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異世界の章:第一部 魔物の森編
ep18 再会
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兵士達への挨拶を終え、討伐軍の集会を後にしたユイリスとエヴァンスは、案内された別室に入る。
ユイリスは椅子に腰掛ける間もなく抑えられずに問いかけた。
「エヴァンス!あなたは本当に今までどこで何をしていたの!?」
「ユイ、まずは落ち着きなよ。コルトレーン様も困っているだろ?」
「ああ、いや。...俺は席を外しましょう」
扉付近に立っていたコルトレーンはすぐに部屋から退出した。
部屋にはユイリスとエヴァンスだけとなる。
エヴァンスは、室の真ん中に設置された背の低いテーブルの前にある椅子に、ゆっくりと腰掛けた。
ユイリスはうつむきながら黙っていたが、顔を上げると、いぶかしげな視線をエヴァンスにぶつける。
「ねえエヴァンス!あなたは...」
「だからユイ、まずは落ち着こうよ?さあ、君もそこに座ったら?」
釈然としないユイリスは、テーブルを挟んだエヴァンスの正面の椅子へ肩をそびやかして機敏に移動し、浅く腰掛けた。
エヴァンスは相変わらずのリラックスした調子で口を開く。
「ユイ。元気そうで良かったよ」
「エヴァンス!あなたはもう......!でも、あなたも元気そうで良かったわ...!」
「僕を心配してくれていたんだね?」
「当たり前じゃない!」
「天下の勇者様にこんなに心配してもらってたなんて、僕は幸せ者だね」
「もう!ふざけるのはやめて!」
「ああごめんごめん!まあ何にせよ、こうやってまたユイと会えて、さらには共に戦えるなんて本当に嬉しい限りだよ」
ここで言葉を切ると、エヴァンスは手で口を覆いながら、さりげなく、だが鋭い眼つきでユイリスを凝視する。
「......エヴァンス?どうしたの?」
「あ、ああ、いや、なんでもないよ...!」
それから二人は、一年前、魔王との戦いを終えて別れてから今日に至るまでの経緯を共に語り合った。
ユイリスは、先の大戦を終えて半年間は聖教会に戻り静養していたが、半年前から再び旅をしているという。
それはちょうど、ヘンドリクス国内の各地で不審な事件が起き始めた頃であり、魔王軍の残党の噂が彼女の耳にも入った頃である。
彼女は妙な胸騒ぎを感じ、不審な事件が起きた場所に赴いては調べて回っていたのだった。
一方、エヴァンスは、ある魔法大学の研究室に籠り、魔導研究に没頭していたというが、その詳細は語らなかった。
「そうか。ユイは相変わらず勇者なんだね」
「エヴァンスこそ賢者の名に恥じない熱心な魔導研究者ね」
そう言い合った時には、隔てた時間もすっかり忘れたように、二人はかつて共に戦っていた頃のように打ち解けていた。
そこへ、コンコンとドアをノックする音が鳴る。
二人は軽く視線を交わし、
「どうぞ」
ユイリスが応えた。
扉が開くと、再びコルトレーンが、今度はもう一人の男を伴って入って来た。
コルトレーンよりもずっと若いその男は、エヴァンスより背丈は低いが褐色の精悍そうな男で、鍛え上げられながらも細くしっかりと締まった体を備える。
耳にそっとかかるぐらいの長さのややウェーブのある黒髪、額の下にはやけに鋭い眼つきが光っていた。
コルトレーンの表情はなぜか心持ち曇っている。
「勇者様。賢者様。旧交を温めている所申し訳ない。その......」
「コルトレーン殿。どうしたんですか?」
「実は、魔物の森への討伐任務......明日出発となった!」
「明日?それはまた急ですね」
「それともう一つあるんだ......。今回の任務、私が別任務のため参加することができなくなり、代わりに討伐軍の指揮をこちらの副騎士長マイルスが執ることとなった」
コルトレーンの言葉を受け、エヴァンスは妙に落ち着きながら副騎士長を軽く一瞥し、すぐにコルトレーンに視線を戻して余裕のある表情で答えた。
「コルトレーン様。僕達は問題ありませんよ。これでもかつて魔王と戦った賢者と勇者ですからね。
それでは、僕達は副騎士長マイルス様の指揮の下、最善を尽くす事をお約束いたします。ねえユイ?」
「ええ。私達は問題ありません。副騎士長マイルス殿。明日からはどうぞよろしくお願いします」
「これは...!賢者様!勇者様!この副騎士長マイルス、全力で任務にあたらせていただきますので何卒宜しくお願い申し上げます!」
「あーあー、そんな堅くならないでいいですよ!僕もユイも大丈夫ですから!
マイルス...様、明日からは宜しくお願いします。
それと、コルトレーン様は安心して別任務にあたってくださいね」
「賢者様。勇者様。そのお言葉、誠に感謝する。
このマイルスは優秀な男だ。私の代わりを果たすに十分過ぎるだろう。
そして勇者様と賢者様のお力添えをいただける事、改めて感謝する!」
そうして夜が明け......
