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終章
ep165 エレサ
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「......」
一同は茫然としていた。
あまりにも突然すぎだ。
確かに勇者の一撃を受けたクローだったが、その後カレンによる治療は行われている。
実際、数日前にカレンが訪れた時は、元気とは言わないまでも問題なく彼は生きていた。
「な、なぜなんだ......」
がっくりと肩を落とすカレンへ、不幸に不幸を注ぎ込んだような泣き顔のエレサが、ゆらりと振り向いた。
「ゆうしゃが、ころしたの?」
「そ、それは違う!私が確かに治癒魔法を施した!」
「でも、クローをたおしてつかまえたのはゆうしゃだよね」
「それは、そうだが......」
「おまえがゆうしゃ?」
エレサは暗い眼をゆらっとアレスに向けた。
「おまえがころしたの?」
「......」
勇者アレスは何も答えなかった。
転瞬、フロアがゴゴゴゴゴッと地震のように揺れ始める。
「なんだ?」
アイが疑問を口にした次の瞬間。
ドォォォォォォォォォォン!!!!
謎の黒光が迸り大爆発が起こった。
数分後......。
瓦礫の下からガラガラと皆が姿を見せる。
「な、なにが起こったんだ!?」
辺りを見た瞬間、一同は驚愕した。
なんと、一帯の大地がクレーターのようにぼこっと抉られ、剥き出しになった地下牢は粉々に崩壊していた。
「貴様がやったのか」
誰よりも先立って立ち上がっていた勇者アレスはある者へ剣を向けていた。
彼の視線の先には......クローの遺体を抱いたエレサが立っていた。
だが、彼女の様子は明らかに違う。
髪の毛は不気味にふわふわと浮き上がり、涙に濡れた双眼は異様な光をたたえている。
そして彼女の全身から......邪悪に満ちた黒い魔力が溢れていた。
「ユウシャ......コロス」
変わり果てたエレサの姿を目の当たりにしてシヒロが悲痛にゆがむ。
「え、エレサさん!?ど、どうしちゃったんですか!?」
「シヒロ......ワタシがユウシャをコロス」
「な、なにを言ってるんですか!?」
「ワタシが必ず憎きユウシャをコロス。だから安心シロ」
「エレサさん!?」
「それとカレン」
エレサはカレンに視線を運んだ。
「オマエとはトモダチになったと思ってイタ」
「エレサ、なにを...」
「でも違った。オマエはワタシを裏切った」
「ち、違う!私は裏切ってなどいない!」
「ユウシャを殺ス。カレン。オマエも殺ス」
「なっ!」
クローを抱えたエレサの身体がふわ~っと浮上する。
その姿はまるで、この地に降臨せし闇の女王のよう。
「でも、今は大事なヒトを抱えてイル。ワタシの大切なヒト。愛するヒト......。だから次に会う時に必ず殺ス。それまで待ってイロ」
邪悪なダークエルフを見上げ、男が叫んだ。
「いいぞエレサァァァ!!よくやったぜぇ!!」
それはキラースだった。
地下牢が崩壊したことにより、キラースを含め重罪犯が野に放たれていた。
「シャバだぜぇぇぇ!!」
囚人たちが狂喜に湧いた。
「チッ!犯罪者どもが!兄様!奴らを...」
カレンは兄に呼びかけ奴らをひっ捕らえようとする。
するとキラースがエレサへ命令するように叫んだ。
「おいエレサァァァ!!テメーはオレのオモチャだぁ!!勇者と妹を殺っちまえ!」
「イイぞぉ!殺っちまえぇぇぇ!!」
呼応して重罪犯たちも野蛮に騒いだ。
咄嗟にトレブルとブーストがシヒロのもとへ駆け寄る。
「嬢ちゃん!危険だぜ!」
「想定外だらけだな...」
当惑を隠せないアイもシヒロのそばへ歩み寄る。
「クローが死に、エレサがおかしくなり、地下牢が崩壊......イレギュラーにもほどがある」
一同は茫然としていた。
あまりにも突然すぎだ。
確かに勇者の一撃を受けたクローだったが、その後カレンによる治療は行われている。
実際、数日前にカレンが訪れた時は、元気とは言わないまでも問題なく彼は生きていた。
「な、なぜなんだ......」
がっくりと肩を落とすカレンへ、不幸に不幸を注ぎ込んだような泣き顔のエレサが、ゆらりと振り向いた。
「ゆうしゃが、ころしたの?」
「そ、それは違う!私が確かに治癒魔法を施した!」
「でも、クローをたおしてつかまえたのはゆうしゃだよね」
「それは、そうだが......」
「おまえがゆうしゃ?」
エレサは暗い眼をゆらっとアレスに向けた。
「おまえがころしたの?」
「......」
勇者アレスは何も答えなかった。
転瞬、フロアがゴゴゴゴゴッと地震のように揺れ始める。
「なんだ?」
アイが疑問を口にした次の瞬間。
ドォォォォォォォォォォン!!!!
