25 / 160
異世界の章:第一部 魔物の森編
ep21 相見
しおりを挟む
ーーーーーー
まだ仄暗い早朝。
朝景色の肌寒い空気の中、約一千の人員を要する討伐軍は、当初の予想通り、魔物の森の南から、戦力を分散する事なく、真っ直ぐに迫っていた。
前日夕方、すでに討伐軍はヘンドリクス王国北端の村に到着していた。
そこで最後の休息を取ると共に最終的な準備を整え、黎明過ぎには出立していたのだった。
「しかし、本当にこんな馬鹿正直な進軍で良いのかね?」
「さあな。だが副騎士長マイルス様の命令だからな」
「優秀なあの人がそうしろと言うんだから間違いはないのだろう」
「森が見えて来たぞ」
副騎士長マイルスを先頭にして、一歩後ろにエヴァンスとユイリスを率いた討伐軍は、森の南端部分の手前の草原で一旦進行を停止した。
草原の先には深碧の壁のように森が奥深く広がっている。
俄に討伐軍がどよめく。
「おい!あれは......」
「森の守護獣だ!」
「それと横には......お、おい!?あれは妖精主じゃないのか!?」
ユイリスもその予想外な光景に驚きの声を上げる。
「これはどういうことなの!?」
なお、エルフォレスは木の精霊を使役し、その力であらかじめ討伐軍の正確な位置を把握していた。
そこを多勢の来客を招き入れる森への大きな入口とし、いわば森への大きな玄関先に出て、レオルドと共に待ち構えていたのである。
「大体......千ってところか?何とも言えねえ数だな」
「そうですね」
「こんぐらいならオレがまとめて今やっちまうか?」
「いけませんよレオルド。それでは意味がありません。それに勇者様もいるのですよ?」
「わかってるよ。ジョーダンだよジョーダン」
エルフォレスは、討伐軍全体をしっかりと確認すると『妖精の声音』を使い、大きく声を響き上げる。
「ヘンドリクス軍の皆様!わたくしは魔物の森の妖精主エルフォレスです!
わたくしはこのように生きています!こちらのレオルドはわたくしや森を守ってくれる守護獣です!
他の魔物達は皆弱く大人しい者達です!この度の事件は大きな誤解をはらんでいます!
さあ、矛をお収めください!真に倒すべき敵はここの魔物達ではありません!」
「どういうことなんだ!?」
「妖精主は生きているぞ!?しかも横にはあの守護獣が!」
「誤解ってなんだ!?真の敵!?」
兵士達は当惑して騒ぎ出した。
馬上のユイリスも同様に困惑する。
ユイリスは先頭に出てエルフォレスの呼びかけに「それは...」と返答しようとするが、遮るようにエヴァンスが馬上から叫んだ。
「皆さん!あれは幻術です!本物の妖精主ではありません!我々を撹乱するためです!賢者である僕の目は誤魔化せません!」
ユイリスが「エヴァンス?」と疑問を表すも、続けざまに副騎士長マイルスも馬上から叫んだ。
「そういう事だ!お前達!決して騙されるなよ!我々の任務は魔物どもを討伐する事だ!」
兵士達のざわめきは変化する。
「なんだ!そういう事か!」
「賢者様とマイルス様が言うんだ、間違いない!」
「さすがは賢者様だな!」
ユイリスは多少戸惑ってはいたがエヴァンスの事を信じていたので、彼の認識に従った。
一連の様子を目撃してエルフォレスは、わかってはいたものの冷静に嘆息した。
「やはりこうなりましたか...」
「となると、黒幕はあの男か?」
「それはわかりません...。
それよりレオルド。早速作戦に入りましょう。
できれば私の呼びかけに応じて欲しかったのですが......仕方ありません」
「ああ。それじゃあおっ始めるとするか!」
まだ仄暗い早朝。
朝景色の肌寒い空気の中、約一千の人員を要する討伐軍は、当初の予想通り、魔物の森の南から、戦力を分散する事なく、真っ直ぐに迫っていた。
前日夕方、すでに討伐軍はヘンドリクス王国北端の村に到着していた。
そこで最後の休息を取ると共に最終的な準備を整え、黎明過ぎには出立していたのだった。
「しかし、本当にこんな馬鹿正直な進軍で良いのかね?」
「さあな。だが副騎士長マイルス様の命令だからな」
「優秀なあの人がそうしろと言うんだから間違いはないのだろう」
「森が見えて来たぞ」
副騎士長マイルスを先頭にして、一歩後ろにエヴァンスとユイリスを率いた討伐軍は、森の南端部分の手前の草原で一旦進行を停止した。
草原の先には深碧の壁のように森が奥深く広がっている。
俄に討伐軍がどよめく。
「おい!あれは......」
「森の守護獣だ!」
「それと横には......お、おい!?あれは妖精主じゃないのか!?」
ユイリスもその予想外な光景に驚きの声を上げる。
「これはどういうことなの!?」
なお、エルフォレスは木の精霊を使役し、その力であらかじめ討伐軍の正確な位置を把握していた。
そこを多勢の来客を招き入れる森への大きな入口とし、いわば森への大きな玄関先に出て、レオルドと共に待ち構えていたのである。
「大体......千ってところか?何とも言えねえ数だな」
「そうですね」
「こんぐらいならオレがまとめて今やっちまうか?」
「いけませんよレオルド。それでは意味がありません。それに勇者様もいるのですよ?」
「わかってるよ。ジョーダンだよジョーダン」
エルフォレスは、討伐軍全体をしっかりと確認すると『妖精の声音』を使い、大きく声を響き上げる。
「ヘンドリクス軍の皆様!わたくしは魔物の森の妖精主エルフォレスです!
