しにかけの転生者～しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる～

魔剣使いの闘い～狂戦士編

ep147 魔剣使いvs狂戦士⑦

　＊

　太陽が照らしている。
　もう何時間、闘っているのだろう。
　
「......なかなか根性あるじゃねえか」

「〔狂戦士バーサーカー〕の異名はダテじゃないってわけか......」

　ジェイズと向かい合いながら思った。
　......コイツは不死身なのか？
　ここに至るまで俺は何度斬りつけて何度被弾して何度自傷したか。
　そして奴も似たようなもの。
　
「いつまで続くんだこの闘いは......」
「あたしにもわからない......」

　カレンとアイは茫然として眺めていた。

「クロー！わたしも戦う！」

　エレサが哀訴あいそするように叫んだ。

「ダメだ！手を出すな！」

　断固拒否した。
　なぜならこれは...そういう闘いじゃない。

「で、でも！」

「いいからエレサは黙って見ててくれ」

「無粋ぶすいなマネはやめるんだな、ダークエルフちゃん。アイも手を出すなよ」

　ジェイズはアイを一瞥した。
　アイは「はぁー」とため息をついてから呆れたように頷いた。

「じゃあ続きを始めるぜ？クロー」

「ああ」

　互いにスッと構えた。
　構えながら、俺はいくつかのことを考える。

　一つは、ジェイズが大技という大技は放ってきていないと思われること。
　二つ目は、俺もまだ一番の大技は撃っていないこと。
　三つ目は、おそらくもう自傷による回復と強化はできないこと。
　
「どうした？気になることでもあんのか？」

　ジェイズが抜け目なく突いてきた。
　俺は奴をじろりと睨むと、あることに気づいた。

「あんたの血による強化も......やっぱり限界があるみたいだな」

「目ざといな。だが正解だ。ここまで消耗したのは魔王領で戦ったとき以来だぜ。マジでテメーの剣は厄介だ」

「少し安心したな。てっきりあんたは不死身かと思いかけていたところだ」

「相手が魔剣使いじゃなけりゃあ三日三晩ぐらいは余裕で闘ってやるんだけどなぁ」

「バケモンだな」

「テメーも大概だぜ。ところでよ」

「？」

「テメーの自傷も、そろそろ限界なんじゃねえか？」

「！」

「図星のようだな。こりぁちょうどいい。そろそろお互い、大技で決着つけるか」

　どうやらお互い、状態も思考も同じようなものらしい。
　もはや選択肢はひとつ。
　......決着をつける！

「望むところだ！」

　俺はスッと腰を落とし、臨戦態勢に入った。
　奴もグッと拳を握り、力を込めはじめた。
　
　......ここまで来るともう理屈じゃない。
　今の今まで出さなかった、現時点での最大威力の技を奴へぶち込む！
　と俺が剣を握りしめた瞬間。

「これやるのはかなり久しぶりだなぁ！！」

　奴の両手両足が稲妻の如くカァァァッ！！と輝きだした。

「なんだ？両手両足で...錬金魔術による化学反応が起きて弾けているのか！？」

「これはあんまやりたくなかったんだがなぁ。なぜなら、すぐ終わっちまうからだ」

　ジェイズは俺を見てニヤリとした。

「特殊技能スペシャリティ〔ライド・ザ・ライトニング〕」　
　
　......あれはヤバい！
　カレンの〔魔動雷閃〕に近い性質の技だろうか？
　だが、奴の場合は四肢が危険な刃だ！
　あれを喰らったら間違いなく完全に終わる！
　といっても俺のやることはひとつだ。
　それ以上の攻撃をもって撃つ！

「特殊技能スペシャリティ〔ニュンパ・ラスレイション〕」

　空気が裂ける。
　大地が激震する。
　刹那、互いは同時に飛び出し、疾風迅雷の激突！
　烈風と閃光、砕けた地面がブワァァァッ！！
　舞い上がった！