上 下
10 / 43

ep10 雲ケ畑糸緒莉⑧

しおりを挟む
 では、雲ヶ畑糸緒莉の方はどうであろうか。
 ナゴムとのお食事デートの翌々日、日曜日の夜......。


「はぁ!?マッチングの相手もあやかしやって!?どんな確率やねん!
 ほんでデートの終わりは警察って!どんなデートやねん!」

 糸緒莉のスマホからわーわーと元気な声が響いていた。

「でもなんかドラマチックやん!運命みたいやん!いっそ付きおうてみたらええんちゃう??」

「ドラマチックって......物は言いようね。でも、あやかし同士の恋愛なんてゼッタイありえないから!冗談でもやめてよね!」

「ほんでもしーちゃんさぁ?天狗の山田くんはええヤツやん」

「それは......うん」

「あやかしの多くは、本当に近しい者以外に対しては徹底して個人主義。ましてや相手がヒトとなると特にな。せやから人助けするあやかし自体珍しいのに。
 ましてや天狗の山田くんは、しーちゃんと同じように自分があやかしってことを隠していながらも、人助けのために人前で堂々とあやかしの力を使ったんやろ?
 自分らめずらしモン同士の似たモン同士やんか」

「似た者同士なのかはわからないけれど......心の優しい人なんだとは思う。それでも、あやかし同士はイヤなの!」

「ガンコやなぁ。でもまあ、恋愛や結婚となるとあやかし同士がホンマにメンドクサイのは事実やけどな。お互いの家やら家族やら風習やらしきたりやら。ウチも正直メンドイ思うわ」

「私はフツーに仕事してフツーに恋してフツーに恋愛したいの」

「しーちゃん、こっちじゃ荒れとったもんな~」

「もう昔のハナシはやめて!」

 はぁ~とため息をついて、スウェット姿の糸緒莉はベッドにゴロンとなる。

「でも、しーちゃんがマッチングアプリ始めたって聞いてホンマびっくりしたわぁ。まさか、泣く子もだまる最恐のデンジャラススパイダークイーンが...」

「だからもうあの頃のハナシはやめてって!東京に来てまで聞きたくないわ!」

「ゴメンゴメン!そんな怒らんといてーな!」

「もうっ!......まっ、でも、マッチングアプリはもうやめるけれどね」

「なんやもうやめてまうのかぁー。またしーちゃんのオモロいネタ期待しとったのに」

「そんなことのためにわざわざやらないわよ」

「ほんじゃ次は合コンでもどや?」

「合コン?」

「あっ、ええこと思いついた!」

「なに?とつぜん...」

「その天狗の山田くんとお互いに友達を連れてきて飲み会を開くんや!」

「な、なんで山田くんと!?」

「せっかく都会で出会ったあやかし同士なんや!協力しあってイイ出会い見つけりゃええやん!」

「そんなこと言っても、山田くんとはまだ出会ってばかりで友達でもないわよ?」

「だったらトモダチになったらええやん!あやかし同士、困ってることもようわかるやろうから、お互いにメリットも大きいんちゃう?」

「うーん」

「まっ、またオモロいことになったらすぐに教えてや!」

「あんた、絶対にオモシロがってるでしょ」
「ちゃうちゃう!オーエンやオーエン!」
 
「まあいいわよ」

「にゃはは。ほな、ウチあした早いからもう寝なアカンねん。また連絡するわ!」

「うん。またね。アケミ」

「おやすみ~」
「おやすみ」

 スマホを脇に置くと、糸緒莉は仰向けになったままボンヤリする。

「山田くんと友達......か。そういえば山田くんて、地元ではどんな感じだったのかしら?まさか私のような感じではないだろうけど。会社ではどうなのかしら?
 ......て、なんだか私が山田くんのこと気になってるみたいじゃない!明日からまた一週間始まるんだから、もう寝ないと!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美少女アンドロイドが色じかけをしてくるので困っています~思春期のセイなる苦悩は終わらない~

根上真気
キャラ文芸
4サイト10000PV達成!不登校の俺のもとに突然やって来たのは...未来から来た美少女アンドロイドだった!しかもコイツはある目的のため〔セクシープログラム〕と称して様々な色じかけを仕掛けてくる!だが俺はそれを我慢しなければならない!果たして俺は耐え続けられるのか?それとも手を出してしまうのか?これは思春期のセイなる戦い...!いざドタバタラブコメディの幕が切って落とされる!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

