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異世界の章:第一部 西のキャロル編
ep53 タペストリ
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一行は馬車に乗り、キャロル公国の首都、タペストリ市に到着した。
キャロルは、王族ではなく、貴族が権力の中枢を握る公国である。
キャロルの貴族の多くは事業に携わっており、資金だけ提供するいわゆる投資家のような者もいれば、自ら事業を手がける実業家もいる。
また、貴族以外の資産家でない者の中で、自ら事業を起こし成功する者もいた。
その事実こそ、多くの商魂逞しい人間達を国内に集めた。
それが、とりわけキャロルを屈指の商業国たらしめんとしたのである。
そんな商業国キャロルの中心地がここ、タペストリだ。
その街並みは、彼らがやってきた東の街よりもずっと近代化されたものだった。
四階建て五階建ての建物がズラリと並び、舗装された広い道路がいくつもあり、交差点は街行く馬車や人間で輻輳していた。
魔法を動力とした電気、ガス、水道などの魔動インフラも充実していて、この世界においての科学的な文明国家たる姿を演出していた。
会社もあるし、郵便局もあるし、銀行もある。
コーロはこの世界に来て初めて、もっとも自分がいた世界に近い「文明社会」を感じた。
「へ~ここがキャロルの首都、タペストリかぁ」
「どや?世界中からビジネスで一旗上げようゆう連中が集まってくるんやで?アガるやろ?」
「私は久しぶりにタペストリに来たけど、相変わらず活気がある街ね」
そんな会話をしていると、アミーナが足早にトコトコトコっと二人の前に踊り出て振り返り、
「ほな、ウチはこれで!今夜は宿に戻らんかもしれへんけど!ビジネスパートナーんとこ行ってくるわ!」
快活に言い放って彼女はあっという間にその場からいなくなった。
「アミーナは行っちゃったか。じゃあ俺達は例の調べ物を始めますか」
「そうね」
「でもさ?さっきの話だとギルドの方が情報集められるんじゃないのか?」
「むしろギルドの情報だと、破滅の黒猫はキャロルにいる、という事までしかわからなかったのよ」
「なるほどな。で、具体的にどうやって情報集めればいいんだろうな?」
「とりあえず、コーロはタペストリがどんな所か見て回った方がいいかもしれないわね。それで......」
「ユイ?どうした?」
「申し訳ないけれど、一人で回っててもらっていいかしら?私、銀行に行って来ようと思っていて」
「銀行に行くのか?えっと、俺はついて行かない方がいいって事か?」
「そういう訳じゃないけれど、待たせてしまうから」
「わかったよ。じゃあ俺はとりあえず一人で街をひと回りしてるよ」
「あ、その前にこれを」
ユイはコーロに何枚かのコインを手渡した。
「一銭も持ってないと困るでしょ?じゃあまた後でね」
「あ、ああ。また後で。(俺はどんどんダメ男になってしまっていないだろうか......)」
「ヒモ道まっしぐらですね!あとは売れないホストにでもなるだけです!」
ミッチーが彼の懐から明るく断定した。
「どんな道だよ!?ちくしょう!タペストリにハローワークはないのか!?」
二人は目の前に見えた時計台を集合場所に定め、一旦解散した。
コーロはタペストリの街をぶらぶら歩きながら、懐に向かい声をかける。
「なあミッチー」
「何ですか?コーロ様」
「あのさ......」
「はい?」
「......何をどーすればいいのかさっぱりわからん!え?スマホもないのにどうやって調べりゃいいの!?なに?道行く人に片っ端から声かけるわけ?キャッチか!」
「なに自分で言って自分でツッコんでるんですか。色々やりようはあるでしょうに。これだから最近の若者は」
「いや俺、若者代表じゃないからね?もっとちゃんとした若者もたくさんいるからね?じゃあ俺はちゃんとしてないのか!おい!」
「ちょっとどうしたんですかコーロ様?今日はやけにノリがイイですねぇ?」
