しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根上真気

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魔剣使いの闘い~狂戦士編

ep140 開始

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 キラースの姿が見えなくなるのを確認すると、ジェイズがカレンに視線を投げた。

「わりいな、カレン嬢。お前はヤツをぶっ殺したいだろうが、オレにも幹部としての立場がある」

 ジェイズの言葉にカレンはため息をつく。

「ヤツは存在自体が看過できない。だが、今の私は一個人として来ている身だ。今回はお前たちの判断に譲る」

「それは勇者軍の隊長としてではなく、という意味でいいんだな?」

「そうだ」

「ならカレン嬢はオッケーだ」

「は?」

「この場に居ていいってことさ」

「......」

 にわかに場の緊張が増した。
 それは何かの始まりを予感させる空気......。

「待たせたな、魔剣使い」

 おもむろにジェイズは俺のほうを向いた。

「あんたらの目的は俺だろ?ならもうシヒロを解放しろ」

 俺は単刀直入に要求した。

「ああ、シヒロちゃんは解放してやるよ。ただし、条件がある」

「どんな条件だ」

「次の三つのうちどれかだ。
 一、オレの部下になる。
 二、オレにぶっ殺される。
 三、オレをぶっ殺す。
 どうだ?いい条件だろ?」

「......」

「とりあえずお前、オレの部下になれ」

「断ったら?」

「オレと殺り合うしかねえな」

「わかった。それでいこう」

「おいおい待て待て。オレはテメーを殺したくはねえ。テメーのことは話で聞いた時からおもしれーと思っていた。そんで実際会ってみて飲んでみて、やっぱりテメーはおもしれーヤツだ。テメーは他のヤツらとは何か違う」

「オレにとって〔フリーダム〕は敵でしかない。確かにあんたは...あんたも他のヤツらとは違う気がする。でもそれは関係ない。どういう形であれ、俺が〔フリーダム〕に与することはない」

「じゃあやるしかねえな」

「そうだな」

「まあ安心しろ。お前が負けてもシヒロちゃんは解放される」

「......今ひとつ理解できないな。つまり俺はあんたの部下にならないかぎり、あんたとの闘いは避けられない。それならそれで俺は構わない。じゃあシヒロはもう関係ないだろ?俺が逃げないかぎりは」

「さっきカレン嬢にも言ったが、オレにも立場ってもんがある」

「それだけじゃよくわからないな」

「これ以上は答える義理はねえ」

「それはそうだな」

「お喋りはここまでだ。ヤロー同士シラフで喋ることほどつまらねーもんはねえ」

「......」


 俺とジェイズは一定の距離をあけて向かい合った。

 
「やはりこうなったか......」

 カレンがつぶやいた。
 
「カレン。念のため言っておくが、手出だしはするなよ」

 アイが釘を刺すように言った。

「ならなぜこの場に私も呼んだ?」

「勝手な行動をされるほうが困るからな。この場にいてもらったほうが都合がいい」

「アイ。ひとつだけ聞く。なぜお前たちがフリーダムに与する」

「勘違いするな。ヘッドフィールドは〔フリーダム〕に加わったわけではない。ボスが幹部になっただけだ」

「ではこの街自体はフリーダムとは関係ないのか?」

「現在、ここはフリーダムの保護下にあるといっていい」

「なに?」

「とはいってもヘッドフィールドはあくまで〔狂戦士〕の支配下だ」

「なぜそんな事態になった?」

 質問するカレンにジェイズが睨みつける。

「そこまでだ。テメーらはとっとと退がってろ」

「......」

 カレンは怪訝けげんな表情を浮かべるが、アイとともに黙って退がった。
  

 辺りに静寂がつつむ。
 町外れとはいえやけに静かな気がする。
 嵐の前の静けさというやつか?


「おい魔剣使い」

 ジェイズが口をひらいた。

「なんだ?」

「オレはテメーを楽しみにしてた」

「......」

「だから、とっとと死ぬんじゃねえぞ」

 ジェイズの左拳がうっすらと光った。
 あれは魔力。
 奴はどんな能力なんだ?

 ......しまった。
 なぜカレンに聞かなかったんだ。
 いや、彼女が俺に教える義理もメリットもないな。
 俺は自分の力で戦うだけ。

「〔グラディウス〕」

 魔導剣を顕現させた。
 その瞬間。

「!」

 俺はジェイズに向かって突進する。
 
「いいねぇ。イキがイイじゃねえか」

 ジェイズは余裕だ。
 俺をナメているのか?
 構わない。
 それならそれでナメられているうちに決着をつける。

「特殊技能〔ニュンパギャッシュ〕」

 剣は風を切り奴へ振り抜かれる。
 このままいけば間違いなく刃は奴に届く。
〔ニュンパギャッシュ〕の一撃は高い威力を誇る。
 防御されても崩せるはず。
 すなわちいずれにせよ俺の有利に変わらない!

「ハァァァッ!!」
 
 ガギィィィン!と音が弾けた!
 
「!」

 刃は確かに届いた。
 ......奴の拳に!
 ジェイズは手にメリケンサックのような物を装着し、その金属部分で俺の剣を受け止めた。
 
「崩せない!?」

 奴の拳も体も微動だにしない。
 なんだ?
 力が強いのか?
 体幹が強いのか?
 いやそういう問題じゃない。

「そんなもんか?魔剣使い」

 ジェイズの眼がギロリとした。
 俺は次撃に移らずいったんサッと跳び退がった。
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