しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根上真気

文字の大きさ
上 下
143 / 167
魔剣使いの闘い~狂戦士編

ep143 魔剣使いvs狂戦士③

しおりを挟む
『さて、応援を呼びかけましょうか』

『応援?トレブルたちを呼ぶってことか?』

『はい』

『呼べるのか?』

『この距離なら可能です』

『でも、アイツらを呼んだところで......ジェイズに対抗できそうな力を持っているとしたら、エレサぐらいしか......』

『いずれにせよ肉の壁ぐらいにはなるでしょう』

『お前...!』

『勇者の妹は手を出せない。ならば彼らを呼ぶしかないでしょう?時間稼ぎぐらいはしてくれるはずです』

『待て!』

『......』

『やめろ!』

『......これは困りましたね』

『なんだ?アイツらがどうかしたのか?』

『どうやら街のギャングどもに囲まれて宿屋から出られないようです』

『わかるのか!?』

ならば、この距離であれば〔スピリトゥス〕を通じて把握できます』

『今のワタクシ?いやそんなことはいい。とにかく状況を教えろ!』

『......クロー様と〔狂戦士〕がぶつかり合って生じた魔力の乱れにダークエルフが気付いたようでしたが、すでにギャング共に取り囲まれていたみたいですね』

『クソ!街のギャングどもとは酒もみ交わしたのに!』

『それとこれとは話が別でしょう。これは個人の感情の問題ではないですから。むしろギャング共は正当です。貴方ならわかるでしょう?』

『ああわかった!わかったよ!それでアイツらに危険は!?』

『他人の心配をしている場合ではないでしょう?』

『いいから教えろ!』

『今のところは』

『そうか......』

『で、貴方はどうするのです?』

『ジェイズを、倒す...』

『その状態で?』

『だって、やるしかないだろ』

『貴方の心が折れていない事が確認できました。よろしい。であればワタクシも最大限協力しましょう』

『なにかやってくれるのか?』

『戦うのはあくまでクロー様です。でなければ意味がないですから』

『意味?』

『いいですか?ワタクシの話をよく聞いて理解してください。今からあの男の魔術について、現時点で分かった事を説明します』

『えっ?あ、ああ!頼む!』

『あの男の使う魔法は錬金魔法。錬金魔法と聞くと物を作り出す魔法をイメージしますよね?』

『実際、岩や鋼鉄を作り出して攻撃してきたしな』

『それはいわば表面的な力です。貴方は自分の攻撃にあの男が微動だにしなかったのを不思議に思ったでしょう?』

『そうだよ!奴は〔ニュンパギャッシュ〕すら平然と受け止めた』

『あの男は、己の身体にも錬金魔法を施すことができるのです。それがあの男の錬金魔術の正体』

『どういうことだ?』

『あの男は貴方の剣を受け止める際、己の身体の一部を錬金魔法で強化したのです。さらには足元にも錬金魔法を施し、まさしく地に足をつけて微動だにしなかったという訳です』

『身体の一部?体全体ではなく?』

『おそらく通常の敵であればそれも行うのでしょうが、クロー様の〔魔導剣〕はあらゆる魔法を斬り裂く。ですので実際に剣を受け止める拳には魔法を施さなかったのでしょう。一見豪快に見えて緻密にクロー様への対策を講じてきています』

『理屈はわかったが、そんな簡単にできるもんなのか?』

『発想、創造、応用、魔術のオンオフの切り替え等、すべてが恐ろしく高度な技術です。ちなみに、あの男は踏み込む際に自らの足元にバネのように弾く物質を作り出し、踏み込んでから飛び出すスピードを格段に高めました』

『だから急に奴のスピードが速くなったのか!』

『それもあえて遅いスピードを見せてから行うことにより、より速く感じさせたのです。これについては技術というより練度』

『そういうことだったのか』

『そして貴方に攻撃を当てる瞬間には拳にも錬金魔法を施し強化した。まさに高度な技術と練度を備えた戦闘スタイル。彼は戦士としても超一流といって良いでしょう』

『敵ながらすごいな...』

『はい。それにあのような錬金魔法の使い方はおそらく他者には真似できない。己の肉体への負荷があまりに大きすぎます。しかしあの男はそれに耐えうる肉体の強さをも備えている。まさしく唯一無二とも言える特殊技能スペシャリティ

『俺に...勝てるのか?』

『貴方は選ばれし〔魔導剣士〕。貴方こそが真に唯一無二の存在です』

『でも、すでにダメージが......』

『ワタクシが回復して差し上げましょう』

『お前が?』

『さあ、ワタクシの名をお呼びください』

『は?名前は無いって言ってなかったか?』

『名はありません。捨てましたからね。しかし、ワタクシを象徴する敬称はあります』

『それは?』

『〔ウェリタス〕』

「ウェリタス......」

 その言葉を口にした瞬間。
 突如、俺の目の前にブワァァァッ!と風が巻き起こる。

「な、なんだ??」

 風は小さな円を描き神秘的に舞い上がる。
 まもなく......円の中心から薄く光る蜃気楼のように人の姿が浮かび上がった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

禁忌地(アビス)に追放された僕はスキル【ビルダー】を使って荒野から建国するまでの物語。

黒猫
ファンタジー
青年マギルは18才になり、国王の前に立っていた。 「成人の儀」が執り行われようとしていた。 この国の王家に属する者は必ずこの儀式を受けないといけない… そう……特別なスキルを覚醒させるために祭壇に登るマギルは女神と出会う。 そして、スキル【ビルダー】を女神から授かると膨大な情報を取り込んだことで気絶してしまった。 王はマギルのスキルが使えないと判断し、処分を下す。 気を失っている間に僕は地位も名誉もそして…家族も失っていた。 追放先は魔性が満ちた【禁忌地】だった。 マギルは世界を巻き込んだ大改革をやり遂げて最高の国を建国するまでの物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

処理中です...