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魔剣使いの闘い~狂戦士編
ep123 ヘッドフィールド
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空は濃紫色になり街の灯りがぼんやり光る。
「よし。街の入り口だ。私たちはここで降りるぞ」
カレンがアナウンスした。
「隊長様!ホントにあっしは行っちまっていいんですね!?」
馬上から御者が叫んだ。
「もちろんだ。むしろこんな所に長居すべきでない」
「す、すんません!」
俺たちが下車すると、馬車は逃げるようにすたこらさっさと街を去っていった。
「なあカレン。もう夜だから御者と馬も街で休ませたほうが良かったんじゃないのか?なぜあんな急ぎ足で行かせるんだ?」
街へ向かって歩きながらカレンへ尋ねた。
「ここはギャングの街だ。ジェイズによって秩序は保たれているが、カタギの人間がいるべき場所ではない。それでは街へ入るぞ」
カレンに先導されながら、俺たちは〔ヘッドフィールド〕へ足を踏み入れる。
意外にも簡単に入れた。
「ここがヘッドフィールドか」
俺は周囲を見わたした。
街路や灯りなどのインフラや点在する低い建物を見るにつけ、
「やはり豊かではないんだな......」
ある意味で予想通りの印象を受ける。
また、街ゆく人々はギャングの街にふさわしい風体だ。
盗賊なのか山賊なのか荒くれた冒険者なのか......そんな眼つきの悪い連中がゴロゴロいる。
「こんな街にシヒロが......」
俺がつぶやいた時。
「よぉネーチャン。イイ女じゃねえか」
「今夜おれたちと遊ばねえか?」
「気持ちよくさせてやるからよ」
チンピラ風の男三人組が後ろのエレサに絡んできた。
「なんだオマエら。わたしはオマエらなんかに興味ない」
エレサはにべもなく突き放した。
「ああ?なんだこの生意気な黒エルフは」
「いいからおれたちと一緒に来ればいいんだよ」
「いいから来やがれ」
一人の男がエレサの腕をグッと掴んだが、即座に彼女はそれを乱暴に振り払った。まとわりつく小虫を振り払うかのように。
「ああ!?あんだこのクソ生意気な女は!?」
腕を払われた男がキレだした。
「おいおい」
「揉めたくねえのによぉ」
トレブルとブーストは困惑しながらも仲裁に入ろうとする。
「チッ!下衆どもが...!」
実に腹立たしげに舌打ちしたカレンも一歩足を踏み出した時。
「〔グラディウス〕」
俺は〔魔導剣〕を顕現させると、その男へ剣を突き立てる。
「彼女へ謝罪しろ。その娘はお前らチンピラ風情が手出しできるような代物じゃない」
「お、おいクロー!やめろ!いきなりなにをしているんだ!」
驚いたカレンが思わず俺を制止した。
「え?クロー?」
きょとんとしながらもエレサはどうしてか女らしい目つきを俺に向けた。
「んだテメーこらぁ!!やる気かオラぁ!!」
男は完全にブチ切れた。
「オイオイまたあいつケンカしてやがるぜぇ!」
「ギャッハッハ!やっちまえやっちまえ!」
「いーぞいーぞ殺し合えや!」
辺りも野蛮にザワついてきた。
俺はそんな様子などには目もくれず、制止するカレンも無視して単刀直入に切りだす。
「お前みたいな末端のチンピラじゃ話にならない。〔狂戦士〕に会わせろ」
俺の言葉に、カレンもトレブルもブーストも、相手もツレも街の連中も皆、虚をつかれる。
「クロー!何を考えている!?我々は人質を取られている状態なんだぞ!?」
「だ、ダンナ!」
「マジかよ......!」
次第に、相手の男を含めて街全体が殺気立ってくる。
「銀髪ヤロー。テメーごときがなに言ってやがる。テメー、このまま私刑だぜ?」
男はドス黒い眼をギロリと光らせた。
「クロー......」
そんな中、なぜかエレサだけは女の顔で俺を見つめていた。
俺はおもむろに剣をびゅんと地面へ振り下ろすと、男と街の連中全員を殺気を込めて睨みつける。
「俺は魔剣使いクロー。ヘッドフィールドのボス、ジェイズ・オズボーンに用があってこの街へ来た。つべこべ言わずジェイズを呼んでこい。あともうひとつ。もし人質に手を出したら全員皆殺しにする!」
これにより、街全体は完全に臨戦態勢に入る。
殺気立ったギャングどもがぞろぞろと集まってくる。
もはや戦闘は避けられないだろう。
でも構わない。
俺に残された時間はあとどれぐらいあるかわからないんだ。
そもそも死ぬ直前まで戦えるかもわからない。
そう考えるとますます時間がない。
ここにきてチンタラやっている暇はないんだ。
「こうなればやむをえまい。トレブル、ブースト、ダークエルフ。やるぞ!」
カレンも剣に手をかけた。
「しょーがねえな!」
「ああ!」
トレブルとブーストも武器を構えた。
「女隊長に言われるまでもない」
