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異世界の章:第一部 西のキャロル編
ep52 ギルドとは
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記入し終えると、コーロは受付の女性に紙を渡した。
「ありがとうございます。それではお呼びするまで少々お待ちくださいませ」
三人は横にあるカウンター席に着き、コーロが呼ばれるのを待った。
「そういえば、ユイとアミーナは何もしなくていいのか?」
「私は過去に登録した事あるから」
「ウチも」
「ギルドは色んなところにあるんだよな?登録資格?は共通なのか?」
「ええ。冒険者ギルドは国とは独立した機関で各国各地にあるわ。とはいっても、どこにでもあるわけではないけれど。
例えば、東のズルースにはギルドはなく、ヘンドリクスにも首都から離れた地域の街にちょっとあるくらいね」
「ほんでな?各ギルドはみんな独自のネットワークで繋がっとんねん。せやから情報集めのためにギルドに集まってくる連中も多いねんな。
そうそう!黒猫様の情報もギルドの冒険者連中から聞いた話なんやで?」
「そうなのか。あっ...!」
「コーロ?」
「どないしたん?」
コーロはある事に気がつくと、ユイの耳元で囁いた。
「ユイはこんなところに来て大丈夫なのか?レオルドさんは表沙汰にはならないって言ってたけど」
ユイも小声で答える。
「わかっているわ。だからこそあえて来たの。それを確かめたくて」
「さ、さすが度胸あるな」
「ユイ様はぐずぐずコーロ様とは違いますからね」
いきなりミッチーが彼の懐からチラッと顔を覗かせてぶしつけに言った。
「おまえはまた!いや、確かにそうだよな......」
「どうしたの?」
「自らを省みているだけだよ...。でも、ユイって、有名ではないのか?」
「もちろん勇者の存在は有名よ。でも私を見てすぐそれとわかる人は、ヘンドリクス以外では少ないわ」
「そういうもんなのか。冒険者連中でもか?」
「目立った行動を取らない限りね。そもそも、彼らは勇者とか魔王とか世界とかそういったものにはあんまり興味ないの。もちろん気づいている者もいるかもしれないけれど。でもね?案外こういう時ほど堂々としていた方がいいものよ」
コソコソと話している三人を、端の席に着いたアミーナがいぶかしげにじ~っと見ていた。
「あ、アミーナ!すまん!ちょっと込み入った話でさ!」
「べつにええよ?ウチは野暮な事は聞かんし言わんし」
とその時、受付からコーロを呼ぶ声が上がった。
三人は立ち上がり、再び受付に足を運ぶ。
「......以上になります。それではスヤザキ様の冒険者としてのご活躍、期待していますね」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
受付の女性から一通りの説明を受け、無事、コーロの冒険者登録の手続きは完了した。
コーロは受付から出口へと歩きながら、壁に貼られた無数のクエスト(依頼)の紙を見て、少年のような冒険心に胸を躍らせた。
そしてすぐに一行はギルドを後にした。
別に急ぐ必要もなかったが、この後すぐに首都タペストリへの移動を控えていたからだ。
また、アミーナがせっかち気味なのも早々の退店を手伝った。
「ほな、タペストリ行こか!」
「もうちょっとクエストとかちゃんと見たかったなぁ」
「また来ればええやろ!?にゃはは」
「そういえばアミーナはタペストリにビジネスパートナーがいるのよね?」
「うん!キースって言うてな?ええ奴やねん!久しぶりやな~元気かな~?」
溌剌と先頭を歩くアミーナの背中を見ながら、コーロとユイは小声で言葉を交わす。
「大丈夫...だったのかな?」
「何も問題なかったわ。むしろ、問題がなさ過ぎて気になるぐらい」
「やっぱりギルドが独立した機関だからか?」
「だからといって国から何も咎められないなんて事はないわ。ましてや勇者に関わることなら......」
ーーー今、ヘンドリクス王国はどうなっているの?エヴァンスは一体何を考えているの?それともエヴァンスの後ろに誰かがいるの?ダメ、考えれば考えるほどわからないーーー
ユイは引き続き不安を抱えていた。
だが、実際に他国においての彼女の自由は保証されていた。
彼らはそれをまだ知らなかっただけなのである。
......むしろ、それよりももっと大きい、勇者としての彼女へ迫り来る巨大な運命の唸りが底知れぬ悪意と共に醸成されていることを、いずれ彼らは知る事となる。
