しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根上真気

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魔剣使いの闘い~狂戦士編

ep144 魔剣使いvs狂戦士④

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「テメー。なにをしやがった?」

 ジェイズがそう言った時、人の姿はハッキリとした女の姿形になっていた。
 謎の女は閉じていたまぶたをゆっくりとひらく。

「クロー様。この姿でお目にかかるのは初めてですね」

「その声......お前は謎の声なのか??」

「はい。それでは早速始めましょうか。貴方の回復を」

「オイ女。テメーは何者だ」

 ジェイズが凄んで尋問じんもんしてきた。
 だが、奴は先ほどからずっと警戒している様子。
 それは謎の声が〔スピリトゥス〕に細工をしたからだが、そこへさらに謎の女の唐突な出現。
 奴といえども...いや、強者であるからこそ拙速な判断・行動をしないのだろう。
 
「テメーは魔剣使いの仲間か?」

「ワタクシは何者でもありません」

「つまらねえ答えだな。死にたくなかったらそこをどきな」

「今からワタクシはクロー様を回復させます。それまでお待ちください」

「待てないって言ったら?」

「貴方は待たざるを得ません」

「ああ?どういう意味だ」

 謎の女は相手の言葉をまったく意に介さず、彼に向かって手をかざした。

「〔ペルソナ・ノン・グラータ〕」

 ほんの一瞬、周囲の世界がブゥンと歪んだように感じた。
 だが、それだけ......何をやったんだ?

「さあ、クロー様。始めますよ」

「あ、ああ。でも......」

 俺はジェイズが気になりそちらへ目をやった。
 ところが、奴はその場からまったく動いていなかった。
 いや、動けないのか?

「......オイ女。マジでなにをした。なぜ前へ進めねえ」

「貴方を〔歓迎されない人物〕に指定しました。よって貴方はしばらくの間、ワタクシ達に近づくことはできません」

「聞いたことない魔術だな」

「でしょうね」

「まあいい。なら待っててやる。さっさと済ませろ」

 意外にもジェイズは素直に受け入れた。
 
「あの男は賢いですね。瞬時に何をやっても無駄だということを理解したのでしょう。それでは今からクロー様の回復を行います」

 何がなんだかわからなかった。
 でも、今は謎の女に従うままがいいと思った。
 
「わかった。頼む」

「では、剣をワタクシにお貸しください」

「剣を?」

 俺はよくわからないまま謎の女に剣を渡した。
 女は剣を受け取ると、それをスッと前に突き出した。

「えっ??」

 下を向いた。
 俺の胸に、さっくりと剣が突き刺さっている。
 
「!!」

 ふとまわりに視線を移すと、カレンもアイも、ジェイズすらも驚きの表情を浮かべている。
 そんな中、謎の女が俺の頬にそっと手を寄せた。

「クロー様。今のワタクシができるのはここまでです。あとは自らの力で切り開くのです。いいですか?貴方は強い。貴方ならできる。自分を信じてください」

 彼女がそう言って剣を抜いた瞬間。
 さっきと同様の神秘的な風がブワァァァッと舞い上がった。
 剣がカランと落下する。
 ......謎の女は忽然こつぜんと消え失せた。
 
「一体なんだったんだ......あっ!」

 ハッとした。
 
「回復している......いや、力が増している!?」

 手を開閉しながら、自らのみなぎるエネルギーを感じた。
 まるでわからないことだらけだ。
 でも、確信した。
 ......俺は戦える!

「一体なんだったんだ?」
「私にもわからない」

 アイとカレンは立ち尽くしていたが、ジェイズは踏み出して近づいてきた。

「前へ進めるな。女が消えて効果も切れたか?」

 俺は剣を取ってスッと構えた。

「フゥー。……よし」

 改めて相手を見すえる。
 不思議と落ち着いている。

「気持ちは折れてねえみたいだな」

 ジェイズは立ち止まると、ニヤリと笑った。
 
「ああ。いくぞ!」
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