「スマン。なんだかよくわからないテンションになってた...。とりあえず、そうだな。街をひと回りしながらどこかカフェにでも入って店員さんにでも聞いてみようか」
キャロルは、王族ではなく、貴族が権力の中枢を握る公国である。
キャロルの貴族の多くは事業に携わっており、資金だけ提供するいわゆる投資家のような者もいれば、自ら事業を手がける実業家もいる。
また、貴族以外の資産家でない者の中で、自ら事業を起こし成功する者もいた。
その事実こそ、多くの商魂逞しい人間達を国内に集めた。
それが、とりわけキャロルを屈指の商業国たらしめんとしたのである。
そんな商業国キャロルの中心地がここ、タペストリだ。
その街並みは、彼らがやってきた東の街よりもずっと近代化されたものだった。
四階建て五階建ての建物がズラリと並び、舗装された広い道路がいくつもあり、交差点は街行く馬車や人間で輻輳していた。
魔法を動力とした電気、ガス、水道などの魔動インフラも充実していて、この世界においての科学的な文明国家たる姿を演出していた。
会社もあるし、郵便局もあるし、銀行もある。
コーロはこの世界に来て初めて、もっとも自分がいた世界に近い「文明社会」を感じた。
「へ~ここがキャロルの首都、タペストリかぁ」
「どや?世界中からビジネスで一旗上げようゆう連中が集まってくるんやで?アガるやろ?」
「私は久しぶりにタペストリに来たけど、相変わらず活気がある街ね」
そんな会話をしていると、アミーナが足早にトコトコトコっと二人の前に踊り出て振り返り、
「ほな、ウチはこれで!今夜は宿に戻らんかもしれへんけど!ビジネスパートナーんとこ行ってくるわ!」
快活に言い放って彼女はあっという間にその場からいなくなった。
「アミーナは行っちゃったか。じゃあ俺達は例の調べ物を始めますか」
「そうね」
「でもさ?さっきの話だとギルドの方が情報集められるんじゃないのか?」
「むしろギルドの情報だと、破滅の黒猫はキャロルにいる、という事までしかわからなかったのよ」
「なるほどな。で、具体的にどうやって情報集めればいいんだろうな?」
「とりあえず、コーロはタペストリがどんな所か見て回った方がいいかもしれないわね。それで......」
「ユイ?どうした?」
「申し訳ないけれど、一人で回っててもらっていいかしら?私、銀行に行って来ようと思っていて」
「銀行に行くのか?えっと、俺はついて行かない方がいいって事か?」
「そういう訳じゃないけれど、待たせてしまうから」
「わかったよ。じゃあ俺はとりあえず一人で街をひと回りしてるよ」
「あ、その前にこれを」
ユイはコーロに何枚かのコインを手渡した。
「一銭も持ってないと困るでしょ?じゃあまた後でね」
「あ、ああ。また後で。(俺はどんどんダメ男になってしまっていないだろうか......)」
「ヒモ道まっしぐらですね!あとは売れないホストにでもなるだけです!」
ミッチーが彼の懐から明るく断定した。
「どんな道だよ!?ちくしょう!タペストリにハローワークはないのか!?」
二人は目の前に見えた時計台を集合場所に定め、一旦解散した。
コーロはタペストリの街をぶらぶら歩きながら、懐に向かい声をかける。
「なあミッチー」
「何ですか?コーロ様」
「あのさ......」
「はい?」
「......何をどーすればいいのかさっぱりわからん!え?スマホもないのにどうやって調べりゃいいの!?なに?道行く人に片っ端から声かけるわけ?キャッチか!」
「なに自分で言って自分でツッコんでるんですか。色々やりようはあるでしょうに。これだから最近の若者は」
「いや俺、若者代表じゃないからね?もっとちゃんとした若者もたくさんいるからね?じゃあ俺はちゃんとしてないのか!おい!」
「ちょっとどうしたんですかコーロ様?今日はやけにノリがイイですねぇ?」
「スマン。なんだかよくわからないテンションになってた...。とりあえず、そうだな。街をひと回りしながらどこかカフェにでも入って店員さんにでも聞いてみようか」
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