しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根上真気

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魔剣使いの闘い~サンダース編

ep90 魔法剣士(シヒロ視点)

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「勇者軍と女騎士の隊長......」

 勇者軍といっても現れたのは少人数の兵士たち。
 しかし、天下の魔法剣士さまの登場でさすがの〔フリーダム〕も、じりじりと後退ずさりはじめます。
 が、間もなくバッと蜘蛛の子が散るように連中は方々へ散っていきました。

「逃がすな!」

 即座に勇者軍が叫ぶと、その場に魔法剣士さまを含め三人を残し兵士は連中の後を追って飛び出します。

 それを見計らっていたかのように上空の魔物たちが、
「ギィエェェェェ!!」
 ゾッとするほどおぞましく不快な声でけたたましく咆哮ほうこうしました。

「ひぃぃ!」

 ぼくは思わず恐怖にすくみます。
 
「嬢ちゃん!」

 そのタイミングでトレブルさんとブーストさんが駆けつけてくれました。

「トレブルさん!ブーストさん!」

「嬢ちゃん!ここからは勇者軍とフリーダムと魔物どもで街は戦場になる!おれたちはズラかるぞ!」

「でもトレブルさん!クローさんは?クローさんは街を襲うフリーダムを放ってはおかないはず!」

「いいか嬢ちゃん?あの女隊長がどんなヤツかわかるか?」

 ブーストさんが倒れている老人を起こしながら確認するように言いました。

「カレンさん...ですか?」

「さっき嬢ちゃんのことを助けた技...ありゃあ〔発閃〕だ」

「それって...クローさんもやっていた技ですよね?」

「それがよ、嬢ちゃん。さっきのあれは、おそらくダンナのよりもすげぇ」

 トレブルさんが驚きを隠せないといった表情を浮かべました。

「えっ、クローさんよりも?」

「嬢ちゃんに襲いかかった複数の敵に対してほとんど同時に複数の〔発閃〕を放ちやがった。おそらく、あの女隊長は溜めも予備動作も無しに〔発閃〕を撃つことができるんだろう。あんなことができる剣士は世界中を探したって数えるほどしかいねえはずだ」

「そ、そんなにスゴイんですか!」

「ダンナもアレとの接触は避けてえはずだ。それに、ダンナからしてみれば自らの敵であるフリーダムと勇者軍がやり合ってくれるのは都合がいいだろう。わざわざこの中にまじっていくメリットもねえ」

「つまり脱出して待っていればクローさんもすぐ合流できると?」

「そういうこった。だからさっさとこの場からズラかるぜ!」

 トレブルさんがそう言って、ぼくらが動きだそうとした時です。

「そこのお前達!」

 魔法剣士さまがぼくたちを呼び止めました。
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