鳥の囀りも落ち着き、出発の時刻となった。
空は穏やかな晴天。
勇者と賢者を伴った討伐軍は、副騎士長マイルスの指揮の下、魔物の森に向かい進軍を開始した。
ユイリスは椅子に腰掛ける間もなく抑えられずに問いかけた。
「エヴァンス!あなたは本当に今までどこで何をしていたの!?」
「ユイ、まずは落ち着きなよ。コルトレーン様も困っているだろ?」
「ああ、いや。...俺は席を外しましょう」
扉付近に立っていたコルトレーンはすぐに部屋から退出した。
部屋にはユイリスとエヴァンスだけとなる。
エヴァンスは、室の真ん中に設置された背の低いテーブルの前にある椅子に、ゆっくりと腰掛けた。
ユイリスはうつむきながら黙っていたが、顔を上げると、いぶかしげな視線をエヴァンスにぶつける。
「ねえエヴァンス!あなたは...」
「だからユイ、まずは落ち着こうよ?さあ、君もそこに座ったら?」
釈然としないユイリスは、テーブルを挟んだエヴァンスの正面の椅子へ肩をそびやかして機敏に移動し、浅く腰掛けた。
エヴァンスは相変わらずのリラックスした調子で口を開く。
「ユイ。元気そうで良かったよ」
「エヴァンス!あなたはもう......!でも、あなたも元気そうで良かったわ...!」
「僕を心配してくれていたんだね?」
「当たり前じゃない!」
「天下の勇者様にこんなに心配してもらってたなんて、僕は幸せ者だね」
「もう!ふざけるのはやめて!」
「ああごめんごめん!まあ何にせよ、こうやってまたユイと会えて、さらには共に戦えるなんて本当に嬉しい限りだよ」
ここで言葉を切ると、エヴァンスは手で口を覆いながら、さりげなく、だが鋭い眼つきでユイリスを凝視する。
「......エヴァンス?どうしたの?」
「あ、ああ、いや、なんでもないよ...!」
それから二人は、一年前、魔王との戦いを終えて別れてから今日に至るまでの経緯を共に語り合った。
ユイリスは、先の大戦を終えて半年間は聖教会に戻り静養していたが、半年前から再び旅をしているという。
それはちょうど、ヘンドリクス国内の各地で不審な事件が起き始めた頃であり、魔王軍の残党の噂が彼女の耳にも入った頃である。
彼女は妙な胸騒ぎを感じ、不審な事件が起きた場所に赴いては調べて回っていたのだった。
一方、エヴァンスは、ある魔法大学の研究室に籠り、魔導研究に没頭していたというが、その詳細は語らなかった。
「そうか。ユイは相変わらず勇者なんだね」
「エヴァンスこそ賢者の名に恥じない熱心な魔導研究者ね」
そう言い合った時には、隔てた時間もすっかり忘れたように、二人はかつて共に戦っていた頃のように打ち解けていた。
そこへ、コンコンとドアをノックする音が鳴る。
二人は軽く視線を交わし、
「どうぞ」
ユイリスが応えた。
扉が開くと、再びコルトレーンが、今度はもう一人の男を伴って入って来た。
コルトレーンよりもずっと若いその男は、エヴァンスより背丈は低いが褐色の精悍そうな男で、鍛え上げられながらも細くしっかりと締まった体を備える。
耳にそっとかかるぐらいの長さのややウェーブのある黒髪、額の下にはやけに鋭い眼つきが光っていた。
コルトレーンの表情はなぜか心持ち曇っている。
「勇者様。賢者様。旧交を温めている所申し訳ない。その......」
「コルトレーン殿。どうしたんですか?」
「実は、魔物の森への討伐任務......明日出発となった!」
「明日?それはまた急ですね」
「それともう一つあるんだ......。今回の任務、私が別任務のため参加することができなくなり、代わりに討伐軍の指揮をこちらの副騎士長マイルスが執ることとなった」
コルトレーンの言葉を受け、エヴァンスは妙に落ち着きながら副騎士長を軽く一瞥し、すぐにコルトレーンに視線を戻して余裕のある表情で答えた。
「コルトレーン様。僕達は問題ありませんよ。これでもかつて魔王と戦った賢者と勇者ですからね。
それでは、僕達は副騎士長マイルス様の指揮の下、最善を尽くす事をお約束いたします。ねえユイ?」
「ええ。私達は問題ありません。副騎士長マイルス殿。明日からはどうぞよろしくお願いします」
「これは...!賢者様!勇者様!この副騎士長マイルス、全力で任務にあたらせていただきますので何卒宜しくお願い申し上げます!」
「あーあー、そんな堅くならないでいいですよ!僕もユイも大丈夫ですから!
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それと、コルトレーン様は安心して別任務にあたってくださいね」
「賢者様。勇者様。そのお言葉、誠に感謝する。
このマイルスは優秀な男だ。私の代わりを果たすに十分過ぎるだろう。
そして勇者様と賢者様のお力添えをいただける事、改めて感謝する!」
そうして夜が明け......
鳥の囀りも落ち着き、出発の時刻となった。
空は穏やかな晴天。
勇者と賢者を伴った討伐軍は、副騎士長マイルスの指揮の下、魔物の森に向かい進軍を開始した。
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