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魔剣使いの闘い~狂戦士編

eo153 戦争②

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 *  

 戦闘が始まった。
 喚声かんせいと衝撃音が鳴り渡る。
 土煙が舞い上がり地響きのような音が重々しく響く。

特殊技能スペシャリティ〔ニュンパグレイズ〕」

 俺は嵐の如く縦横無尽に次から次へと敵を斬り払う。
 物量ではこちら側が圧倒的に不利だが、俺たちはまったく引けをとらない。
 まずヘッドフィールドのギャングたちはどいつもタフな連中だった。
 圧倒的な数の魔物軍団に対してもまったく臆することがない。
 個々の気迫もそうだが、何よりもそれを支えるのは...やはり〔狂戦士バーサーカー〕。

「オラァァッ!!」

 ジェイズ自らが暴風のように暴れ回りながらゴーレム軍団は鋼鉄のからだごと敵へ突っ込んでいく。
 一体この男はたった一人でどれだけの戦力を誇るのだろうか?
 計り知れないにもほどがある。
 そして彼だけじゃない。
 
固有技能アビリティ〔魔動炎閃〕」

 カレンは見事なまでの魔法剣で華麗に敵を薙ぎ払っていく。
 これが世界最高の魔法剣士の本領か。
 心強いなんてもんじゃない。
 世界を救った勇者の妹の強さは疑いようのない本物だ。

特殊技能スペシャリティ〔モルス・インベル〕」

 エレサの闇の力も凄まじかった。
 彼女の放つ闇の刃は敵全体にまで及ぶぐらいに広範囲へ降り注ぐ。
 凄い。これがダークエルフの真の実力なのか。
 もはやキラースに怯えていた哀しい姿はそこになかった。

「おいおいおい......調子にノッてんじゃねえぞ!!」

 その時、上空から鳥獣に乗ったキラースが叫んだ。
 相変わらずムカつく声。

「テメーらにはコイツをブチ込んでやる。
 特殊技能スペシャリティ〔クラスターボム〕」

 鳥獣の口がパックリと開き、ズズズズッと危険な魔力弾が生成される。

「あれはマズイぞ!!」

 カレンが声を上げた。
 咄嗟とっさにバッと俺が動きだす。

「あれの対処は俺が一番適している!」

 ところがピタッと足を止めた。
 俺の目に入ってきたのは颯爽と現れた女盗賊、アイ。
 彼女は屋根上からカササギのように身軽にパァッと跳躍すると、
特殊技能スペシャリティ〔ディプライブ〕」
 魔術を発動した。
 それは一体どんな魔術なのか?
 なんと、鳥獣の口内に生成された魔力弾がパッと消失した。

「はぁ!?なにしやがったテメェ!!」

 キラースも何が起こったのか理解できない。
 アイが地面にスタッと着地すると、彼女の右手には弾となった魔力の塊が握られていた。

「魔法を奪った」

 そう言うとアイは俺に視線を投げてきた。
 ピンと来た俺は彼女へ向かって走りこんでいくと、その手に握られた物をスパッと斬り払った。
 魔力の塊はあっさりと滅失した。

「これがあたしの偸盗術だ。だが、奪うことはできてもそれを放てるとは限らない。今の魔法は放つのは危険だと判断した」

「魔法を盗るって......驚いたな」

「スゲェだろ?うちのアイちゃんは」

 ジェイズがドヤ顔で言った。
 納得だ。本当に凄い。
 ......数では劣る俺たちだけど、ジェイズもカレンもエレサもアイも、まさに一騎当千の実力者。
 彼らだけでも万の軍に匹敵するといっていいかもしれない。
 俺は彼らを見まわして改めて感嘆した。
 
「調子ノリすぎだぞクソがぁぁ!!」

 逆上したキラースが鳥獣ごと俺とアイのところへ突っ込んできた。
 ハッキリ言って無謀な突進だ。
 俺は魔法を斬り裂けるしアイは魔法を奪える。
 ただ向かってくるだけなら俺の剣で斬り伏せるだけ。
 
「なーんちゃって」

 キラースは馬鹿にするように舌を出して鳥獣をぐーんと上昇させた。
 次の瞬間、背後の上空から別の鳥獣数体が一気に迫ってきたと思ったら、
「ガウゥゥゥゥッ!!」
 その上から何頭ものサンドウルフが牙を剥いてガーッと飛び降りてきた。

 意表を突かれた。
 といっても、俺が本当に意表を突かれたのは別のことだ。

「アルカーナ・ヴェントゥス」

 突如、サンドウルフどもにブワァァァッ!と狙い澄ましたような突風が襲いかかりヤツらを吹き飛ばした。
 そこへアイがわかっていたようにすかさずビュッ!とクナイを投げつけてトドメを刺した。
 俺はハッとして振り向く。

「クローさぁぁぁん!!」

 シヒロが走ってきた。
 そうか。
 アイが連れてきてくれたんだな。
 
「す、少しは役立ちましたか?」

 シヒロの言葉でやっと理解した。

「今の風魔法はシヒロがやったのか」

「は、はい!そうです!」

「攻撃魔法は苦手だって言ってたよな」

「そ、そんなことも、言ってられないですよね?」

 俺はシヒロの手が若干震えているのを見てとった。
 しかし彼女はすぐに歯を食いしばると、キッと表情を変える。

「ぼ、ぼくも魔法で戦います!」

 彼女の純粋な瞳からは本気の覚悟が見えた。
 俺はこくっと頷き、一言だけえた。

「無理はするなよ」
「は、はい!」

 今度はそこへトレブルとブーストが駆けこんで来た。

「嬢ちゃん!」

 俺はふたりを一瞥して無言で命令した。
 シヒロを守ってくれと。
 
「ダンナ!任せときな!」

 彼らは即座に察してくれた。
 俺は目で返事をすると、敵に向かってダッ!と飛び出した。
 この戦いに勝つために、シヒロたちを守るために......俺は敵をぶっ潰す!

「まだギアを上げんのか!?やっぱりテメーはおもしれえ!」
「このまま押し切るぞ!」
「わたしもまだまだいける!」
「さて、あたしも本格的に混ざるか」

 俺の勢いに呼応するように一同は俄然がぜん盛り上がった。
 この戦争に...勝利するために!
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