しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根上真気

文字の大きさ
上 下
129 / 167
魔剣使いの闘い~狂戦士編

ep129 喧嘩

しおりを挟む
「ねえクロー?どうしてなにも答えてくれないの?」

 エレサは俺の手をさらに自分の胸へむにゅっと押しつけた。
 とその時。

「おい。朝っぱらから道端で何をやっているんだ」

 側面の方向から女性の声が俺たちへ届いた。
 そちらへ振り向くと、

「カレン!」

「まさかあの魔剣使いがこんなスケコマシだとはな......」

 カレンは軽蔑けいべつの眼差しで吐き捨てた。

「違う!これは...」

 即座にサッと手を引っ込めた。
 が、エレサはおかまいなしに俺の胸へ飛び込むかのように身を寄せてくる。

「クロー!あんな女のことはどうでもいい!わたしを見て!」

「あの、エレサ。とりあえず落ち着こうか」

「話をそらさないで!」

「いや、カレンも見てるし」
 
「あんなメスゴリラ隊長のことなんかどうでもいい!ねえクロー!」

「メスゴリラ...だと?」

 カレンの片方の眉がピクッと上がった。
 明らかに危険な反応。

「ねえクロー!」

「いや、エレサ。ちょっと待って」

「待たない!」

「そうじゃなくて...」

 そうこうしているうちに、カレンがぬらりと接近してきてしまう。

「おいダークエルフ」

 カレンはエレサの肩をぐっと引っ張った。

「なに?今オマエは関係ないでしょ?」

 エレサは挑発的に座らせた眼をギロリと向けてカレンの手を不快感たっぷりに振り払った。

「百歩譲って名前を呼ばないのはまだいい。だが、メスゴリラはさすがに看過かんかできないな」

 カレンは人がブチ切れる寸前の妙に静かな口調で言った。

「オマエがわたしの邪魔をするからだろ?メスゴリラ剣士」

「貴様......反省するどころか、どこまでも私を侮辱する気か」

「なんでわたしがオマエに対して反省しなきゃならないの?意味がわからない」

「......わかった。なら嫌でも反省してもらうぞ。へらず口のダークエルフめ!」

 カレンはエレサをどんと突き飛ばすと、ついに剣を抜いてしまった。

「やれるものならやってみろ。メスゴリラ隊長」

 エレサは闇の魔力を練り始めた。
 
「え~と、あの~、ケンカは、やめたほうが......」

 俺の弱々しい仲裁の声など荒ぶる彼女らへ届くわけもなく......。
 まもなく、ふたりの戦闘が開始する。

「ダークエルフ!!」
「メスゴリラ隊長!!」

 女ふたりが天下の往来で朝っぱらからぶつかり合いの大喧嘩。
 しかもここはギャングの街。
 否が応でも血気盛んな連中がわらわらと集まってくる。

「女同士のケンカ?」
「あれは......昨日のヤツらじゃねえか!」
「姉御の命令で手出しはしてねえが...ヘッドフィールドでチョーシ乗ってんじゃねえぞコラァ!!」

 やがてギャング連中も二人のケンカに雪崩なだれこんでいく。

「オラァァァ!!」
「フザケてんじゃねえぞぉ!!」
「ブッ殺せぇぇ!!」

 怒号が飛び交い大乱闘が始まる。
 アイとの約束の手前、俺は集団から退いて加わるのは控えた。
 付近の建物の屋根に上がり、遠目からエレサとカレンの様子だけを注意深く見守る。

「あいつら......カレンはもう少し冷静かと思っていたけど......」

 はぁーっとため息をつく。
 大事にならなければいいが。
 いやすでに大事なのか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界営業〜大事なのは剣でも魔法でもない。営業力だ!

根上真気
ファンタジー
これは、元やり手営業部長の青年が、その営業力を駆使し、転移した異世界で起業して成功する物語。しかしその道のりは困難の連続だった!彼の仲間は落ちぶれた魔導博士と魔力量だけが取り柄のD級魔導師の娘。彼らと共に、一体どうやって事業を成功させるのか?彼らの敵とは何なのか?今ここに、異世界に降り立った日本人青年の、世紀の実業ファンタジーが幕を開ける!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...