しかし、それはまだ先のこと......。
「ありがとうございます。それではお呼びするまで少々お待ちくださいませ」
三人は横にあるカウンター席に着き、コーロが呼ばれるのを待った。
「そういえば、ユイとアミーナは何もしなくていいのか?」
「私は過去に登録した事あるから」
「ウチも」
「ギルドは色んなところにあるんだよな?登録資格?は共通なのか?」
「ええ。冒険者ギルドは国とは独立した機関で各国各地にあるわ。とはいっても、どこにでもあるわけではないけれど。
例えば、東のズルースにはギルドはなく、ヘンドリクスにも首都から離れた地域の街にちょっとあるくらいね」
「ほんでな?各ギルドはみんな独自のネットワークで繋がっとんねん。せやから情報集めのためにギルドに集まってくる連中も多いねんな。
そうそう!黒猫様の情報もギルドの冒険者連中から聞いた話なんやで?」
「そうなのか。あっ...!」
「コーロ?」
「どないしたん?」
コーロはある事に気がつくと、ユイの耳元で囁いた。
「ユイはこんなところに来て大丈夫なのか?レオルドさんは表沙汰にはならないって言ってたけど」
ユイも小声で答える。
「わかっているわ。だからこそあえて来たの。それを確かめたくて」
「さ、さすが度胸あるな」
「ユイ様はぐずぐずコーロ様とは違いますからね」
いきなりミッチーが彼の懐からチラッと顔を覗かせてぶしつけに言った。
「おまえはまた!いや、確かにそうだよな......」
「どうしたの?」
「自らを省みているだけだよ...。でも、ユイって、有名ではないのか?」
「もちろん勇者の存在は有名よ。でも私を見てすぐそれとわかる人は、ヘンドリクス以外では少ないわ」
「そういうもんなのか。冒険者連中でもか?」
「目立った行動を取らない限りね。そもそも、彼らは勇者とか魔王とか世界とかそういったものにはあんまり興味ないの。もちろん気づいている者もいるかもしれないけれど。でもね?案外こういう時ほど堂々としていた方がいいものよ」
コソコソと話している三人を、端の席に着いたアミーナがいぶかしげにじ~っと見ていた。
「あ、アミーナ!すまん!ちょっと込み入った話でさ!」
「べつにええよ?ウチは野暮な事は聞かんし言わんし」
とその時、受付からコーロを呼ぶ声が上がった。
三人は立ち上がり、再び受付に足を運ぶ。
「......以上になります。それではスヤザキ様の冒険者としてのご活躍、期待していますね」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
受付の女性から一通りの説明を受け、無事、コーロの冒険者登録の手続きは完了した。
コーロは受付から出口へと歩きながら、壁に貼られた無数のクエスト(依頼)の紙を見て、少年のような冒険心に胸を躍らせた。
そしてすぐに一行はギルドを後にした。
別に急ぐ必要もなかったが、この後すぐに首都タペストリへの移動を控えていたからだ。
また、アミーナがせっかち気味なのも早々の退店を手伝った。
「ほな、タペストリ行こか!」
「もうちょっとクエストとかちゃんと見たかったなぁ」
「また来ればええやろ!?にゃはは」
「そういえばアミーナはタペストリにビジネスパートナーがいるのよね?」
「うん!キースって言うてな?ええ奴やねん!久しぶりやな~元気かな~?」
溌剌と先頭を歩くアミーナの背中を見ながら、コーロとユイは小声で言葉を交わす。
「大丈夫...だったのかな?」
「何も問題なかったわ。むしろ、問題がなさ過ぎて気になるぐらい」
「やっぱりギルドが独立した機関だからか?」
「だからといって国から何も咎められないなんて事はないわ。ましてや勇者に関わることなら......」
ーーー今、ヘンドリクス王国はどうなっているの?エヴァンスは一体何を考えているの?それともエヴァンスの後ろに誰かがいるの?ダメ、考えれば考えるほどわからないーーー
ユイは引き続き不安を抱えていた。
だが、実際に他国においての彼女の自由は保証されていた。
彼らはそれをまだ知らなかっただけなのである。
......むしろ、それよりももっと大きい、勇者としての彼女へ迫り来る巨大な運命の唸りが底知れぬ悪意と共に醸成されていることを、いずれ彼らは知る事となる。
しかし、それはまだ先のこと......。
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