わたくしはこのように生きています!こちらのレオルドはわたくしや森を守ってくれる守護獣です!
他の魔物達は皆弱く大人しい者達です!この度の事件は大きな誤解をはらんでいます!
さあ、矛をお収めください!真に倒すべき敵はここの魔物達ではありません!」
「どういうことなんだ!?」
「妖精主は生きているぞ!?しかも横にはあの守護獣が!」
「誤解ってなんだ!?真の敵!?」
兵士達は当惑して騒ぎ出した。
馬上のユイリスも同様に困惑する。
ユイリスは先頭に出てエルフォレスの呼びかけに「それは...」と返答しようとするが、遮るようにエヴァンスが馬上から叫んだ。
「皆さん!あれは幻術です!本物の妖精主ではありません!我々を撹乱するためです!賢者である僕の目は誤魔化せません!」
ユイリスが「エヴァンス?」と疑問を表すも、続けざまに副騎士長マイルスも馬上から叫んだ。
「そういう事だ!お前達!決して騙されるなよ!我々の任務は魔物どもを討伐する事だ!」
兵士達のざわめきは変化する。
「なんだ!そういう事か!」
「賢者様とマイルス様が言うんだ、間違いない!」
「さすがは賢者様だな!」
ユイリスは多少戸惑ってはいたがエヴァンスの事を信じていたので、彼の認識に従った。
一連の様子を目撃してエルフォレスは、わかってはいたものの冷静に嘆息した。
「やはりこうなりましたか...」
「となると、黒幕はあの男か?」
「それはわかりません...。
それよりレオルド。早速作戦に入りましょう。
できれば私の呼びかけに応じて欲しかったのですが......仕方ありません」
「ああ。それじゃあおっ始めるとするか!」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
【完結】え、別れましょう?
水夏(すいか)
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
[完結]勇者の旅の裏側で
八月森
ファンタジー
神官の少女リュイスは、神殿から預かったある依頼と共に冒険者の宿〈剣の継承亭〉を訪れ、そこで、店内の喧騒の中で一人眠っていた女剣士アレニエと出会う。
起き抜けに暴漢を叩きのめしたアレニエに衝撃を受けたリュイスは、衝動のままに懇願する。
「私と一緒に……勇者さまを助けてください!」
「………………はい?」
『旅半ばで魔王の側近に襲われ、命を落とす』と予見された勇者を、陰から救い出す。それが、リュイスの持ち込んだ依頼だった。
依頼を受諾したアレニエはリュイスと共に、勇者死亡予定現場に向かって旅立つ。
旅を通じて、彼女たちは少しずつその距離を縮めていく。
しかし二人は、お互いに、人には言えない秘密を抱えていた。
人々の希望の象徴として、表舞台を歩む勇者の旅路。その陰に、一組の剣士と神官の姿が見え隠れしていたことは、あまり知られていない。
これは二人の少女が、勇者の旅を裏側で支えながら、自身の居場所を見つける物語。
・1章には勇者は出てきません。
・本編の視点は基本的にアレニエかリュイス。その他のキャラ視点の場合は幕間になります。
・短い場面転換は―――― 長い場面転換は*** 視点切替は◆◇◆◇◆ で区切っています。
・小説家になろう、カクヨム、ハーメルンにも掲載しています。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる