しにかけの転生者～しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる～

魔剣使いの闘い～狂戦士編

ep145 魔剣使いvs狂戦士⑤

　俺はスッと腰を落とし、攻撃態勢に移行する。
　一気に空気が緊迫する。
　飛び込めばすぐに一太刀ひとたち届かせられる距離。
　しかし、それは相手も同じ。　

「そんじゃあ続きをおっ始めるか」

　ジェイズが拳を上げかけた時。
　俺はドン！と飛びだした。
　前方ではなく、後方に。

「！」

　ジェイズは意表を突かれたようだ。
　俺は一定の距離を空けてから再び腰を落とすと、若干の溜めを作り...大きく振り抜く。

「〔発閃〕」

　シュバァァァァッ！
　奴の躰からだよりも大きい剣気の衝撃波が奴に向かって飛んでいく。

「ああ？」

　ジェイズはわけなくそのまま体で受け止めた。
　ガードするまでもないといった様子。
　だがそんなことは想定内。
　俺はすでに奴に向かって突進していた。
　
「なんだ？さっきのオレの真似かぁ？」

　ジェイズはつまらなそうな表情を浮かべた。
　このまま奴に突っ込む...と見せかけて、ピタッと急停止する。

「止まった？」

　この動きも奴の予想外。
　俺はそのわずかな隙に若干の溜めを作り...大きく放つ。

「〔発閃〕」

　剣気の衝撃波は一瞬で奴にとどく。
　やはり奴はわけもなく受け止めた。
　これも想定内。
　ここからが本番だ。

「特殊技能スペシャリティ〔ニュンパギャッシュ〕」

　跳びこみながら発動した。
　斬閃は風を切って弧を描く。
　
「！」

　ガギィィィン！
　剣と拳が交錯する。
　瞬時に拳の金属部分で剣を受ける奴の技量は見事としか言いようがない。　
　同じことを繰り返している？
　違う。これも想定内！

「？」

　ジェイズの片足が地面から離れた。
　すなわち、奴がバランスを崩した。
　......ここだ！
　
「特殊技能スペシャリティ〔ニュンパグレイズ〕」

　すかさず次撃の技を発動した。
　この疾はやさでの連撃は正確性を欠く可能性がある。
　......今までなら！

「ハァァァッ！」

　狭い範囲を激しい旋風のように熾烈しれつに舞う。
　斬閃はズババババァッ！と複雑な弧を描く。

「！！」

　奴は序盤の数撃だけ拳で防いだが、それのみだった。

「ハァァァァァァッ！！」

　ジェイズの全身を膾切なますぎりに斬り刻む。　
　奴の血が霧のように舞う。
〔ニュンパグレイズ〕は攻防一体の技。
　そして今放っているそれは...完全攻撃型！
　奴の拳は恐ろしく危険。
　しかし、撃てなくさせれば問題ない！

「......」

　攻撃が終わる。
　無理くり振るった拳をうっかり喰らう可能性もあるため、俺は一歩退がった。
　奴は全身血まみれで突っ立っている。
　どう考えても大ダメージだろう。
　俺は最後通告を突きつけるように剣を向けた。
　
「シヒロを返してもらうぞ！ジェイズ！」
　
　奴はじろりと俺を睨むと、
「なるほど。そういうことか......」
　ゆっくりと口をひらいた。

「気づいたな。そうだ。
　俺の〔発閃〕は、ただの発閃じゃない。
〔魔斬発閃〕だ」

　そう。
　俺が放つのは、あらゆる魔法を斬り裂く〔魔斬発閃〕。
　さっき俺は、あえて大きい発閃を放った。
　しかも威力を下げ、速さと確実性を上げた。
　それは奴の体全体に確実に発閃を浴びせるため。

「そうか。それでテメー特有の〔魔斬発閃〕とやらを受けて、オレの身体に施した錬金魔術が無効化されたってわけか。二回やったのも、より確実にしたかったってところか？つまり目的はダメージを与えることでも牽制けんせいでもなく、当・て・る・こ・と・そ・の・も・の・だった。なるほど......やっぱりテメーはおもしれえな」

　ジェイズは不気味に「ククク」と笑いだした。
　俺はふと妙に思った。
　なんでそんなに平気に立って喋っていられるんだ？