しにかけの転生者～しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる～

魔剣使いの闘い～サンダース編

ep96 魔法剣士vs爆破魔術師（シヒロ視点）

「やっぱりキラースはとんでもねえヤローだ！」
「あれじゃあただの虐殺だ！」

　トレブルさんとブーストさんが憤いきどおりの声を上げた数秒後。　
　ブオォォォンッ！
　冷酷にも魔物の口から魔力のエレルギー弾が発射されました。
　避難を進める群衆へ向かって！

「お、オイ！！」
「こっちに飛んでくるぞ！！」
「きゃあああ！！」

　飛び交う無辜むこな民の悲鳴。　
　そこへ建物伝いにバッバッバッ！と飛び跳ね迷いなくムササビのようにカレンさんは飛び込んでいきます。

「させない！！」

　そのままカレンさんは魔力弾に向かって跳躍します。

「ハァッ！！」
　
　バアァァァッ！
　卑劣な攻撃を一手に引き受けたカレンさんの全身が、落雷を受けた避雷針のように輝きます。

「やっぱり受け止めやがったなぁ！だよなぁ！弾こうとすりゃあ市民への飛散は免れねえからなぁ！ハッハッハァ！！」

　上空の魔物上からキラースが陽気に叫びました。

「......」

　魔力弾をその全身で受け止めて着地したカレンさん。
　どの程度のダメージがあるのか、外観からは判断できません。
　しかし、怯ひるんでいる様子は微塵もありません。
　むしろ憤激ふんげきに燃えあがっています。
　
「卑怯者め...！」

　カレンさんは憤怒の眼光をギロッと上空のキラースに投げつけます。

「カレン隊長！！」

　付近にいた兵士たちがカレンさんに駆け寄っていきました。

「私のことはいい！お前たちはとにかく市民の避難と地上にいるフリーダムどもを任せる！」

「了解です！避難の進行が思いのほか遅れてしまい申し訳ありません！」

「相変わらず遅れているのか」

「先ほどの爆発もそうですが、どうもフリーダムどもが嫌な場所とタイミングで来襲してきまして。しかも返り討ちにしようとすればヤツらすぐ退くんです。まるで、市民の避難を遅らせること自体を目的としているかのように...」

「......」

「隊長！またあの魔物が口を開いて魔力弾を！」

「あれは私に任せろ！」

「しかし隊長！いくら市民に被害を出さないようにするためとはいえ、あの魔力爆撃を隊長ひとりで受け止めつづけるなんて...」

「市民の避難が進めば私も反撃にでる！お前たちはお前たちのやるべきことをやれ！」

　再び上空の魔物の口から地上の市民たちへ向かい、強力な魔力弾がブオォォォンッ！と発射されました。
　その卑劣な攻撃はそれから何度も繰り返されます。