導きの暗黒魔導師

根上真気

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異世界の章:第一部 西のキャロル編

ep83 作戦会議

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 フロワースはポーカーフェイスで一連のやり取りを傍観しながら、まったく別の事を思い浮かべた。
ーーーなんだ?この男は。不思議だ......どこかボスに似ている?いやいや全然違うだろ。でもなんだろうか。懐の深い?この感じはーーー

 コーロは一度ふぅ~っと息を吐き、その場の全員の顔を見回してから口火を切る。
「よしっ。じゃあもう奴らが来るまでそう時間がないからな。ユイ、フロワース警部、そしてキース君。早速始めよう」

「あ、は、はい!」
 キースは泣きっ面から一変、必死の表情で返事した。

「......考えがあるんですね?」
 フロワースは冷静に訊く。

「ああ。それとミッチー。もう隠れないでいいぞ。エルフォレス様もです。ここからは全員の力を合わせていく」

「よっしゃぁ!待ってましたよぉ!コーロ様ぁ!」
 ミッチーはバッと飛び上がり、びゅんとコーロの所まですっ飛んで来た。

 ポーカーフェイスだったフロワースの目がギョッとする。
「な、なんです?それ...」

 キースは明からさまに仰天した。
「うわぁぁ!?ほ、本が喋った...!?」 

 サプライズはまだ続く。

「エルフォレス様」
 コーロはポケットからすっと羽根を取り出して再度呼びかけた。

「スヤザキ様。準備は整ったようで」
 
 フロワースとキースは驚きを重ねる。
「...!それは通信魔法ですか?これはまた随分と高度なことをやりますね...」

「こ、今度は羽根が喋っている!?」

「その本はミッチー。ある事情で本になっているが中身は人間で仲間だ。それと、羽根から聞こえるのは森の妖精主、エルフォレス様。俺達にとって強力な協力者だ」
 先程まで隠していたのが嘘のように、コーロは滔々と二人について簡単な説明をした。

「森の妖精主!?本物ですか?」
 フロワースはさらに驚いてコーロに訊く。

「わたくしは本物の森の妖精主です。わたくしの力で皆様をサポートさせていただきます。よろしくお願いしますね、フロワース警部。フフフ」
 羽根の向こうからエルフォレス自ら余裕たっぷりに答えた。

「そういうことです。フロワース警部」
 コーロは自信たっぷりに言った。

「なるほど......わかりました。驚かされましたが、要するにそれなりの武器は揃えているということですね。いいでしょう。まずは貴方の考えとやらをボクに聞かせてください」

 コーロは一度、確認するようにユイと視線を交わすと、互いにこくっと頷き合った。
 そして口を開く。
「ああ。じゃあみんな聞いてくれ。......」

 対ブラックファイナンス、アミーナ&お金奪還作戦の会議が、いよいよ開始した。

「......」
「......?」
「......!」
「......」
「......」

 ......

「......よし。かたまったな」

「そうね」
「...は、はい」
「ふむ。まあ、現状においては最善でしょう」
「はい。充分かと存じます」 

「......あっ、終わりました?」とミッチー。

「お前は安定のお気楽ヤローだな......」
 コーロはもはや呆れを通り越して言った。

「ワタシはヤローじゃありません。オンナです」
 ミッチーはブレない。

「...ああもういい。まあでも、案外そのお気楽さが局面を打開したりするかもしれないけどな」

「それな」
「うるせぇ!」

 彼らの作戦はかたまった。
 招かざる客はいつやって来るのか。
 街はすでに、夜の活気に賑わっていた......。
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