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異世界の章:第一部 西のキャロル編
ep60 破滅の黒猫
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日が沈み夜になると、コーロ達は宿屋に戻った。
そして一階の食堂で夕食をとっていると、二日振りに宿屋に帰還したアミーナと出くわした。
「あ!スヤザキのおにーさんとユイリスのおねーさん!と、本のおねーさんもおるんかな?」
「お、アミーナ!」
「おかえりさない、アミーナ」
「アミーナさん」
そのまま三人(+一冊)で食事を共にすることになり、コーロ達はアミーナに調査報告をした。
「ブラックキャット?誰やねんそれ?」
「さあ?でもタペストリで起業する人へ融資してるとか言ってたから、アミーナもそのうち関わることがあるんじゃないのか?」
「どないやろ?」
「ところでアミーナ...」
「あかん!」
「いやまだ何も言ってないぞ」
「そんぐらいじゃ導きの欠片?渡されへん!」
「だ、だよな......」
「だいいち、それ、黒猫様ちゃうやん!」
「ねえ?アミーナはなんでそんなにお金が欲しいの?」
「それは事業を成功させたいからや!そのためには少しでも多く資金があった方がええやん!ウチは一度決めたらまっしぐら、猫まっしぐらなんや!」
「コーロ。やっぱりアミーナは手強いみたいね」
「ある意味そのたくましさには感心するよ」
「ニャハハ!ほんでギルドの方は?クエストはやったんか?」
「昨日やったよ。迷い猫探しと野良犬駆除をな」
「迷い猫探し?それウチにぴったりやんか!ニャハハ!ほんで両方とも達成したんか?」
「ユイパイセンのご指導もありまして、ね」
「ちょっとコーロ。その言い方なに?」
「あ、なんでもないっす」
「もうっ。...それにしてもあの野犬......」
「おねーさん?」
「ユイ様。あの野犬もどきの獣の事が気になるのでしょうか?」
ミッチーがひょこっとコーロの懐からユイに訊ねる。
「なにか、ちょっと嫌な予感がするの......」
ユイは言い知れぬ不安の色を浮かべた。
コーロも続く。
「あれは、なんかこう...底知れぬ悪意を孕んでいるような......」
同じ頃……。
タペストリ市内のとある豪勢な屋敷の一室に、三人の男が集まっていた。
「社長。その魔犬とやら、早く俺にも使わせてくださいよ!」
「焦るなゲアージ。あれはまだ実験中だ」
「そうだぞ。お前は足を動かすのが仕事みたいなもんだ」
「ちっとカイソー部長まで!オレだって大変なんすよ?債務者追って走りまわんの!ったくあんなゴミどもさっさとブッ殺しゃいーんすよ」
「バカかお前は。それじゃ金が回収できん」
「だからそのために早く魔犬とやらを使わせてくださいよ!」
「まあ待て。ほら、その魔犬とやらの発明者が来たぞ?」
コンコンと、ドアをノックする音が鳴る。
カイソーが「入れ」と声を上げる。
扉が開くと、妖しげに目を光らせた褐色の男が室に足を踏み入れた。
男は社長の前まで歩み寄り、頭を下げた。
「どうも。ご無沙汰しております。ブラックキャット様」
「久しぶりだな。ヘンドリクス王国副騎士長マイルス」
「ブラックキャット様。本日は別の立場で参っておりますゆえ」
「そうだったな。傀儡魔導師の魔族、マイルス・クランドール」
「そして貴方はブラックファイナンス社長ブラックキャット様。いえ、新魔王軍ナンバー4、破滅の黒猫様」
頭には獣の耳を携え、ギザギザの黒い長髪は荒々しく伸びている。
つり上がった野望に満ちた目に先の尖った顎。
黒づくめのトレンチコートのような服に身を纏った背丈のある体格の良い体に黒いブーツ。
彼は大きく勝ち誇ったように眼光鋭く微笑した。
「いずれはナンバー1、新たな王となる、破滅の黒猫様だ」
ブラックキャットはそう言って凄むと、本題を切り出す。
「してマイルス。例のアレは持ってきたのか?」
「はい。こちらです」
マイルスは懐から小さな笛を取り出してブラックキャットに見せた。
「それが」
「魔笛です。これを使えば、私以外でもマリオネット(魔人形)を使用できるようになります。さらには......」
「うむ?」
「人間にも使えるようになります」
「ほう。それはいいな」
「社長。ならそれを債務者どもに使えばいいのでは?」
カイソーは残酷に提案する。
「搾り取った債務者を奴隷人形にすれば、これ以上ない資源の有効活用になるな」
ブラックキャットは冷酷な笑みを浮かべる。
「てことは、オレの仕事も楽になるってことっすか!?」
