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魔剣使いの闘い~狂戦士編
ep133 夕方②
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「クロー、そこにいたか」
物思いにふける俺の背後からカレンが来た。
「あんたはもういいのか?」
「私がそんなに酒呑みに見えるか?」
「いや、そういう意味で聞いたんじゃないが」
「トレブルたちが入ってきて酒を飲み始めたからな。私はもう出たほうがいいと思ってな」
カレンの顔はやや赤くなっていた。
マジメな彼女は飲むフリをせずにちゃんと飲んでいた。
だが、さすがは勇者の妹。
まったくもってきちんとしている。
「結構飲んでいたように見えたけど、しっかりしているんだな」
「ああ。あれぐらいはわけない」
「女隊長はダテじゃないってわけか」
「違う。私は酒豪ではない。これは単純なカラクリだ」
「......魔法か?」
「補助魔法のちょっとした応用だ。もっとも本来は酒に使うものではないので完全に酔わないというわけではないが。
私は立場上、酒席の重要性もよく知っている。かといって酔い潰れるわけにもいかない。そこで、この方法に至ったというわけだ。
一応言っておくが、これは魔力の微調整が必須でそれなりの魔法技術を要するんだぞ?」
カレンは見せたことのないドヤ顔をチラッと見せた。
やはり多少は酔っているのだろうか。
でも、いざ戦いとなったらシャキッとするんだろうな。この魔法剣士様は。
「ところでエレサはどうした?」
「奴はギャングどもと飲み比べをやっていたぞ。奴こそは酒豪かもな。ダークエルフは様々な物に対して強い耐性を持っていると聞いたことがあるが、まさか酒に対してもとは」
「さっきも酔ってはいたみたいだが」
「酔いはするがいくらでも飲めるらしい」
「なんだそれ。酒好きなら最高の体質じゃんか。金はかかりそうだが」
「確かにな」
カレンはくすくすと笑った。
「初めてあんたの笑顔を見たな」
「そ、そうか?悪いか?」
「悪くないよ。むしろそのほうが良いんじゃないか?あんた美人だし」
「なっ!わ、私を口説いているのか!?」
「あんた、絶対俺に対して間違ったイメージ持っているよな......」
「カレンだ」
「え?」
「私はカレン。あんたって呼ぶのはやめて」
「あ、ああ、そうだな。カレン」
カレンはフフッと微笑んだ。
その時だ。
「なに抜けがけをしている!!」
背後からエレサが飛び出してきて俺たちの間へ割って入った。
「クローはわたしの!」
叫びながらエレサは俺の腕にひしと抱きついた。
「だいぶ酔っているな。大丈夫か?」
「だいじょーぶだもん。わたしね?いくらでも飲めるから」
エレサは酔いに任せて俺の肩に頬をスリスリと寄せて甘えてくる。
「宿屋に戻るか?」
「え?わたしのこと抱きたいの?」
「違う!」
「いいよ。クローなら」
「いやよくないだろ」
「よくなくない」
エレサは俄然ぴったりとくっついてきた。
「やっぱり私のイメージ通りの男だな」
カレンがつーんと冷たい目線を浴びせてきた。
「だから違うっての!これはエレサが勝手に...」
「勝手?その言いかたヒドい!」
「待てエレサ!そういう意味ではなくて...」
「さっきもあんまり一緒に飲んでくれなかったし。なんだか楽しくもなさそうだったし」
エレサは駄々をこねるように言った。
「それは別にエレサのせいではないよ」
「じゃあなんなの!?」
エレサは頬をふくらませてムスッとした。
俺はくっついてくるエレサをやさしく解く。
「シヒロは今ひとりぼっちだろ?いくら身の安全が保障されているとはいってもひとりで寂しいはずだろ。それを考えるとな」
これは本音だ。
そもそもわざわざヘッドフィールドまで来たのもシヒロを取り返すためだ。
色んな事情を考慮して今はこの状況に甘んじているが、その目的は絶対に揺るがない。
「そう...だね」
エレサが少しさびしそうに目を伏せた。
カレンは俺を気遣うように控えめながらも安心させるように微笑む。