小説版つみねこ きさらぎ駅編~不知火陽太の過去~

奈雲
キャラ文芸
【当たり前がなくなる日。】 不知火陽太少年は両親と弟に囲まれ幸せに過ごしてきた。しかしその当たり前の日常がある日突然音を立てて崩れ落ちていく。 強盗殺人犯によって両親を殺され、家に放火され弟を焼き殺された陽太は心に深い傷を負ってしまった。 日々他人からの心内言葉で心を閉ざしていた彼のもとに現れたのは【大悪魔 サタン】。 これはひょんなことから大悪魔サタンを呼び出してしまった陽太少年が体験する楽しくてちょっぴり怖くて不思議な物語。

超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太
キャラ文芸
 これは廃部を賭けて大会に挑む高校生たちの物語。  挑むは★超絶! 悶絶! 料理バトル!★  そのルールは単純にて深淵。  対戦者は互いに「料理」「食材」「テーマ」の3つからひとつずつ選び、お題を決める。  そして、その2つのお題を満たす料理を作って勝負するのだ!  例えば「料理:パスタ」と「食材:トマト」。  まともな勝負だ。  例えば「料理:Tボーンステーキ」と「食材:イカ」。  骨をどうすればいいんだ……  例えば「料理:満漢全席」と「テーマ:おふくろの味」  どんな特級厨師だよ母。  知力と体力と料理力を駆使して競う、エンターテイメント料理ショー!  特売大好き貧乏学生と食品大会社令嬢、小料理屋の看板娘が今、ここに挑む!  敵はひとクセもふたクセもある奇怪な料理人(キャラクター)たち。  この対戦相手を前に彼らは勝ち抜ける事が出来るのか!?  料理バトルものです。  現代風に言えば『食〇のソーマ』のような作品です。  実態は古い『一本包丁満〇郎』かもしれません。  まだまだレベル的には足りませんが……  エロ系ではないですが、それを連想させる表現があるのでR15です。  パロディ成分多めです。  本作は小説家になろうにも投稿しています。

天之琉華譚 唐紅のザンカ

ナクアル
キャラ文芸
 由緒正しい四神家の出身でありながら、落ちこぼれである天笠弥咲。 道楽でやっている古物商店の店先で倒れていた浪人から一宿一飯のお礼だと“曰く付きの古書”を押し付けられる。 しかしそれを機に周辺で不審死が相次ぎ、天笠弥咲は知らぬ存ぜぬを決め込んでいたが、不思議な出来事により自身の大切な妹が拷問を受けていると聞き殺人犯を捜索し始める。 その矢先、偶然出くわした殺人現場で極彩色の着物を身に着け、唐紅色の髪をした天女が吐き捨てる。「お前のその瞳は凄く汚い色だな?」そんな失礼極まりない第一声が天笠弥咲と奴隷少女ザンカの出会いだった。

新・八百万の学校

浅井 ことは
キャラ文芸
八百万の学校 其の弐とはまた違うお話となっております。 十七代目当主の17歳、佐野翔平と火の神様である火之迦具土神、そして翔平の家族が神様の教育? ほんわか現代ファンタジー! ※こちらの作品の八百万の学校は、神様の学校 八百万ご指南いたしますとして、壱巻・弐巻が書籍として発売されております。 その続編と思っていただければと。

アタシをボランチしてくれ!~仙台和泉高校女子サッカー部奮戦記~

阿弥陀乃トンマージ
キャラ文芸
「アタシをボランチしてくれ!」  突如として現れた謎のヤンキー系美少女、龍波竜乃から意味不明なお願いをされた、お団子頭がトレードマークのごくごく普通の少女、丸井桃。彼女の高校ライフは波乱の幕開け!  揃ってサッカー部に入部した桃と竜乃。しかし、彼女たちが通う仙台和泉高校は、学食のメニューが異様に充実していることを除けば、これまたごくごく普通の私立高校。チームの強さも至って平凡。しかし、ある人物の粗相が原因で、チームは近年稀にみる好成績を残さなければならなくなってしまった!  桃たちは難敵相手に『絶対に負けられない戦い』に挑む!  一風変わった女の子たちによる「燃え」と「百合」の融合。ハイテンションかつエキセントリックなJKサッカーライトノベル、ここにキックオフ!

処理中です...