導きの暗黒魔導師

根上真気

文字の大きさ
上 下
4 / 160
プロローグ

ep2 異世界転移したけど

しおりを挟む
 ......
 
「......はっ!」 

 俺は目を覚ました。
 視線の先には、見たこともないような満天の星空が広がっている。

 ここは?
 山かどこかか?
 これは神隠し?

 そんな事を思いながら、俺はむくりと身体を起こすと、辺りを見回した。
 どうやら森の中のようだ。
 すぐ目の前には、月明かりに照らされた美しい湖が広がっている。
 不思議と酒はすっかり抜けていて、妙に頭は冴えている。

 ふいに俺はハッと気づく。
 俺の手には、あの本が握られていた。

 この本は一体......。 

 いや、それよりもあの女はどこ行った?
 確か、俺にある場所へ行ってもらうとか言ってたよな。
 ということはアイツの仕業なのか?
 ダメだ。さっぱりわからない。

「お~い」

「ん?何か、聞こえた?」と思ったら、突然、手に持っていた本がバタバタバタバタっとせわしなく勝手に動き出し、フワ~と宙に浮かび上がった。

「あ、どうも。コーロ様」

「......え?なに?本が喋った?」

「大丈夫ですか?ワタシですよ、ワ タ シ」
「...その声、公園で声かけて来た女?」
「そうです、そうです」
「......とにかく、わけがわからないんですが」

「いやはや、転移の際に予想以上の力を使ってしまいまして、こんな姿で失礼します」

「えっ、じゃあやっぱ、あんたなのか?その姿って、あんた本なのか!?てか何で本が喋ってるんだ?転移って何だよ!?おい!?」

「まあまあ、とりあえず落ち着いてください」
「いや落ち着けねーよ!わけがわからねーよ!ここ一体どこだよ!?」

「...コホン。えーと、では結論から言いますね。ワタシ達は、異世界転移したんですよ。ほらラノベとかでよくある、流行りの」

「異世界転移?」

「そうです。ここは日本ではありません。ここは異世界です。そう、夢のファンタジー世界なんですよ!」

 コイツ、何言ってるんだ?頭大丈夫か?
 いやでも、本が勝手に宙に浮いて喋ってるもんな...。
 手品にも見えないし...。

 俺は目の前の事、この女(本?)が言っている事、今俺の身に起きている何もかもを受け止められずにいた。

「あれ?おかしいですね~?日本の若者は異世界転移といったものには明るいと聞き及んでおりましたが、はて、これはいかに?」 

「ああもうわかった!わからんけど!......で、ここはどんな所で、俺は何でここに連れて来られたんだ?」

「えーと、それはですねぇ......あれ?思い出せない?」
「はっ?」

「何か大事な情報が欠けてしまって......て、あーっっ!!」
「なんだ?どうしたんだ?」

「も、申し訳ございません!コーロ様!その、あの、誠に、申し上げにくい事なのですが......」

「お、おい、なんだよ?」

「それについての情報が書かれたページが、その、ビリっと、破れ落ちてしまいましたー!!」

「はあ?それで?」
「お、おそらく、転移の際かと存じます」

「いや、だから、俺がここに来た理由は?目的は?これからどーすればいいの?」

「えへ、えへへ......」
「おい、おまえ......」

「ま、まあ、せっかくですから、異世界ライフを楽しもうじゃあ~りませんか!?こんな機会、滅多にないですよぉ~!?」

「ふ、ふ、ふざけんなーっっ!!!」

 結局、俺はどんな理由があって、何の目的なのかもさっぱりわからずに、唐突に、この異世界とやらに連れて来られたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

【完結】え、別れましょう?

水夏(すいか)
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

[完結]勇者の旅の裏側で

八月森
ファンタジー
神官の少女リュイスは、神殿から預かったある依頼と共に冒険者の宿〈剣の継承亭〉を訪れ、そこで、店内の喧騒の中で一人眠っていた女剣士アレニエと出会う。                                      起き抜けに暴漢を叩きのめしたアレニエに衝撃を受けたリュイスは、衝動のままに懇願する。               「私と一緒に……勇者さまを助けてください!」                                        「………………はい?」                                                   『旅半ばで魔王の側近に襲われ、命を落とす』と予見された勇者を、陰から救い出す。それが、リュイスの持ち込んだ依頼だった。                                                       依頼を受諾したアレニエはリュイスと共に、勇者死亡予定現場に向かって旅立つ。                             旅を通じて、彼女たちは少しずつその距離を縮めていく。                                          しかし二人は、お互いに、人には言えない秘密を抱えていた。                                         人々の希望の象徴として、表舞台を歩む勇者の旅路。その陰に、一組の剣士と神官の姿が見え隠れしていたことは、あまり知られていない。                                                これは二人の少女が、勇者の旅を裏側で支えながら、自身の居場所を見つける物語。                            ・1章には勇者は出てきません。                                                     ・本編の視点は基本的にアレニエかリュイス。その他のキャラ視点の場合は幕間になります。                    ・短い場面転換は―――― 長い場面転換は*** 視点切替は◆◇◆◇◆ で区切っています。                    ・小説家になろう、カクヨム、ハーメルンにも掲載しています。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!

こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。 ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。 最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。 だが、俺は知っていた。 魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。 外れスキル【超重量】の真の力を。 俺は思う。 【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか? 俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

処理中です...