ゲアージが調子に乗って口を挟んだ。
「バカもん。お前はとりあえず魔犬で我慢しろ」
カイソーはゲアージを戒めた。
そして一階の食堂で夕食をとっていると、二日振りに宿屋に帰還したアミーナと出くわした。
「あ!スヤザキのおにーさんとユイリスのおねーさん!と、本のおねーさんもおるんかな?」
「お、アミーナ!」
「おかえりさない、アミーナ」
「アミーナさん」
そのまま三人(+一冊)で食事を共にすることになり、コーロ達はアミーナに調査報告をした。
「ブラックキャット?誰やねんそれ?」
「さあ?でもタペストリで起業する人へ融資してるとか言ってたから、アミーナもそのうち関わることがあるんじゃないのか?」
「どないやろ?」
「ところでアミーナ...」
「あかん!」
「いやまだ何も言ってないぞ」
「そんぐらいじゃ導きの欠片?渡されへん!」
「だ、だよな......」
「だいいち、それ、黒猫様ちゃうやん!」
「ねえ?アミーナはなんでそんなにお金が欲しいの?」
「それは事業を成功させたいからや!そのためには少しでも多く資金があった方がええやん!ウチは一度決めたらまっしぐら、猫まっしぐらなんや!」
「コーロ。やっぱりアミーナは手強いみたいね」
「ある意味そのたくましさには感心するよ」
「ニャハハ!ほんでギルドの方は?クエストはやったんか?」
「昨日やったよ。迷い猫探しと野良犬駆除をな」
「迷い猫探し?それウチにぴったりやんか!ニャハハ!ほんで両方とも達成したんか?」
「ユイパイセンのご指導もありまして、ね」
「ちょっとコーロ。その言い方なに?」
「あ、なんでもないっす」
「もうっ。...それにしてもあの野犬......」
「おねーさん?」
「ユイ様。あの野犬もどきの獣の事が気になるのでしょうか?」
ミッチーがひょこっとコーロの懐からユイに訊ねる。
「なにか、ちょっと嫌な予感がするの......」
ユイは言い知れぬ不安の色を浮かべた。
コーロも続く。
「あれは、なんかこう...底知れぬ悪意を孕んでいるような......」
同じ頃……。
タペストリ市内のとある豪勢な屋敷の一室に、三人の男が集まっていた。
「社長。その魔犬とやら、早く俺にも使わせてくださいよ!」
「焦るなゲアージ。あれはまだ実験中だ」
「そうだぞ。お前は足を動かすのが仕事みたいなもんだ」
「ちっとカイソー部長まで!オレだって大変なんすよ?債務者追って走りまわんの!ったくあんなゴミどもさっさとブッ殺しゃいーんすよ」
「バカかお前は。それじゃ金が回収できん」
「だからそのために早く魔犬とやらを使わせてくださいよ!」
「まあ待て。ほら、その魔犬とやらの発明者が来たぞ?」
コンコンと、ドアをノックする音が鳴る。
カイソーが「入れ」と声を上げる。
扉が開くと、妖しげに目を光らせた褐色の男が室に足を踏み入れた。
男は社長の前まで歩み寄り、頭を下げた。
「どうも。ご無沙汰しております。ブラックキャット様」
「久しぶりだな。ヘンドリクス王国副騎士長マイルス」
「ブラックキャット様。本日は別の立場で参っておりますゆえ」
「そうだったな。傀儡魔導師の魔族、マイルス・クランドール」
「そして貴方はブラックファイナンス社長ブラックキャット様。いえ、新魔王軍ナンバー4、破滅の黒猫様」
頭には獣の耳を携え、ギザギザの黒い長髪は荒々しく伸びている。
つり上がった野望に満ちた目に先の尖った顎。
黒づくめのトレンチコートのような服に身を纏った背丈のある体格の良い体に黒いブーツ。
彼は大きく勝ち誇ったように眼光鋭く微笑した。
「いずれはナンバー1、新たな王となる、破滅の黒猫様だ」
ブラックキャットはそう言って凄むと、本題を切り出す。
「してマイルス。例のアレは持ってきたのか?」
「はい。こちらです」
マイルスは懐から小さな笛を取り出してブラックキャットに見せた。
「それが」
「魔笛です。これを使えば、私以外でもマリオネット(魔人形)を使用できるようになります。さらには......」
「うむ?」
「人間にも使えるようになります」
「ほう。それはいいな」
「社長。ならそれを債務者どもに使えばいいのでは?」
カイソーは残酷に提案する。
「搾り取った債務者を奴隷人形にすれば、これ以上ない資源の有効活用になるな」
ブラックキャットは冷酷な笑みを浮かべる。
「てことは、オレの仕事も楽になるってことっすか!?」
ゲアージが調子に乗って口を挟んだ。
「バカもん。お前はとりあえず魔犬で我慢しろ」
カイソーはゲアージを戒めた。
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