「今度はシヒロも一緒に宴をやればいい」
「ああ、そうだな」
物思いにふける俺の背後からカレンが来た。
「あんたはもういいのか?」
「私がそんなに酒呑みに見えるか?」
「いや、そういう意味で聞いたんじゃないが」
「トレブルたちが入ってきて酒を飲み始めたからな。私はもう出たほうがいいと思ってな」
カレンの顔はやや赤くなっていた。
マジメな彼女は飲むフリをせずにちゃんと飲んでいた。
だが、さすがは勇者の妹。
まったくもってきちんとしている。
「結構飲んでいたように見えたけど、しっかりしているんだな」
「ああ。あれぐらいはわけない」
「女隊長はダテじゃないってわけか」
「違う。私は酒豪ではない。これは単純なカラクリだ」
「......魔法か?」
「補助魔法のちょっとした応用だ。もっとも本来は酒に使うものではないので完全に酔わないというわけではないが。
私は立場上、酒席の重要性もよく知っている。かといって酔い潰れるわけにもいかない。そこで、この方法に至ったというわけだ。
一応言っておくが、これは魔力の微調整が必須でそれなりの魔法技術を要するんだぞ?」
カレンは見せたことのないドヤ顔をチラッと見せた。
やはり多少は酔っているのだろうか。
でも、いざ戦いとなったらシャキッとするんだろうな。この魔法剣士様は。
「ところでエレサはどうした?」
「奴はギャングどもと飲み比べをやっていたぞ。奴こそは酒豪かもな。ダークエルフは様々な物に対して強い耐性を持っていると聞いたことがあるが、まさか酒に対してもとは」
「さっきも酔ってはいたみたいだが」
「酔いはするがいくらでも飲めるらしい」
「なんだそれ。酒好きなら最高の体質じゃんか。金はかかりそうだが」
「確かにな」
カレンはくすくすと笑った。
「初めてあんたの笑顔を見たな」
「そ、そうか?悪いか?」
「悪くないよ。むしろそのほうが良いんじゃないか?あんた美人だし」
「なっ!わ、私を口説いているのか!?」
「あんた、絶対俺に対して間違ったイメージ持っているよな......」
「カレンだ」
「え?」
「私はカレン。あんたって呼ぶのはやめて」
「あ、ああ、そうだな。カレン」
カレンはフフッと微笑んだ。
その時だ。
「なに抜けがけをしている!!」
背後からエレサが飛び出してきて俺たちの間へ割って入った。
「クローはわたしの!」
叫びながらエレサは俺の腕にひしと抱きついた。
「だいぶ酔っているな。大丈夫か?」
「だいじょーぶだもん。わたしね?いくらでも飲めるから」
エレサは酔いに任せて俺の肩に頬をスリスリと寄せて甘えてくる。
「宿屋に戻るか?」
「え?わたしのこと抱きたいの?」
「違う!」
「いいよ。クローなら」
「いやよくないだろ」
「よくなくない」
エレサは俄然ぴったりとくっついてきた。
「やっぱり私のイメージ通りの男だな」
カレンがつーんと冷たい目線を浴びせてきた。
「だから違うっての!これはエレサが勝手に...」
「勝手?その言いかたヒドい!」
「待てエレサ!そういう意味ではなくて...」
「さっきもあんまり一緒に飲んでくれなかったし。なんだか楽しくもなさそうだったし」
エレサは駄々をこねるように言った。
「それは別にエレサのせいではないよ」
「じゃあなんなの!?」
エレサは頬をふくらませてムスッとした。
俺はくっついてくるエレサをやさしく解く。
「シヒロは今ひとりぼっちだろ?いくら身の安全が保障されているとはいってもひとりで寂しいはずだろ。それを考えるとな」
これは本音だ。
そもそもわざわざヘッドフィールドまで来たのもシヒロを取り返すためだ。
色んな事情を考慮して今はこの状況に甘んじているが、その目的は絶対に揺るがない。
「そう...だね」
エレサが少しさびしそうに目を伏せた。
カレンは俺を気遣うように控えめながらも安心させるように微笑む。
「今度はシヒロも一緒に宴をやればいい」
「ああ、そうだな」
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