エレサは魔力を練りはじめた。
その時だ。
「待て!!」
女の声が街を突き抜けるように響いた。
空は濃紫色になり街の灯りがぼんやり光る。
「よし。街の入り口だ。私たちはここで降りるぞ」
カレンがアナウンスした。
「隊長様!ホントにあっしは行っちまっていいんですね!?」
馬上から御者が叫んだ。
「もちろんだ。むしろこんな所に長居すべきでない」
「す、すんません!」
俺たちが下車すると、馬車は逃げるようにすたこらさっさと街を去っていった。
「なあカレン。もう夜だから御者と馬も街で休ませたほうが良かったんじゃないのか?なぜあんな急ぎ足で行かせるんだ?」
街へ向かって歩きながらカレンへ尋ねた。
「ここはギャングの街だ。ジェイズによって秩序は保たれているが、カタギの人間がいるべき場所ではない。それでは街へ入るぞ」
カレンに先導されながら、俺たちは〔ヘッドフィールド〕へ足を踏み入れる。
意外にも簡単に入れた。
「ここがヘッドフィールドか」
俺は周囲を見わたした。
街路や灯りなどのインフラや点在する低い建物を見るにつけ、
「やはり豊かではないんだな......」
ある意味で予想通りの印象を受ける。
また、街ゆく人々はギャングの街にふさわしい風体だ。
盗賊なのか山賊なのか荒くれた冒険者なのか......そんな眼つきの悪い連中がゴロゴロいる。
「こんな街にシヒロが......」
俺がつぶやいた時。
「よぉネーチャン。イイ女じゃねえか」
「今夜おれたちと遊ばねえか?」
「気持ちよくさせてやるからよ」
チンピラ風の男三人組が後ろのエレサに絡んできた。
「なんだオマエら。わたしはオマエらなんかに興味ない」
エレサはにべもなく突き放した。
「ああ?なんだこの生意気な黒エルフは」
「いいからおれたちと一緒に来ればいいんだよ」
「いいから来やがれ」
一人の男がエレサの腕をグッと掴んだが、即座に彼女はそれを乱暴に振り払った。まとわりつく小虫を振り払うかのように。
「ああ!?あんだこのクソ生意気な女は!?」
腕を払われた男がキレだした。
「おいおい」
「揉めたくねえのによぉ」
トレブルとブーストは困惑しながらも仲裁に入ろうとする。
「チッ!下衆どもが...!」
実に腹立たしげに舌打ちしたカレンも一歩足を踏み出した時。
「〔グラディウス〕」
俺は〔魔導剣〕を顕現させると、その男へ剣を突き立てる。
「彼女へ謝罪しろ。その娘はお前らチンピラ風情が手出しできるような代物じゃない」
「お、おいクロー!やめろ!いきなりなにをしているんだ!」
驚いたカレンが思わず俺を制止した。
「え?クロー?」
きょとんとしながらもエレサはどうしてか女らしい目つきを俺に向けた。
「んだテメーこらぁ!!やる気かオラぁ!!」
男は完全にブチ切れた。
「オイオイまたあいつケンカしてやがるぜぇ!」
「ギャッハッハ!やっちまえやっちまえ!」
「いーぞいーぞ殺し合えや!」
辺りも野蛮にザワついてきた。
俺はそんな様子などには目もくれず、制止するカレンも無視して単刀直入に切りだす。
「お前みたいな末端のチンピラじゃ話にならない。〔狂戦士〕に会わせろ」
俺の言葉に、カレンもトレブルもブーストも、相手もツレも街の連中も皆、虚をつかれる。
「クロー!何を考えている!?我々は人質を取られている状態なんだぞ!?」
「だ、ダンナ!」
「マジかよ......!」
次第に、相手の男を含めて街全体が殺気立ってくる。
「銀髪ヤロー。テメーごときがなに言ってやがる。テメー、このまま私刑だぜ?」
男はドス黒い眼をギロリと光らせた。
「クロー......」
そんな中、なぜかエレサだけは女の顔で俺を見つめていた。
俺はおもむろに剣をびゅんと地面へ振り下ろすと、男と街の連中全員を殺気を込めて睨みつける。
「俺は魔剣使いクロー。ヘッドフィールドのボス、ジェイズ・オズボーンに用があってこの街へ来た。つべこべ言わずジェイズを呼んでこい。あともうひとつ。もし人質に手を出したら全員皆殺しにする!」
これにより、街全体は完全に臨戦態勢に入る。
殺気立ったギャングどもがぞろぞろと集まってくる。
もはや戦闘は避けられないだろう。
でも構わない。
俺に残された時間はあとどれぐらいあるかわからないんだ。
そもそも死ぬ直前まで戦えるかもわからない。
そう考えるとますます時間がない。
ここにきてチンタラやっている暇はないんだ。
「こうなればやむをえまい。トレブル、ブースト、ダークエルフ。やるぞ!」
カレンも剣に手をかけた。
「しょーがねえな!」
「ああ!」
トレブルとブーストも武器を構えた。
「女隊長に言われるまでもない」
エレサは魔力を練りはじめた。
その時だ。
「待て!!」
女の声が街を突き抜けるように響いた。
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