかった。
行っても、オレでは生き残れないような危険な場所しか残っていなかった......。
オレは決意した。
魔王領を出ようと。
人間の国に行って一から出直そうと...。
オレは、人間の国へ進軍する魔王軍の兵士に紛れ出国した。
戦場に赴いたオレは、必死に戦いながら、オレの持つ力を出し切って、なんとか命からがらその場を抜け出した。
本当にギリギリだった。
その時、戦場で鬼神の如く魔王軍を薙ぎ払う一人の若き女勇者の姿が、オレの目に刻印のように焼きついた。
...なんとか人間の国に辿り着いたオレは、人間の世界で成り上がってやろうと心に決めた。
とはいえ、行く当てのないオレは、今度は人間の国の路上を彷徨った。
そして、そこで待ち受けていたのは、魔王領にいた頃と同じものだった。
ゴロツキどもと奪い合いの日々。
結局やっていることは何も変わらなかった。
オレからしてみれば、世界で起こっている戦争も、どうでもいいものとしか思えなかった。
やがて戦争も終わる頃、オレはキャロル公国に流れ着いていた。
キャロルにはビジネスチャンスがあると聞き及んでいたからだ。
これからは戦いだけではダメだ。
オレは自分の能力を使い、ビジネスで成功しようと考えていた。
そう、あの亜人の英雄、偉大なる破滅の黒猫のように......。
オレはとにかく金儲けをする事にした。
儲けて儲けて儲けまくって、唸るような大金を手にする。
金さえあれば、力も手に入る。
権力も。軍事力も。信用も。信頼も。
金があれば、強くなることができる。
組織を作って、そいつをデカくする。
オレは奪われる側でなく、奪う側として、世界に君臨する。
オレは、オレから奪った奴等、奪おうとした奴等から奪ってやる。
そうなって初めて、オレの人生は完成する......。
そして......ようやくブラックファイナンスをここまで成長させる事ができた。
今では、ブラックファイナンスの代表だけでなく、新魔王軍のナンバー4だ。
オレはまだこんな所でつまずく訳にはいかない。
オレにはまだ野望がある。
いずれはブラックファイナンスを世界的な組織にまで拡大し、さらにはオレ自身、新魔王軍のトップに上り詰めてやる。
.....つまり、これはチャンス。
あの時この眼に焼きついたあの忌々しい勇者を、今こそ仕留めるチャンス。
さらに、勇者の首を持っていけば、新魔王軍のトップどころか、オレが新たな魔王となる事も可能だろう。
オレはこのチャンスを、必ずモノにしてみせる!ーーー
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