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ep41 十九淵裡尾菜⑪
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呆気に取られるナゴムと糸緒莉と長穂。
だが、いずれにしても誤解は解いておく必要がある。
ナゴムは糸緒莉と視線を交わし合うと、取り乱す裡尾菜におずおずと説明を始める。
「裡尾菜さん。俺はこのふたり......糸緒莉とも長穂ちゃんとも付き合ってないです。もちろん彼女もいません」
「そ、そうよ。私も長穂ちゃんもナゴムくんの彼女じゃない。私たちは友達よ」
「そ、そそそうです。ナゴムさんとわたしたちはお友達です」
糸緒莉と長穂も言葉を重ねた。
裡尾菜はいぶかしそうに糸緒莉と長穂を見やってから、ナゴムに視線を運んで口をひらく。
「じゃあ、なんで私を拒否したんですか?」
「いや、拒否したわけではなくて、ただ妖同士の恋愛はメンドクサイから個人的にナシでして。他意はないんです...」
「じゃあ......なんでこのふたりは私たちに付いて来たんですか?」
裡尾菜は糸緒莉と長穂をピッと指さす。
「それはさっき裡尾菜さんに言われて気づいたから、俺もわからないけど......なんか理由があるの?」
ナゴムは糸緒莉と長穂に振った。
糸緒莉は長穂に無言で(私に任せて)と一瞥してから説明を始める。
「もともと今日は長穂ちゃんと二人でご飯行く予定だったの。だからナゴムくんを見かけたのは偶然よ。ナゴムくんに付いていったのは......」
「付いていったのは?」
「美人局に引っかかっているんじゃないかって思って」
「はぁ??私が美人局だって??」
たまらず裡尾菜が口を挟んだ。
が、よくよく考えてみると、
(でも、嵌めようとしていたのは事実だから、ある意味では美人局なのかな?)
そう思えなくもなかった。
しかし、
(いや違う違う!私はただお母様へ対抗するためにやっただけなんだから!)
すぐに思い直した。
裡尾菜の心は忙しい。
「とりあえず、糸緒莉たちの事情はわかったよ」
ナゴムはひとつため息をついた。
それからおもむろに裡尾菜の方へ向くと、もっとも気になっていた問題へ舵をきる。
「で、裡尾菜さんはなんで俺が妖ってことを知っていたんですか?俺が天狗だってことを知ってるのって、地元以外じゃ糸緒裡と長穂ちゃんだけなんで」
「えっ」
裡尾菜はタラ~っと冷や汗を浮かべた。
「さっき、微妙にスルーされてましたけど、俺が一番気になるのはそこです。
ひょっとして、裡尾菜さんって、うちの神社というか実家となにか関係していたりします?」
ナゴムの質問は鋭かった。
実は、彼はこういう所の思考と感覚が優れていた。
それは現在の営業職でも活かされていて、事実、営業成績も悪くなかった。
とはいっても恋や恋愛では活かしきれずに成果を上げられていないが。
「そ、それは......」
口ごもる裡尾菜。
彼女の反応を見るにつけ、ナゴムは自分の読みが正しいことを確信する。
が、そのまま問い詰めることはせず、
「もしかして、なにか事情があるんですか?あるんなら、聞かせてもらえませんか?」
やさしく理解を示そうと歩み寄る姿勢で続けた。
「ええっと、その......」
いくらプライドの高い高慢な裡尾菜とはいえ、自分の目的のために他人に迷惑をかけている事は十二分に理解している。
しかも今まさしく迷惑をかけた張本人から、嵌めようとした張本人から、理解の手を差し伸べられているのだ。
もはや彼女にできる選択はひとしかなかった。
「実は......」
十九淵裡尾菜は、ナゴムたちにひととおりの事情を説明した。
だが、いずれにしても誤解は解いておく必要がある。
ナゴムは糸緒莉と視線を交わし合うと、取り乱す裡尾菜におずおずと説明を始める。
「裡尾菜さん。俺はこのふたり......糸緒莉とも長穂ちゃんとも付き合ってないです。もちろん彼女もいません」
「そ、そうよ。私も長穂ちゃんもナゴムくんの彼女じゃない。私たちは友達よ」
「そ、そそそうです。ナゴムさんとわたしたちはお友達です」
糸緒莉と長穂も言葉を重ねた。
裡尾菜はいぶかしそうに糸緒莉と長穂を見やってから、ナゴムに視線を運んで口をひらく。
「じゃあ、なんで私を拒否したんですか?」
「いや、拒否したわけではなくて、ただ妖同士の恋愛はメンドクサイから個人的にナシでして。他意はないんです...」
「じゃあ......なんでこのふたりは私たちに付いて来たんですか?」
裡尾菜は糸緒莉と長穂をピッと指さす。
「それはさっき裡尾菜さんに言われて気づいたから、俺もわからないけど......なんか理由があるの?」
ナゴムは糸緒莉と長穂に振った。
糸緒莉は長穂に無言で(私に任せて)と一瞥してから説明を始める。
「もともと今日は長穂ちゃんと二人でご飯行く予定だったの。だからナゴムくんを見かけたのは偶然よ。ナゴムくんに付いていったのは......」
「付いていったのは?」
「美人局に引っかかっているんじゃないかって思って」
「はぁ??私が美人局だって??」
たまらず裡尾菜が口を挟んだ。
が、よくよく考えてみると、
(でも、嵌めようとしていたのは事実だから、ある意味では美人局なのかな?)
そう思えなくもなかった。
しかし、
(いや違う違う!私はただお母様へ対抗するためにやっただけなんだから!)
すぐに思い直した。
裡尾菜の心は忙しい。
「とりあえず、糸緒莉たちの事情はわかったよ」
ナゴムはひとつため息をついた。
それからおもむろに裡尾菜の方へ向くと、もっとも気になっていた問題へ舵をきる。
「で、裡尾菜さんはなんで俺が妖ってことを知っていたんですか?俺が天狗だってことを知ってるのって、地元以外じゃ糸緒裡と長穂ちゃんだけなんで」
「えっ」
裡尾菜はタラ~っと冷や汗を浮かべた。
「さっき、微妙にスルーされてましたけど、俺が一番気になるのはそこです。
ひょっとして、裡尾菜さんって、うちの神社というか実家となにか関係していたりします?」
ナゴムの質問は鋭かった。
実は、彼はこういう所の思考と感覚が優れていた。
それは現在の営業職でも活かされていて、事実、営業成績も悪くなかった。
とはいっても恋や恋愛では活かしきれずに成果を上げられていないが。
「そ、それは......」
口ごもる裡尾菜。
彼女の反応を見るにつけ、ナゴムは自分の読みが正しいことを確信する。
が、そのまま問い詰めることはせず、
「もしかして、なにか事情があるんですか?あるんなら、聞かせてもらえませんか?」
やさしく理解を示そうと歩み寄る姿勢で続けた。
「ええっと、その......」
いくらプライドの高い高慢な裡尾菜とはいえ、自分の目的のために他人に迷惑をかけている事は十二分に理解している。
しかも今まさしく迷惑をかけた張本人から、嵌めようとした張本人から、理解の手を差し伸べられているのだ。
もはや彼女にできる選択はひとしかなかった。
「実は......」
十九淵裡尾菜は、ナゴムたちにひととおりの事情を説明した。
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