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ep39 十九淵裡尾菜⑨
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立て続けにツッコミを入れるナゴムに、裡尾菜は微笑みながらも不意にある疑念を抱く。
(ん?この人、妖狐の私に対して、わりと普通な気がするような......え?そんな男の人いる?き、気のせいよね、きっと)
「山田さん」
「は、はい?」
「いや、はいじゃなくて」
「はいじゃなくて?」
「だからその......私たちのことです」
「はあ」
裡尾菜は笑顔を作りながらも一瞬、眉をヒクッとさせる。
おいおいなんだこのニブ男は?
バカなのか?
私に惚れてんだろ?
好きなんだろ?
付き合いたいんだろ?
どうにかなりたいんだろ?
さっさと言ってこいよ!
こっぴどくフッてやんからよ!
にわかに彼女の心にイラ立ちが募ってくる。
「あの......山田さん」
「あ、ああ~ええっと、その」
「?」
「裡尾菜さん」
「はい?」
「帰りましょうか」
「えっ」
ちょちょちょちょっとコイツ!
なに言ってんの!?
目の前に妖狐の美女がいるのよ!?
コイツ、マジでバカなの!?
まさかその歳で好き避け!?
だとしたらキモイぞおまえ!
裡尾菜の眉のヒクヒクが頻度を増していく。
「......ええっと、山田さん?帰るって?もう解散ってことですか?」
「ああ、はい。駅まで一緒に行きましょう」
山田ナゴムはニコッと微笑んできびすを返した。
(まさかの、三度目もあやかし......もう、俺はフツーにヒトの女性と恋すらもできないのか)
それはもはや、完全に諦めの極致の様相。
「そ、そうですか......」
裡尾菜はワナワナと震えはじめた。
モテまくってきた彼女にとっては、母への対抗作戦失敗以上に、プライドが傷つけられる結果だった。
よもや自分が断られる側とは思ってもみなかったから。
「あ、あの、待ってください山田さん」
裡尾菜は背を向いて歩き出したナゴムの腕を掴んだ。
(どうしても納得ができない。なんでこの人は私に......あっ!ひょっとして、この人も私がお見合い相手ってことを知っていた?いやでも、まだ先方の相手には私の事は伝えていないって言ってたし。それに知っていても、私のことを好きにならないなんてオカシイ。なんなのこの人は?)
ナゴムは振り向くと、美しい裡尾菜の困り顔が目に映った。
正直、ナゴムは内心ドキッとした。
だが、彼は彼女の手をやさしく解いて申し訳なさそうな顔をした。
「あの、裡尾菜さん。その...」
「なんですか?言いたいことがあったらハッキリ言ってください」
「俺、実は......妖との恋愛は、考えられないんです」
「は?」
裡尾菜は唖然とした。
「だから...」
「いやオメーも妖だろ?天狗だろおまえ?」
思わずツッコまずにはいられなかった裡尾菜。
ナゴムはギョッとする。
「え?なんでそれを?」
「あっ!いや!ちがくて!アハハハ......!」
裡尾菜は笑って誤魔化そうとするも、その額は冷や汗ダラダラ。
「裡尾菜さんって、俺のこと知ってたの?え?どうして?」
「い、いや~なんか、勘が当たった?的な?テヘ」
追い詰められてどうしようもなくなった裡尾菜は時代遅れのテヘペロを披露した。
「えっ」
つい先ほどまでとはえらい変わりようの裡尾菜にかたまるナゴム。
しばらくふたりが不毛なやり取りを続けていると、次第にまわりがザワついてくる。
「なんか、妖狐の美人さん、モメてない?」
「相手は彼氏?痴話喧嘩?」
ナゴムは周囲の微妙な空気を察して裡尾菜に促す。
「と、とりあえず、ヒトの姿に戻らない?ここじゃ目立ちすぎるっていうか...」
「う、うん......」
ここは裡尾菜も素直に従い、ドロンと元のスーツ姿の社会人女性に戻った。
(ん?この人、妖狐の私に対して、わりと普通な気がするような......え?そんな男の人いる?き、気のせいよね、きっと)
「山田さん」
「は、はい?」
「いや、はいじゃなくて」
「はいじゃなくて?」
「だからその......私たちのことです」
「はあ」
裡尾菜は笑顔を作りながらも一瞬、眉をヒクッとさせる。
おいおいなんだこのニブ男は?
バカなのか?
私に惚れてんだろ?
好きなんだろ?
付き合いたいんだろ?
どうにかなりたいんだろ?
さっさと言ってこいよ!
こっぴどくフッてやんからよ!
にわかに彼女の心にイラ立ちが募ってくる。
「あの......山田さん」
「あ、ああ~ええっと、その」
「?」
「裡尾菜さん」
「はい?」
「帰りましょうか」
「えっ」
ちょちょちょちょっとコイツ!
なに言ってんの!?
目の前に妖狐の美女がいるのよ!?
コイツ、マジでバカなの!?
まさかその歳で好き避け!?
だとしたらキモイぞおまえ!
裡尾菜の眉のヒクヒクが頻度を増していく。
「......ええっと、山田さん?帰るって?もう解散ってことですか?」
「ああ、はい。駅まで一緒に行きましょう」
山田ナゴムはニコッと微笑んできびすを返した。
(まさかの、三度目もあやかし......もう、俺はフツーにヒトの女性と恋すらもできないのか)
それはもはや、完全に諦めの極致の様相。
「そ、そうですか......」
裡尾菜はワナワナと震えはじめた。
モテまくってきた彼女にとっては、母への対抗作戦失敗以上に、プライドが傷つけられる結果だった。
よもや自分が断られる側とは思ってもみなかったから。
「あ、あの、待ってください山田さん」
裡尾菜は背を向いて歩き出したナゴムの腕を掴んだ。
(どうしても納得ができない。なんでこの人は私に......あっ!ひょっとして、この人も私がお見合い相手ってことを知っていた?いやでも、まだ先方の相手には私の事は伝えていないって言ってたし。それに知っていても、私のことを好きにならないなんてオカシイ。なんなのこの人は?)
ナゴムは振り向くと、美しい裡尾菜の困り顔が目に映った。
正直、ナゴムは内心ドキッとした。
だが、彼は彼女の手をやさしく解いて申し訳なさそうな顔をした。
「あの、裡尾菜さん。その...」
「なんですか?言いたいことがあったらハッキリ言ってください」
「俺、実は......妖との恋愛は、考えられないんです」
「は?」
裡尾菜は唖然とした。
「だから...」
「いやオメーも妖だろ?天狗だろおまえ?」
思わずツッコまずにはいられなかった裡尾菜。
ナゴムはギョッとする。
「え?なんでそれを?」
「あっ!いや!ちがくて!アハハハ......!」
裡尾菜は笑って誤魔化そうとするも、その額は冷や汗ダラダラ。
「裡尾菜さんって、俺のこと知ってたの?え?どうして?」
「い、いや~なんか、勘が当たった?的な?テヘ」
追い詰められてどうしようもなくなった裡尾菜は時代遅れのテヘペロを披露した。
「えっ」
つい先ほどまでとはえらい変わりようの裡尾菜にかたまるナゴム。
しばらくふたりが不毛なやり取りを続けていると、次第にまわりがザワついてくる。
「なんか、妖狐の美人さん、モメてない?」
「相手は彼氏?痴話喧嘩?」
ナゴムは周囲の微妙な空気を察して裡尾菜に促す。
「と、とりあえず、ヒトの姿に戻らない?ここじゃ目立ちすぎるっていうか...」
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