導きの暗黒魔導師

根上真気

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異世界の章:第一部 西のキャロル編

ep42 契約

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 コーロは叫んだ!

「ユイ!アミーナ!待て!」
「え?」
「え?」

 コーロは、ゆっくりと近づいて来る怪鳥に向かい自らも歩き出し、接近した。

「コーロ!?」
「おにーさん!?」
「コーロ様」
 
 くうぅぅぅぅん。

「え?」
「え?」

 なんと、怪鳥はコーロに向かい愛玩動物のような甘い声を発し、懐き始めた!
 コーロが怪鳥の垂れた頭を優しく撫でると、さらに怪鳥は甘い声を出し、すっかりペットのような塩梅で完全に屈服した。

「えーっ!!?」

 一同は仰天する。 

「コーロ!?あなた一体!?」
「おにーさん!?自分何したん!?」

 皆が驚愕の渦に飲まれている中、ミッチーだけは冷静に、己の事のように誇っていた。
「フッフッフ。コーロ様。いよいよ真の暗黒魔導を覚醒し始めましたね......」

 彼は、自分でもよくわかっていなかったが、なぜかそうすべきだと思いそう行動したのだ。

 それから一同はさらに驚愕する。

「ダークウィザード様」

「え?」
「え?」
「え?」

 なんと、屈服した怪鳥から人間の言葉が発せられたのだ!

「...貴方はダークウィザード様ですね?ああ、貴方にお会いするのは三百年振りですね」

「お、おまえ、人間の言葉が喋れるのか?」

「ああ、私の事、お忘れですか?でも仕方ありません。三百年振りですから」

「三百年振り?(ん?それって三百年前の暗黒魔導師の事か?)」

「たとえ貴方様がお忘れでも構いません。私は知らせを受け、ここに参りました。私は貴方様のしもべ。ただ貴方様に付き従いゆくまでです」

「いや、付き従うと言われても......(どう考えてもこんなの連れて行けないだろ...)」

 コーロが怪鳥相手に当惑していると、懐からミッチーが助け舟を出す。
「コーロ様!契約です!契約するのです!」

「契約?」
「主従の契約です!そうすれば、この怪鳥はコーロ様の使役魔となります!」
「使役魔?あ、使い魔ってことか!」
「はい!やり方はわかっているはずですよ!」
「あ、ああ!わかったよ!」

 コーロはミッチーの言葉に従った。
 彼は屈服する怪鳥に向けて右手をかざす。
 そのまま闇の魔力を練り上げた。
 黒い光の波がゆらゆらと立ち昇る。
 
『今ここに、なんじを我がしもべとする。我が名に於いて、汝使役されん事、やくたまう』

 怪鳥の全身はピカーッ!と黒い波の光に包まれた!

「...ああ、ダークウィザード様。必要とあらば、いつでも私を、お呼びくださいませ...」

 そして光は、怪鳥ごと彼の右手の掌の中にズズ~っと吸い込まれるように消えていった。

「あの~ミッチー。これで良かったのか?」
「バッチグーです!」

「コーロ、あなたって本当に一体......」
「おにーさん!自分ホンマ何者やねん!?」
「え?一応、暗黒魔導師?」
「なんで疑問系やねん!」

「おい、あんたスゲーな!?」
「何者だアンタ!?」
「ひょっとしたら魔王なのか!?」
「そいつはおもしれー!」

 盗賊の襲撃、撃退。
 魔物の襲来、撃退。
 彼らの馬車の旅の最初の晩は、とんだイベントの連続となった。
 だが、突然の二度の脅威を退けた事は、連中の絶好の酒の肴となり、その後は大いに盛り上がった。
 コーロとユイも連中の輪の中に入り(というより入れられて)、宴の夜を賑やかに過ごした。

「ホントにあんたらすげえな!?」
「いや~美人剣士さんには痺れたな~!」
「いやいや、あの魔物を手懐けた兄ちゃんもすげーぞ!?」
「てゆーかその喋る本はなんなんだ!?」
「ホンマおねーさんもおにーさんもごっついわ!ニャハハハ!」

 盗賊どもは縛り上げられたまま、アミーナの魔法により眠りに落ちていた。

 じきに宴会は終わり、皆、寝支度に入った。
 コーロ達も連中から旅の寝具を借りて、草の上に横になった。

 小川のせせらぎと虫の声と草木の細やかなざわめきだけが、夜の音色を奏でていた。
 澄み渡った夜空の星は朗らかに煌めいていた。 
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