謎の黒光が迸り大爆発が起こった。
数分後......。
瓦礫の下からガラガラと皆が姿を見せる。
「な、なにが起こったんだ!?」
辺りを見た瞬間、一同は驚愕した。
なんと、一帯の大地がクレーターのようにぼこっと抉られ、剥き出しになった地下牢は粉々に崩壊していた。
「貴様がやったのか」
誰よりも先立って立ち上がっていた勇者アレスはある者へ剣を向けていた。
彼の視線の先には......クローの遺体を抱いたエレサが立っていた。
だが、彼女の様子は明らかに違う。
髪の毛は不気味にふわふわと浮き上がり、涙に濡れた双眼は異様な光をたたえている。
そして彼女の全身から......邪悪に満ちた黒い魔力が溢れていた。
「ユウシャ......コロス」
変わり果てたエレサの姿を目の当たりにしてシヒロが悲痛にゆがむ。
「え、エレサさん!?ど、どうしちゃったんですか!?」
「シヒロ......ワタシがユウシャをコロス」
「な、なにを言ってるんですか!?」
「ワタシが必ず憎きユウシャをコロス。だから安心シロ」
「エレサさん!?」
「それとカレン」
エレサはカレンに視線を運んだ。
「オマエとはトモダチになったと思ってイタ」
「エレサ、なにを...」
「でも違った。オマエはワタシを裏切った」
「ち、違う!私は裏切ってなどいない!」
「ユウシャを殺ス。カレン。オマエも殺ス」
「なっ!」
クローを抱えたエレサの身体がふわ~っと浮上する。
その姿はまるで、この地に降臨せし闇の女王のよう。
「でも、今は大事なヒトを抱えてイル。ワタシの大切なヒト。愛するヒト......。だから次に会う時に必ず殺ス。それまで待ってイロ」
邪悪なダークエルフを見上げ、男が叫んだ。
「いいぞエレサァァァ!!よくやったぜぇ!!」
それはキラースだった。
地下牢が崩壊したことにより、キラースを含め重罪犯が野に放たれていた。
「シャバだぜぇぇぇ!!」
囚人たちが狂喜に湧いた。
「チッ!犯罪者どもが!兄様!奴らを...」
カレンは兄に呼びかけ奴らをひっ捕らえようとする。
するとキラースがエレサへ命令するように叫んだ。
「おいエレサァァァ!!テメーはオレのオモチャだぁ!!勇者と妹を殺っちまえ!」
「イイぞぉ!殺っちまえぇぇぇ!!」
呼応して重罪犯たちも野蛮に騒いだ。
咄嗟にトレブルとブーストがシヒロのもとへ駆け寄る。
「嬢ちゃん!危険だぜ!」
「想定外だらけだな...」
当惑を隠せないアイもシヒロのそばへ歩み寄る。
「クローが死に、エレサがおかしくなり、地下牢が崩壊......イレギュラーにもほどがある」
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