しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根上真気

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魔剣使いの闘い~狂戦士編

ep159 収監

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 * * *


「ここは......」

 目が覚めると、手枷てかせをはめられ牢屋に閉じ込められていた。
 勇者にやられてそのまま捕えられたようだ。

「でも、生きてはいるのか......」

 むしろ勇者の一撃を浴びて生きていることが不思議だ。
 
「いや、生かされたのか」

 そうだ。
 あえて死なないように手加減されたんだ。
 奴は言っていた。
 魔剣使いは「捕縛対象」だと。
 そういえばカレンも同じことを言っていたよな。

「でも、生きているなら......」

 逃げられるチャンスはある。
 謎の声の力を借りれば、それこそ空間転移で外に送ってもらうこともできる。

『おい』

 ......また返事がないな。

『オイ!今ピンチなんだ!お前の力が必要なんだ!』

 やっぱりダメだ。
 一体あいつはどうしたんだ?
 眠ってしまったのか?
 それとも消えた?
 
「クソッ!」

 謎の声の力を借りられないのなら八方塞がりだ。
 いや、剣を出せば何かできるかも!

「〔グラディウス〕」

 なぜだ?
 なんで剣が出てこないんだ? 
〔魔導剣〕は俺が気を失ったりすると自然と戻るはずなのに。

「この手枷のせいか......」

 そりゃそうだよな。
 収監者が自由に能力を使えたら意味がない。
 となると、もう手立てはない。

「どうすることもできないのか......」

「よーよー魔剣使いさんよぉ」

 なんだ?
 誰の声だ?
 別の牢屋の収監者か?
 いや、それより...俺を知っている?

「オレが誰かわからねえのか?冷てえな~最近会ったばっかじゃねーか」

「その声。お前は......キラースか?」

「御名答!」

 そうか。
 カレンが国際平和維持軍に連行するって言ってたよな。
 同じフロアに収監されていたのか。

「魔剣使いも運がワリーなぁ。カレンちゃんとお友達じゃなかったのかよ?」

「......」

「オレと喋る気はねえか。いーぜいーぜ。なら勝手に喋っててやる。ここは重罪人を収監している地下牢獄らしい。まず脱獄は不可能だそうだ」

 重罪人?地下牢獄?
 ......どうやら魔剣使いはキラースと同レベルの危険人物と認識されているんだな。

「ちなみにシヴィスの奴もいるぜ?」

「ヤツもいるのか!?」

「やっと反応しやがったな。入れ違いで別フロアに移動したけどな」

 俺が倒してきたフリーダムの幹部たちと同じ監獄に捕えられているのか。
 とんだブラックジョークだな。
 まるで笑えない。

「おっと、誰か来るみたいだぜ」

 遠くから、ガチャ、コツコツコツ......と音が聞こえてきた。
 いったい誰が来るのか?

「クロー」

 格子の向こうから俺を呼ぶ声が。
 知っている女の声だ。

「目覚めたようだな」

 格子越しにカレンの姿が現れた。

「傷も塞がっているみたいで良かった」

 傷?そうだ。
 俺は勇者の一撃をモロに被弾した。
 いくら加減されたとはいえ怪我を負っているはずだ。
 なのにそれがない。

「カレンが、治癒してくれたのか?」

「兄様には反対されたが」

「そうか。ありがとう」

 俺の謝意にカレンは複雑な表情を浮かべた。

「すまない」

「なぜ謝るんだ?」

「だ、だって」

「カレンにはなんの非もない。というか誰の責任でもない。勇者もやるべきことをやっただけだろ」

「クロー......」

 カレンは目を伏せると、懐からこっそりと紙片を出して格子の隙間からスーッと入れてきた。
 俺はそれを手に取ると、こう書かれていた。
 
  ジェイズが魔剣使い解放のために動く。
  私も出来る限りなんとかする。
  だからもう少しだけ待て。

「そうか......」

 俺はあらためてカレンの顔を見た。
 彼女は必死な目をしていた。
 
「わかった」

 俺は一言だけ言ってうなずいた。
 カレンは目で頷くと、クルッときびすを返して歩きだした。

「おいおいカレンちゃん!オレには一言もねえのかよ?」

 キラースが騒いだが、カレンはまったくの無反応でそのまま立ち去っていった。
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